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インタビュー

RHYMESTER『Bitter, Sweet & Beautiful』

          

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4月29日にビクターエンタテインメント移籍第一弾にして主宰レーベル〈starplayers Records〉設立第一弾シングルとなる“人間交差点/Still Changing”を発表、そして5月10日には初の主催フェス「人間交差点」を開催して大成功をおさめるなど、この春から本格的に新章をスタートさせたライムスターが畳み掛けるようにしてニューアルバムをリリースする。薔薇の花が妖しく浮かび上がるアートワークも鮮烈なキャリア通算10枚目、タイトルは『Bitter, Sweet & Beautiful』だ。


音楽的にちょっとアダルトでビタースウィートな感じでいけたら


「アルバムの制作を始めたころから〈ビューティフル〉というキーワードは常にあったんだ。それは音楽的なトーンを意味するビューティフルでもあるし、リリック面での人間の理想の生き方を示すビューティフルでもある。当時はヘイトスピーチが問題になり始めたころで、あれは本当にイヤだよね、みたいな話から〈ビューティフル〉という言葉が出てきたんじゃなかったかな。みんながみんな自分の正しさを主張して、なにが正しいのかを見つけるのがむずかしい時代になってきているけど、そんななかで〈美しくありたい、美しくあろう〉と思うことはやっぱり大切だし、それは拠り所にしてまちがいないだろうと思ってさ」(Mummy-D

「正しさを振りかざすようなことは絶対にしたくない、とはずっと話してた。やっぱり公的な正しさとはちがう空間や時間や人間が必要だし、それがわかってる人は他人を排斥したりなんてしないんだよ。ビューティフルをまとめるラインとしては、小西康陽さんも引用していた吉田健一の〈戦争に反対する唯一の手段は、各自の生活を美しくして、それに執着することである〉という言葉を思い出したりもしたね」(宇多丸)

「単に〈ビューティフル〉と言っても、そこには必ずいびつさや汚しの要素も入っていて。それこそ『ダーティー・サイエンス』にだって美しさはあるし、反語も一体化しての〈ビューティフル〉。そういうニュアンスも含まれていると思う」(DJ JIN)



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前作『ダーティーサイエンス』から2年半、過去最長の制作期間を費やしてつくりあげたアルバムのテーマは〈美しく生きること〉。不寛容で閉塞感漂う現代社会をどう生きていくべきか、その命題に正面から向き合いアルバム一枚かけて答えを導き出していくコンセプチュアルな構成は、今年で活動26年目に突入したグループのディスコグラフィ中でも群を抜く完成度を誇る。

「ケンドリック・ラマーが時代と_逆行するようなトータル性の高いアルバム(『To Pimp a Butterfly』)をつくって支持されたことで、緻密に構築していくことに対して勇気づけられたようなところもあった。制作途中ですでに曲順が決まっているなんて、ライムスターとしては本当にめずらしいケースなんだよ」(Mummy-D)

「あらかじめ曲が決まっているってことは、つまりメッセージをストーリー的に構成できる、ということだから。同じメッセージを別々の曲に意図的にちりばめたり、制作過程で全体を見ながら微調整もしてるからね。俺たちがつくってきたなかで、ここまで一貫したコンセプトの流れがあるアルバムもないと思う」宇多丸)

そんな大作を支えるプロデューサー陣は、計5曲を手掛けるジャパニーズ・ヒップホップ新世代の旗手PUNPEEを筆頭に、意外にも_これが初の楽曲提供となるKREVA、いまやグループのプロダクション・パートナーとして盤石のコンビネーションを築き上げた感のあるBACHLOGICなど。彼らが織りなす国内外のアーバン・ミュージックのトレンドを咀嚼したしなやかなメロウネスは、全編を彩る甘くほろ苦い人間賛歌にぐっとディープな陰影を与えることに成功している。

「音楽的にちょっとアダルトでビタースウィートな感じでいけたらとは最初から考えていて、一時期はアゲる曲が一切ないアルバムをつくってみようかなんて話していたこともあったぐらい。とにかくグッド・ミュージックの方向を追求しようって話してたね」(Mummy-D)

 冒頭の“フットステップス・イン・ザ・ダーク”でさまようように走り出したストーリーが、さまざまな思考とストラグルを重ねて大団円の“人間交差点”~“マイクロフォン”に収斂されていく、壮大なヒップホップ・シンフォニー『Bitter, Sweet & Beautiful』。この感動的な音楽体験は、きっと混迷の時代の指標になる。

■album……『Bitter,Sweet & Beautiful』7/29 on sale!!

【CD収録曲】
1. Beautiful - Intro
2. フットステップス・イン・ザ・ダーク
3. Still Changing
4. Kids In The Park feat. PUNPEE
5. ペインキラー
6. SOMINSAI feat. PUNPEE
7. モノンクル
8. ガラパゴス
9. The X-Day
10. Beautiful
11. 人間交差点
12. サイレント・ナイト
13. マイクロフォン

 

【 初回限定盤特典収録映像】
・ “6 minutes of #nkfes” 主催フェス「人間交差点 2015」全アーティスト収録・スペシャルダイジェスト映像
・「SOMINSAI feat. PUNPEE」(人間交差点 2015)ライブ映像 
・「Still Changing」ミュージックビデオ
・「人間交差点」ミュージックビデオ
副音声:宇多丸・Mummy-D・DJ JINによる元祖・生(ビール)コメンタリー

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記事内容:TOWER+ 2015/7/10号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2015年07月10日 00:00

ソース: 2015/7/10

TEXT:高橋 芳朗