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インタビュー

鈴木大介

ラテン音楽テイストも鮮やかな編曲

映画にまつわる音楽の思い出ほど、時に深く自分の心を揺さぶるものはないかも、と新譜を聴くたびに思うのがギタリスト・鈴木大介による『キネマ楽園』である。その第5弾「travels」がリリースされた。

「今回は『旅』をテーマにしました。ここ数年のうちでも様々なところに旅行をしているのですが、その経験の中で浮かび上がって来た作品を中心に、新たな編曲にも挑んだ作品集です」と鈴木。『80日間世界一周』から始まる全14トラックの旅。その『80日間世界一周』は心地よいハバネラのリズムによる編曲で、これだけでもすっかりトラベル気分になる。その他『イパネマの娘』『リベルタンゴ』などラテン系の音楽が多いのも特徴かもしれない。

「選曲をする過程で意外だったのは、30代の女性に旅に関する映画音楽の思い出を尋ねると圧倒的に『コーリング・ユー』(映画『バグダットカフェ』より)という答えが多かったことですね。それじゃあ入れざるを得ないか、と思って編曲をし始めたのですが、なかなか手強い。そこで映画そのものの中にもちょっとだけ登場するバッハの音楽を少し加えてみようかと思って完成したのが、今回のバージョンです。ただ、これ意外に難しい。自分でもライブで弾けるのか、ちゃんと弾けるように練習しないと、ってぐらいに難しい作品になりました」

編曲のアイディアが面白い作品が多いけれど、意外にも自作に対する本人の評価は厳しい。

「今回のCDの中にはローラン・ディアンスの編曲作品も入っています(『エル・チョクロ』)。これはタンゴの名曲を編曲したものですが、さすがという感じで、とても弾きやすく、しかも音楽的にも完成度が高い。こういう編曲を目指さないと駄目ですよね」

確かに『スターダスト』とかも非常に美しいけど、難しそうな編曲ではある。その他、あのクラシック・ギター名曲である『アルハンブラの思い出』はサグレラス編曲による2重奏版をひとりで多重録音しているのも話題となりそう。

「この『アルハンブラ』では2種類の楽器で録音しています。録音には数種類のギターを使用しました。特に今回はYAMAHAの楽器を使ってみたのですが、注意して聴いていただくとその音の違いも分かるかもしれません」

ジャケットも旅気分を盛り上げるようなデザインだが、その背景に使われている写真は鈴木が旅の過程で撮影したもの。

「ちょうど夏にリリースされるので、夏の旅のお供にこのCDを連れて行ってくれると嬉しいです」

写真:ⒸMatsunao Kokubo

LIVE  INFORMATION
『サントリー芸術財団 サマーフェスティバル2013』

9/2(月)サントリーホール

『映画を彩る名曲たち』
9/22(日)大萩康司×鈴木大介×村治奏一ギタートリオ 八ヶ岳高原音楽堂 

『鈴木大介ギターコンサート』
9/28(日)大府市勤労文化会館 くちなしホール

『クラシックギター名手競演』
9/29(月・祝)小金井市民交流センター

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年08月29日 16:32

ソース: intoxicate vol.105(2013年8月20日発行号)

interview&text:片桐卓也