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インタビュー

沖仁



フラメンコ・ギターとの対話の相手はジャンルレスで意外なゲストたち

沖仁_A

沖仁の新作『Dialogo~音の対話~』は、多彩なゲストを迎え、フラメンコ・ギターとの対話に挑んだ意欲作。自作曲が中心だが、意外な人選、選曲による白熱の演奏で、楽器と歌による会話を楽しませてくれる。

「3年前からコラボではなく対話というカタチの共演がやりたいと思ってきた。人として響き合うミュージシャンと時には台本がなく、感情のままに言葉を投げかけ合うような演奏がしたかった。それが動機です」

どの曲も共演者の個性を引き立てつつ、異なるテーマの演奏が情熱的に展開されるが、そのなかでも台本がなく、即興性の高い共演は、誰だったのだろうか。

「今回はプロデューサーでもあったので、緻密な作り方が合う人、台本なしの方がいい人、というのを見極めながらレコーディングに臨みました。その中で白紙に近い状態で始めたのは押尾コータローさんと上妻宏光さんですね。スタジオで向き合って座り、ヘッドフォンもせずに「せ~の」で始めて、即興性の極めて高いセッションとなった。押尾さんとの《オシ・オキTime》では最後の最後に彼がどんどん弦を緩めていくのを見て、思わず笑ってしまいました。そう来るかと(笑)」

雅楽の東儀秀樹との対話は、9分以上に及んでいるが、篳篥や笙と共通の言語はあったのだろうか。

「最初こそ不安だったけれど、彼が奏でる音にインスピレーションをたくさんもらい、対話を模索し始めたら楽しくて。東儀さんが篳篥を吹くと、楽器というより肉声を聴いている感覚が強くて、フラメンコのカンテの伴奏との共通点がそこに感じられましたね」

意外性で言えば、玉置浩二だ。彼とは《屋根の下のsmile》という新曲を共作までしている。

「半年前に玉置さんにお会いしてから自分が変化したと思う。ここまで出来るのかと歓びつつ、同時にここまでやらなくてはいけないと学ぶ経験になった。今では彼の歌のようなギターを弾きたいと切望しています」

共演者の中にひとりだけ女性がいる。生粋のカンテを継承するシンガー、ドローレス・アダヘータだ。

「カンテこそがフラメンコの真髄と言われている。その難しさは、彼女と共演してあらためて痛感したけれど、カンテの伴奏をすることと、MIYAVI君やオーケストラと一緒にやるのも同じこと。そういうメッセージを伝えたかったので、極めてトラディショナルなカンテが入るのは重要だと思ったからなんですね」

ジャンルを超えて、と言うのは簡単だけれど、それぞれに愛するホームベースがあり、高い演奏力と柔軟性、好奇心があるからこそ成り立つ対話がここにはある。ミュージシャンが交わす真剣な会話に気分が高揚していく。それが聴き手の歓びになるような作品だ。



LIVE INFORMATION


『沖仁 CONCERT TOUR 2013-14 Guitarra Flamenca~Dialogo~』

○10/19(土)滋賀・滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 中ホール
○10/26(土)札幌・道新ホール
○11/10(日)福岡・イズムホール
○11/23(土)名古屋・ZEPP NAGOYA
○11/24(日)大阪・サンケイホールフリーゼ
○12/15(日)東京・Bunkamuraオーチャードホール
○2014/01/22(水) 仙台・日立システムズホール仙台 シアターホール
○2014/01/24(金) 福島・いわき芸術文化交流館アリオス中劇場
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カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年10月16日 10:00

ソース: intoxicate vol.106(2013年10月10日発行号)

interview&text :服部のり子