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インタビュー

吉井和哉 『STARLIGHT』

 

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[ interview ]

 <なるほどこれは吉井和哉>という音が鳴り響くアルバム。そして、<知らない吉井和哉>も鳴り響くアルバム。要するに『STARLIGHT』は、<古くて新しい吉井和哉>を堪能することができる作品というわけなのだけど、その選別、区別はされていない。どちらも同時に、明快に鳴り響かせていて、では、ここでいう<古さ>とは、<新しさ>とは、いったいなんなのか。

青天の日でなければ、太陽が昇らなければ、船は出したくない。危険だから



 いつだって<いま>の自分を正直に歌ってきた。それが吉井和哉のソロキャリアであり、だから、シングルを、アルバムを聴けば、それを発表したときの吉井がどんな状態だったのかが(まるでジョン・レノンのソロキャリアのように)わかってしまうのである。たとえば2013年発表のベストアルバム『18』。

「ソロ10周年という節目に、集大成としてベストを出したいという思いはあって、ただ、既存の曲だけではイヤだったので、新曲も入れて出したかったんです」

その新曲、“HEARTS”と“血潮”はどちらもTHE YELLOW MONKEY時代とは異なるオリジナリティの確立に試行錯誤していた自分と決別し、新しいステージへ歩んでいくことを宣誓する歌だった。しかし、明るい未来を信じて歌ったものの、当時の吉井に具体的な<ソロ第二章>のヴィジョンはまだなかったという。

「僕らアーティストは空気でしか先を読み取れないんですよ。自分自身で感じる空気。(ソロ活動を)10年やりきって、その後もガンガンやっていくときじゃないというのは肌で感じていたので、次の10年へ向けてのプランをゆっくり考えたいと思っていたんですね。青天の日でなければ、太陽が昇らなければ、船は出したくない。危険だから」

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2014年初頭は<ソロ第二章>をスタートさせるには十分な天候ではなかった、ということである。とはいえ、空が青くなるのをただ待っていたわけではない。創作活動に対するモチベーションが低かったわけでもない。吉井は<なにか>を掴むきっかけを得ようと、カバーアルバムの制作に臨んだのだった。

「去年の夏に(新しいプライベート)スタジオが完成したのでどんなものか確かめたいね、ということもあったのでカバーアルバムのレコーディングに入ったんですけど、やってみたらこんなにも自分の血や肉になっているんだっていう再発見があったんですよ。僕がTHE YELLOW MONKEYのときに作った楽曲の、祖父や祖母にあたるような楽曲がいっぱいあるんだなって」

昨年11月に発表された『ヨシー・ファンクJr. ~此レガ原点!!~』には、沢田研二の“おまえがパラダイス”や弘田三枝子の“人形の家”といった歌謡曲が中心に採り上げられている。自身のルーツにアクセスしたことを楽しむ吉井のリラックスモードは、伸び伸びとしたボーカルにしっかりと反映されていて、そして、このカバーアルバム制作時のモードは、次のオリジナルアルバム『STARLIGHT』にアクセスされることとなる。吉井は新作に収録された“(Everybody is)Like a Starlight”の<星のハレルヤ>という歌詞を例に出してこう語ってくれた。

「<ハレルヤ>はいろんな国の人が歌詞に使うけど、僕の場合は歌謡曲のワンフレーズでもあるんです。黛ジュンさんとか(“恋のハレルヤ”のこと)。それは、『ヨシー・ファンクJr. ~此レガ原点!!~』を作った吉井和哉がそのときの感覚のまま新曲を作っていたということなんですよ。だからすごく歌謡曲モードになっていて、それとUKロックを混ぜ合わせているから、曲の構造がTHE YELLOW MONKEY時代にも似ている」

 ソロ活動をスタートさせた際、吉井はバンド時代と同じ手法で曲を作ることを意図的に避けた。それまでと違う音楽性を追求していくためにはどうしても必要なことだったからで、しかし、もはや吉井に禁じ手はないといっていい。古い自分、もしくは新しい自分のどちらか一方でなく、その両方を同時に鳴り響かせることのできる新鮮かつ絶妙なバランス感覚を本人が獲得したからである。

「自分がこうしたい、こう思わせたいとか、過去はその楽曲の世界の主人公になりきって楽曲を作っていたんですけど、今回のアルバムにはそうでないものもあるんです。初めて他人に寄り添って歌ったかな……」

その象徴が、1月にシングルとして発表され、アルバム『STARLIGHT』の最後を飾る“クリア”。軽快に展開するジャングル・ビートとそれに乗った吉井の明るく澄んだ歌声、明快な歌詞とそれをみんなの歌として響かせるためのゴスペルの導入など、人との別れを新しい出発としてポジティブに歌ったこの楽曲にはいくつもの魅力がある。徹底的にポップだということで、じつは『STARLIGHT』収録曲すべてがそれだったりする。たしかにシリアスな歌詞が何度か登場はするけど、重苦しいものでは決してない。吉井がいままでと違う世界に立っているからで、そこがどのようなところなのかはやはり、“クリア”で歌われている。この楽曲で3回登場する"<花吹雪>というフレーズ、1回目は<風に舞う>、2回目は<優しく舞う>、そして最後は<光に舞う>である。なんと清々しい、きらびやかな世界だろうか。

 

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■album……『STARLIGHT』3/18 on sale!!

■songlist

01. Hattrick'n

02. (Everybody is)Like a Starlight

03. You Can Believe

04. 紅くて咲こうとした恋の

05. TOKYO NORTH SIDE

06. 迷信トゥゲザー

07. Route69

08. Step Up Rock

09. STRONGER

10. クリア

【初回限定盤DVD】

2014/12/28 Sun. NIPvPON BUDOKAN YOSHII KAZUYA SUPER LIVE 2014 ~此コガ原点!!~

01. WEEKENDER

02. VS

03. シュレッダー

04. MUSIC

05. 点描のしくみ

06. ビルマニア

07. 襟裳岬

08. アバンギャルドで行こうよ

09. SUCK OF LIFE

10. FINAL COUNTDOWN

11. クリア

12. ボンボヤージ

■Live…『YOSHII KAZUYA STARLIGHT TOUR 2015』 

5月2日(土) 松戸森のホール21 大ホール
5月5日(火) 大宮ソニックシティ 大ホール ※
5月10日(日) 新潟県民会館
5月13日(水) 東京NHKホール
5月14日(木) 東京NHKホール
5月22日(金) サンポートホール高松・大ホール
5月23日(土) 神戸国際会館こくさいホール
5月30日(土) 広島アステールプラザ 大ホール
5月31日(日) 市民会館崇城大学ホール(熊本市民会館)
6月6日(土) 仙台サンプラザホール
6月10日(水) 大阪フェスティバルホール
6月13日(土) 金沢本多の森ホール
6月14日(日) 名古屋国際会議場センチュリーホール
6月19日(金) 札幌市民ホール
6月27日(土) 福岡サンパレスホテル&ホール ※
6月28日(日) 福岡サンパレスホテル&ホール
7月2日(木) 大阪フェスティバルホール
7月3日(金) 大阪フェスティバルホール ※
7月15日(水) 東京国際フォーラム ホールA
7月16日(木) 東京国際フォーラム ホールA ※
※追加公演

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記事内容:TOWER+ 2015/3/10号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2015年03月09日 17:00

ソース: 2015/3/10

TEXT:島田諭