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スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2010 @ 赤坂BLITZ 2010年1月23日(土)

連載
ライヴ&イベントレポ
公開
2010/02/23   17:00
更新
2010/02/23   17:04
テキスト
文/土田真弓

 

毎回、旬の新世代バンドを粋な組み合わせでフックアップしているスペースシャワーTV主催のライヴ・イヴェント〈スペースシャワー列伝〉。なかでも〈JAPAN TOUR〉と銘打って年に1度行われる全国ツアーのラインナップは特に注目度が高い。しかも今年は、SISTER JET、avengers in sci-fi、andymori、THE BAWDIESと素敵すぎる布陣……となれば、見逃すわけにはいかない! 当日現場で何が起こったか、bounce presentsの詳細レポートをどうぞ。

 

SISTER JET

 

全国8か所、タイムテーブルは会場ごとに異なっていたようだが、この日の先陣を切ったのはSISTER JET。〈HELLO〉〈JETS〉〈SISTER JET〉と描かれたハンドメイドのプラカードやフラッグを手にして登場したメンバーは、そのままフロアを煽るようにステージ全体を駆け廻る。そう言えば、年末のワンマンの時にもステージ後方に手作りの飾り付けが施されていた。ハコの大小に関わらず、パーティーを楽しむための演出を毎回しっかりと用意してくるところが彼ららしい。

 

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ケンスケアオキ(ドラムス/コーラス)のカウントを合図にオープニングとして繰り出されたのは、爆裂モッド・ナンバー“恋してクレイジー”。ブンブンと唸る超低音ベース、パワフルにロールするドラム、攻めのギター・リフが次々と畳み掛けられ、(2階席で座って観ていたため)いちいち中腰になりながら1階を見下ろすと、観客たちはダイナミックなグルーヴに引き寄せられるように腕を突き上げ、ステージに向かって殺到している。(コーラス時以外は)唯一身軽なショウサカベ(ベース/コーラス)がステージ前面に出て応戦。掴みは上々だ。

sister_1ワタルS(ヴォーカル/ギター)「ハロー! YO! YO! SISTER JETだよ(なぜかBボーイ風)! 調子はどう? こんな最高なパーティーは最初で最後だからさ、一瞬一瞬を楽しんでってね。あれは確か、2年前の彼女。いま欲しい彼氏は……」

「DJ!!」とフロントの2人が叫ぶと、ふたたびアオキによるかぶり気味のカウントが。“DJ SONG”“hello goodbye days”といった彼ら屈指のポップ・ナンバーを前のめりで連発し、会場の熱気をグイグイと上昇させる。ステージ袖にはTHE BAWDIESのJIMを発見。普通に踊りまくっているのが丸見えである。

「もっとクレイジーにできんじゃねえか? ダンスしようぜ!」――そうワタルが告げると、女声のサンプリング+イーヴン・キックを下敷きにワタルとサカベが各々の楽器で軽妙な掛け合いを始める。それが次第にセツナ系のあの曲のイントロへ変化して……“さよならポケット”だ。終盤、3人がアグレッシヴに弾き(叩き)まくる間奏では、爆音のなかからマイクを通さずに聴こえてくるシャウトに胸がじわっと熱くなる。

続くは定番の“to you”……なのだが、ここで、ステージ冒頭からうっすら感じていたことが確信に変わる。彼ら、今日は完璧に戦闘モードだ。ニコリともせずに鳴らされる三様の音が一筋の強靭な束となっており、細かく変則的なリズムが絡み合うため不安定さ(そこが楽曲の切なさとも直結していたりする)とも背中合わせのこの曲すら、グルーヴがとんでもなく太い。予想外の“to you”男前ヴァージョンに圧倒されているうちに突入したキラー・チューン“La La Dance”では、サビの歌をオーディエンスに任せ、フロントの2人は冒頭で持ち込んだプラカードやフラッグをフロアへ投入。受け取った観客たちはそれらを頭上に掲げて振り回し、会場全体の一体感を盛り上げる。

 

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ワタルS「いつかニュースを読んだら98回闘って98回負けたボクサーが載ってたんですけど、それって俺のことだな……負け犬だな、MR.LONELYだな、と思って。俺が〈寂しい〉って歌うことで、SISTER JETはみんなのそばにいるよ、っていう曲を作りました」

そんな制作秘話と共にラストで披露されたのは、タワーレコード限定でリリースされたエッジーなガレージ・ナンバー“MR.LONELY”。3つの弾丸が一体となって会場を貫くかのごとく、ソリッドなビートがステージ上からビュンビュンと飛んでくる。途中、ギターを抜いてメロディアスなベースラインがフィーチャーされた際にはこの日何度目かの中腰に。ライヴならではの引き算プレイが格好良い。爆発的な昂揚感に導かれてそのまま一気に終演まで駆け抜けると、「その、いまの気持ちを忘れんなよ!」というワタルの一言と、なぎ倒されたマイクスタンドが発する残響音を残して3人は去って行った。

 

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3人がここまであからさまな戦闘態勢を敷いてきたことにやや驚いたが、そう言えば彼ら、本来はこういう人たちである。さんざんそういうことを書いてきていたのだった……と思い直して素直に感動したが、その感覚は他のオーディエンスも共有していたのではないだろうか? メンバーが姿を消してから一呼吸置いた後、われに返ったように沸き起こった拍手が、それを物語っていたように思う。

 

SISTER JET セットリスト

01. 恋してクレイジー
02. DJ SONG
03. hello goodbye days
04. さよならポケット
05. to you
06. LaLa Dance
07. MR.LONELY

 

 

avengers in sci-fi

 

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セッティング中のステージ上では、無数に連なったエフェクターの赤いランプが星雲のように瞬いている――2番手はavengers in sci-fiだ。

バーンサイド・プロジェクト“Cue The Pulse To Begin”が宇宙との交信の合図。始まりの予感に満ちたSEに導かれ、フロアは空っぽのステージを前にしてすでに期待感を抑えられない雰囲気だ。4つ打ちに合わせて3人の登場を待ち侘びるハンドクラップも浮き足立っている。

大歓声で迎えられたメンバーは、場内に向かって「アー・ユー・レディー!?」と稲見喜彦(ベース/ヴォーカル/シンセサイザー)が呼び掛けるやいなや、エフェクティヴにうねるギター&ベースと怒涛のドラミングで約40分間に渡る〈スター・ツアーズ〉への出航命令を発動。爆音渦巻く混沌のなから徐々に〈SAVE OUR ROCK、SAVE OUR ROCK……〉と繰り返すロボ声が浮かび上がってくると、飛翔感溢れるイントロに乗って“Homosapiens Experience”へ突入! 〈アクセス・オール・エリア!〉と会場全体が叫んでいる様を観ていると、本当にどこへでも行けそうな気になる開放的なダンス・ロック・チューンだ。

 

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フロアを一気に沸騰させると、彼らは間髪入れずにフューチャー・ロック版〈ええじゃないか〉――アグレッシヴなシンセ・サウンドと日本の祭り的な2ビートが交わる“Beats For Jealous Pluto”へ移行。スペーシーなウワモノと土着的なリズムで突っ切るこの曲は、生粋のジャパニーズなら遺伝子に埋め込まれた衝動を刺激されること間違いなしで……こうなってくるともう、2階席で座って観ているのが苦痛である。1階フロアで踊り狂っている群衆を心底うらやましく思いながら必死でメモを取る筆者。

で、ここでなぜメモ取りに必死になっていたかというと、フロントの2人の動きがあまりにも激烈だからである。ご存知の通り、彼らは肩からぶら下げた各々の楽器と大量のエフェクターとシンセを操りながら歌まで歌うわけで、そうなると演奏だけで目一杯のはずなのだが、少しでも移動できるタイミングが見つかると前や後ろや左や右ににものすごい瞬発力で飛び出していく。その一瞬で観客を煽っては定位置に戻ってエフェクターを踏み、また飛び出しては戻ってシンセのツマミを調整し、また飛び出しては……といった感じで、言わば〈ロック千本ノック〉状態。木幡太郎(ギター/ヴォーカル/シンセサイザー)に至ってはその間にムーンウォークまで披露しており、動きがとにかくせわしない。落ち着きのなさ全開のパフォーマンスに思わず爆笑! ……本当に最高だ。

 

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その勢いの赴くままに、猛スピードで乱れ飛ぶ電子音やハーモニー/掛け合いを駆使したヴォーカリゼーションでコズミックな音世界を疾走する“RADIO EARTH”、イントロだけで観客から嬌声が上がった“Starmine Sister”を立て続けてMC……といった空気が流れて会場全体が耳を澄ますも、ステージ上は誰も語らず。突如フロアは無音状態へ。

「あ、どうも。ありがとうございます! 誰もしゃべんないから緊迫した空気が……別に緊迫はしてないんですけど(笑)」

「伝説に列せられるということで〈列伝〉なわけで、うちの長谷川(正法、ドラムス)先生が初日から〈伝説作る〉ってたぎりにたぎってますけど、残念ながらまだできてないっていう(笑)。今日、伝説作っちゃうらしいですよ、先生は」

……と、太郎による恒例の長谷川いじりトークを間に挟んで、ステージは徐々にクライマックスへ。太郎が指揮者のように両手を振りかざすと同時に繰り出されたのはシンガロング必至の“UNIVERSE UNIVERSE”! ここで、ステージ袖のJIMはいよいよ両手を上空に掲げてダンスが炸裂し、恐らくいっしょに歌っている模様。2階席からの丸見え度はさらに上がっており、目立ち具合から言えば、もうほぼ〈出演中〉の状態である。

 

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その後も“HYPER SPACE MUSIC”ではフロント2人がオーディエンスにハンドクラップを要求し、シームレスに繋がれた“NAYUTANIZED”では稲見が「SCI-FI MUSIC!」「赤坂―――!!」と叫びまくってフロアをモッシュとジャンプのカオスへと陥れ、壮大な宇宙旅行はあっという間にフィニッシュ。意識が地上に戻ってくるまでしばらく呆然とする。

音に込められた膨大な熱量が圧倒的だ。シンセが担うフューチャリスティックな電子音と加工声が前面に出てはいるが、並走するように刻まれるリフはほぼハード・ロックのそれであり、ボトムを支えているのはプリミティヴな肉体性を伴うリズムである。彼らが呈する〈宇宙感〉には常にビッグバン的なエネルギーが伴っていて、その爆発力がライヴ会場では増大するのだ。最新作『jupiter jupiter』のインタヴューでルーツ盤の話をした時にも挙がったが、大バコでミューズみたいなライヴをやったらさぞや似合うのではないか、と。フロントの2人は、ステージ上の〈出張先〉から戻るのが大変だと思うけども。

 

avengers in sci-fi セットリスト01. Homosapiens Experience
02. Beats For Jealous Pluto
03. Radio Earth
04. Starmine Sister
05. Universe Universe
06. Hyper Space Music
07. NAYUTANIZED

 

 

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3番手はandymori。これまではタイミングを逃してばかりで、彼らのライヴはタワーレコードのインストア・イヴェントにて数曲体験したことがあるのみ。この日がほぼ初見だ。

メンバー登場時のSEは、とびきりロマンティックなオールディーズ・ナンバー“The End Of The World”。ああ、なるほど、と思う。多くカヴァーされている有名曲だが、カーペンターズでも、ブレンダ・リーでもない。とすると、原曲の……誰だっけ……と考え込んでいるうちにメンバーの音出しが終了し(ちなみに、原曲はスキーター・デイヴィスでした)、小山田壮平(ヴォーカル/ギター)による「赤坂わっしょい」という一言を皮切りにステージは幕を開けた。

 

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……まるで、止まることを恐れているかのようだ。足がもつれようが、転んで地に這いつくばろうが、とにかく前へ、前へ、前へ――といった感じで早回しのようなBPMに切迫感を滲ませながら、“ベンガルトラとウィスキー”“everything is my guitar”を畳み掛ける3人。限られた五線譜上にありったけの言葉を迸らせる小山田のヴォーカルと、洪水のように湧き出る言葉を猛スピードでロールさせるリズム隊には、この言葉に、このビートについていかなきゃ……と、音を追い掛けることに集中させるエネルギーがある。

「アイラヴトーキョー」。

小山田がそうポツリと告げるやいなや、“僕が白人だったら”を投下。トップスピードを保ちながら、3人はひた走る。だが、聴き手を置き去りにすることは決してない。人の手で演じるという生々しさをエネルギッシュに放出するサウンドは、歌を目の前にいる人々に届けようと、どうにかしてオーディエンスにコネクトしようと必死で手を伸ばしているかのようだ。

 

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だが、そんな音を鳴らしているくせして、3人とも喜怒哀楽があまり表情に出ない。なんだか、そこに底知れない空気を感じた。この歌と接続したら、どこへ連れて行かれるかわからない。けれど、たまらなく行ってみたい――歌に引き込まれる寸前で、〈この誘いに乗ったらマズイんじゃなかろうか?〉というせめぎ合いが起こったのは久しぶりだ。結局、その誘いは断りきれなかったわけだけども。

MCは少ない。「次の曲は、友達に捧げる“クレイジークレーマー”」――と、その友人の実名を出して紹介してみたり、「札幌から〈列伝ツアー〉が始まって、ずっとこの、赤坂をめざして飛んできた、っていう曲をやります。“CITY LIGHTS”」――と、さり気なくツアーに絡めて説明してみたりと、ほとんどが曲に関する話で、すべてが簡潔で朴訥としている。

中盤以降は、“16”“ビューティフルセレブリティー”などのミッドテンポで聴かせる曲を挿入し、熱狂のフロアをクールダウン。フィナーレを飾った“1984”もそうだが、聴き手それぞれの原風景に触れるようなノスタルジーで会場全体を包み込む。〈ファンファーレと熱狂/赤い太陽/5時のサイレン/6時の一番星〉――ファルセットで丁寧に紡がれる歌が、あの頃の、あの場所の記憶を呼び起こす。

 

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あくまでも個人的な印象だが、彼らが鳴らすロックンロールからは、ソウルやブルースが纏うそれと同じ匂いがする。ふいに漏れ出た鼻歌のなかに存在する普遍性――その鮮度を損なわずに歌っているような、そんな生活感を感じる。

ここで冒頭のSEの話に戻るが、“The End Of The World”には〈この世の果てまで〉という邦題がついていて、〈ああ、なるほど〉と思ったのは、その邦題を脳裏に浮かべてのことだ。

〈あなた〉が去っても常と変わらない毎日が過ぎてゆく。そんな日常を、この曲の主人公は〈この世の終わり〉だと言う。過剰なセンティメンタリズムを投入せずとも、その意見には大いに同意できる。ミクロ/マクロとスケール感はさまざまだが、ある種の終末感はそこらじゅうにゴロゴロ転がっていて、だけども人は、意外と普通に生きていける――生きていけてしまう。そして、andymoriのソングライター・小山田は、そんな人間の強さと弱さの狭間を振り子のようなバランス感覚で渡り歩きながら、〈狭間のブルー〉を歌っている人ではないかと思うのだ。

そんなことを考えたのは、実はタワーのインストア・ライヴで初めて“1984”を聴いた時である。今回は、SEから始まる一連のショウを観て、上述の印象は一過性のものではなかったことを改めて確認した次第で……こういうことがあるから、ライヴ会場に足を運ぶことをやめられない。内なる熱を表出させたこの日のandymoriは、ライヴ=ナマモノであることを存分に感じさせてくれたと思う。

 

andymori セットリスト
01. ベンガルトラとウィスキー
02. everything is my guitar
03. 僕が白人だったら
04. クレイジークレーマー
05. 16
06. ビューティフルセレブリティー
07. CITY LIGHTS
08. FOLLOW ME
09. すごい速さ
10. 1984

 

 

THE BAWDIES

 

そして、この日のトリはTHE BAWDIES。定番SEのサム&デイヴ“Soul Man”が流れ出すと、会場全体が大歓声を上げながらハンドクラップ。ワクワクが止まらない様子がありありと伝わってくる。そこへピースサインと共に現れた4人は、これまた定番のオープニング――MARCY(ドラムス)を中心に全員で向かい合い、一斉に音を鳴らすことでパーティーの始まりを告げる。

 

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「〈列伝〉ファイナル、この最高にハッピーな瞬間を共に、笑顔で作りませんか!? アー・ユー・レディー!? カモン! MARCY!!」。

とROY(ヴォーカル/ベース)が叫ぶと、初っ端は“KEEP ON ROCKIN’”。JIM(ギター)とTAXMAN(ギター)が両翼からフロアに向かってハンドクラップを煽る。

「そのクラップ、死ぬまで続けましょうか!?」。

ROYはよく考えると無茶なことを頻繁に言うが、〈とにかく続けなくては、クラップを!〉となぜか思ってしまうから不思議である。

こうするとライヴは楽しくなるよ――ハンドクラップやコール&レスポンスをはじめ、彼らはオーディエンスに対してさまざまな提案を投げ掛けながら、その場にいる全員で最高のパーティーを作り上げようとする。そのエネルギーが観客の血をたぎらせるわけだが、この日も1曲目にしてフロアは沸点突破! 会場を震わせる歓声がひっきりなしに続く。

「みんなで仲良く踊りましょうか? 俺らの仲の良さを日本中に見せ付けましょうか!?」。

……と、やはりROYにしか言えない台詞で“I’M IN LOVE WITH YOU”に移行すると、場内をソウル・フィーリングが軽やかに吹き抜ける。

 

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TAXMAN「みなさん最高ですよ! 新しい年っていうことで、新曲やってもいいですかー!?」

ROY「新曲は“HOT DOG”と言います。わけがわからなくてけっこうです。挟みます。熱くてウマい。それが長く続きますよ、どうでしょうか? “HOT DOG”召し上がれ!!」

そうして披露された“HOT DOG”は、随所にイーヴン・キックを挿入しながらリズミックに疾走する、ファンキーなロックンロール・ナンバーだ。

 

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ROY「やっぱり愛じゃないでしょうか? 愛が必要だと思います。みなさん包み込みますけどいいですか? そのまま包み込まれちゃってください! 愛をくらえぇぇぇ~い!!」

終盤、声を裏返しながら渾身の振りをしたはいいものの、「愛が重すぎる」という理由でJIMが曲に入るタイミングを掴めず、両手でバツ印を出すというハプニングが発生。ROYに対して3方向より「お前が悪い!!」とダメ出しが。場内を愛……というか、爆笑で包み込んでおきながら、“TINY JAMES”では美しいハーモニーを交えてスウィートなメロディーを聴かせるところが、なんともニクい。

「最初はね、やっぱ4バンド、〈負けねえぞ〉みたいな気持ちで入るんですよ。だけどやってくうちに、この4バンドでなんかできねえかな、っていう、そういう一体感に変わるんですよね。その一体感をみんなで共有するって最高だと思いませんか? これが音楽の力だと思いませんか!?」。

今回の〈列伝〉ツアーについてROYがそう語ると、ラストは“IT’S TOO LATE”“YOU GOTTA DANCE”と腰にくるダンス・チューンを連続投下。フロアは当然、熱狂の渦に! 縦に横に揺れまくりの観客たちは、みんなものすごく楽しそうだ。

 

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「ラストです! 好きなように、感じたままに自分を解放してください!」。

最後まで煽りまくるROYだが、その煽りを凌駕する勢いで会場の興奮はどんどんヒートアップ。ギターの2人も前方 に飛び出し、ステージの上と下でお互いにテンションを高め合いながらクライマックスを盛り上げる。演奏が終了すると、4人はふたたびピースサインを掲げ、 深々とお辞儀をして退場していった。

アンコールは、新曲と“I BEG YOU”。最初に登場したMARCYが「そんな手拍子だと、他のメンバー来ないですよ」と観客に火を点けると、ハンドクラップのスピードが加速。慌てて出てきた後、ROYは「何言ってんですか! 手拍子早すぎて、俺ら小走りじゃないですか!!」と、MARCYに抗議し、会場の笑いを誘う。

 

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「やっぱり〈列伝〉ですから、俺らで終わるっていうのはどうかと。4バンド集まっての列伝じゃないですか!? みんなで締めましょうか。みんなって4バンドだけじゃないですよ? あなたたち一人一人みんなで最後の〈列伝〉です!」。

そうしてROYに呼び込まれたのは、この日の出演者全員。ダブル・アンコールはレイ・チャールズ“What’d I Say”の一大セッションだ。ワタル(SISTER JET)と小山田(andymori)が次々に「カモン、MARCY!!」と叫び、ワタルのギター・リフで狂騒のフィナーレに突入。小山田はいきなりダイヴをかまし、ケンスケ(SISTER JET)と長谷川(avengers in sci-fi)のドラマー2人は各々マラカスやタンバリンを持って踊りまくり。あれ、もう1人は……? と見渡すと、andymoriのドラムス、後藤大樹は小山田に続いてダイヴをキメている。

 

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途中、観客とのコール&レスポンスをROY→太郎→小山田と回していったが、最後の小山田のコールにROYが「自由すぎてタイミングがわかりませんでした!」とやり直しを要求。しかし小山田が完全に飛んでしまっているため、「じゃあ俺が〈イエー!!〉って言ったら壮平が飛び込みますから受け取ってください!!」と、ROYが完璧なコール&レスポンスを繰り出し、それを合図に小山田がふたたびダイヴ――という一幕も。ステージ上でいろんなことが起こりすぎて追い切れない! でも楽しすぎる!! ――正直、曲が成立しているのが不思議なぐらいの暴走ぶりで1曲を駆け抜けて、総勢13名によるアンコールは終了した。

その後、4バンド全員で肩を組み、会場全体で「ワッショーイ!!」と掛け声を発して本当のエンディング。〈新世代バンド〉として一括りにするのは申し訳ないほどに、四者四様のステージングを目一杯に堪能できた、幸福な一夜だった。

 

THE BAWDIES セットリスト01. KEEP ON ROCKIN'
02. EMOTION POTION
03. I'M IN LOVE WITH YOU
04. 新曲(HOT DOG)
05. EVERYDAY'S A NEW DAY
06. TINY JAMES07. IT'S TOO LATE
08. YOU GOTTA DANCE

―アンコール―

01. 新曲
02. I BEG YOU

―アンコール2―

01. What'd I Say