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インタビュー

Angela Galuppo



カナダが生んだ「オルタナティヴ・ロック世代」のジャズ・シンガー

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写真提供/COTTON CLUB 撮影/米田泰久

「あなたが微笑めば、世界が微笑む(When you smile, the world smiles with you)」──このスタンダード・ナンバーの曲名そのままに笑顔がとびきりチャーミングなアンジェラ・ガルッポ。カナダ人の女性ジャズ・シンガーだ。フランス語圏として知られるケベック州モントリオール生まれ。もっとも、アンジェラが生まれたのは英語圏の地域だが、フランス語も話す。また、父方の家系はイタリア人。このようなアンジェラは、音楽好きの父親の影響で、幼い頃からジャズに自然に親しんできた。

「父はビートルズやイーグルス、アイズリー・ブラザーズなど色んな音楽が好きで、ジャズ・ヴァーカルのレコードもよく家でかけていた。だから私はジャズがどういう音楽なのか知らないまま、サラ・ヴォーンやエラ・フィッツジェラルドなどのレコードに合わせて一緒に歌ったり、ハーモニーをつけたりしていたの」

アンジェラは大学でジャズを専攻し、05年から人前でジャズを歌い始めた。一方で、彼女はセイント・アンジ(St Ange)というポップ・ユニットのヴォーカリスト兼ソングライターとしても活動している。こんなアンジェラが、もっとも影響を受けたシンガー・ソングライターはジョニ・ミッチェル。きっかけは、アルバム『青春の光と影』(69年)だという。

「『青春の光と影』の頃のジョニ・ミッチェルの歌声は、本当にピュアで、惹きつけられずにはいられなかった。それと独特のギター・チューニング。あんなギター・コードやハーモニーはそれまで聴いたことがなかった。ええ、ジャズに影響を受けているカナダ人という点でも、ジョニに親しみを感じているわ」

『フィール・フォー・ユー』でのアンジェラは、スタンダードに加えて、ビートルズやアンドリュー・ゴールドの曲を歌っている。これらの曲は、父親のレコード・コレクションで初めて知ったのだろう。ところが、このアルバムには、ブラック・キーズの《ジ・オンリー・ワン》も取り上げられている。83年生まれの彼女の世代意識と音楽観が伝わってくる選曲だ。

「カヴァーはすべて私自身の選曲で、タイプは違うけど、どれも何らかの形で自分に訴えかけてくる曲ばかり。ブラック・キーズの曲は、どうやってジャズ風に仕上げるか苦心したけど、インタープリターとしてはやりがいがあったわ」

来日公演では、同郷であるアーケイド・ファイアの曲も披露したアンジェラ。まさしくマルチカルチュラルなバックグラウンドを持つ「オルタナティヴ・ロック世代」のジャズ・シンガーである。こんな彼女の登場を、世界は笑顔で歓迎するだろう。



カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2013年11月11日 10:00

ソース: intoxicate vol.106(2013年10月10日発行号)

interview&text:渡辺亨