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インタビュー

クラークをクラークたらしめた源泉、そして憧れ



ある意味、いまとなってはエイフェックス・ツインやオウテカ、スクエアプッシャーら先輩方の血を引く数少ない〈稀代のワープっ子〉としてデビューから10年をあっという間に駆け抜けたクラークだが、その狂気を知性でコントロールしたりしなかったり、俯瞰してみるとやっぱり狂ってる様はKLFの佇まいと比肩してもおもしろい。

また、とにかく時間さえあれば曲を作っているというマシュー・ハーバートのような多作家ぶりや、かねてからのヒップホップ〜ビート愛や、最近の現代アートや舞踊との交流、『ISAM』の一連の流れからトゥー・フィンガーズ『Stunt Rhythms』で披露した凶暴なプロダクションへの振り切れ方などはアモン・トビンが歩んできた道程とも重なるだろう。

さらに、エレクトロニック・ミュージックへの多彩なアウトプットを備えているにもかかわらず、多くのファンを獲得した『Turning Dragon』には実はギターを練習していて上手くいかないというフラストレーション(昨年の『Iradelphic』でようやく解消されたらしい)も込められているというエピソードからは、彼が辿り着きたい、というか強烈に憧れを抱くのは『It's All Around You』でクラウトロック、アフロビート、ヒップホップ、ジャズ、エレクトロを人力で自在に操ったトータスのようなバンドなのかもしれない。

逆にそのハードコア・バンドとしての出自を逆手に怪ダンス・ミュージックを連発するプラネット・ミューのアイタルのような新世代も続々と台頭してくるなか、この天邪鬼な青年はどこへ向かうのか? その先にはフィーストでもビーストでもない新たなクラークが待っているかもしれない。



▼関連盤を紹介。
左から、KLFの90年作『Chill Out』(KLF Communications)、マシュー・ハーバートの2013年作『The End Of Silence』(Accidental)、アモン・トビンの2011年作『ISAM』(Ninja Tune)、トゥー・フィンガーズの2012年作『Stunt Rhythms』(Big Dada)、トータスの2004年作『It's All Around You』(Thrill Jockey)、アイタルの2012年作『Dream On』(Planet Mu)

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年08月29日 19:30

更新: 2013年08月29日 19:30

ソース: bounce 358号(2013年8月25日発行)

文/藤本もこ

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