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バニラビーンズ 『VaniBest』

バニラビーンズのこれまでの全作品をおさらい!

連載
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公開
2010/09/15   18:01
テキスト
文/掟ポルシェ(ロマンポルシェ。)

 

バニラビーンズのこれまでの全作品をおさらい!

 

バニラビーンズ1

 

バニラビーンズ “U Love Me” 徳間ジャパン(2007)

バニラビーンズのデビュー・シングル。〈スウェディッシュ・ポップ・アイドル〉という90’s丸出しの早すぎたレトロ・コンセプト引っ張り出しに、〈その手があったか!〉とニッチな俺たちのハート丸ごと鷲掴み。アップテンポな名曲だが、北欧の風に乗ってやってきたと前置きしておきながら、そのサウンドはイントロの確信犯的なピチカートからしてあまり北欧を感じさせない。あくまでそこにあるのは90年代文化というオシャレであることが尊い時代の全体的復興であり、ジャケのファッションから彷彿とさせる某キユーピーマヨネーズCM的な広告代理店文化までもMIX。オリジナル・メンバーのリカとレナによる唯一の音源であり、リカはこのCDリリース直後に脱退。

 

バニラビーンズ “ニコラ” 徳間ジャパン(2008)

北欧のリアル御嬢沙麻代ことリサ加入後の現・バニラビーンズ第1弾。前作とは打って変わって、素直に90’sスウェディッシュ・ポップの良質な部分をフォーマットにした〈これぞバニラビーンズ〉というべき1曲。清流の流れが如きキラキラとしたギターの音色、春への期待に満ちたこれ以上ないサビへ向かうストリングス・フィルイン、そしてあえて抑揚を排することで清楚を紡ぎ出すウィスパー・ヴォイス歌唱。これらが重層的に織り成す恐ろしいまでの清廉なる世界が、アイドルという虚構に投げ込まれてギリギリのバランスで微笑ましさを残し、成立している。いま現在のバニビを見れば、その見事な均衡がレナとリサのキャラクターありきのものだとわかるだろう。

 

バニラビーンズ “サカサカサーカス” 徳間ジャパン(2009)

リミックスを含む配信限定リリース6連作に次いでの3枚目のシングルは、いまにもハミングが聴こえてきてMajiで恋してしまいそうな怪作佳作。以前そこを通った大人たちはニヤリとさせられ、若者たちはバックリと開いたポップスという魅惑の底なし沼への入口を見るだろう。かつてフリッパーズ・ギターが試みた、ネタ元をあえてボカさない〈リミックス・オリジナル〉の世界へ堂々と踏み込んでいくプロダクションにドッキリするが、これもまた90年代サンプリング・カルチャーの掘り起こしユニットの側面を持つバニビとしては筋が通っている。ライヴでもお馴染みの時計仕掛けの振り付けがキュートなカップリング曲“チクタク”も収録で、完成度の高い一枚。

 

バニラビーンズ 『バニラビーンズ』 徳間ジャパン(2009)

グループ名をそのまま冠したタイトルに制作サイドの自信が窺える、充実のファースト・アルバム。新曲6曲+リミックス3曲+配信限定曲のアルバム・ヴァージョン3曲を含む全15曲。90年代スウェディッシュ・ポップはもちろんのこと、そこから一足飛びしてカラーフィールドやペイル・ファウンテンズなどの80年代ネオアコ・サウンドまでも内包した繊細な質感の作品。バニビの提唱する〈北欧感〉とは、日本発の萌え文化の範疇に収まってしまった現代アイドル歌謡からの逸脱の宣言であり、このアルバムもそういった生活感と無縁な類の甘酸っぱさに満ちており、心が洗われる。ライヴの定番曲“U Love Me”のレナ&リサ歌い直しヴァージョンも収録。アイドルを毛嫌いする向きにこそオススメ。

 

バニラビーンズ “LOVE & HATE” 徳間ジャパン(2009)

〈北欧の風に乗ってやってきた清楚でイノセンスな雰囲気を持つ女の子のユニット〉という割にバニビには率直な北欧っぽさがない!ということで、〈だったら一度北欧の作家に曲書かせたらいいんじゃないの?〉と発注。しかして出来上がってきたのはザッツ日本のアイドル歌謡だったという不思議。ミスター・スウェーデンことカジヒデキによる、ツンデレをテーマにした歌詞がジャストにハマり見事スマッシュ・ヒット。ツンデレの曲らしくCD購入者を対象に、バニビにナデナデしてもらうか、ビンタしてもらうかの2択リリース・イヴェントも開催。裏話としては制作会議時、北欧っぽければなんでもいいかとバニビを北欧メタル化するアイデアもあったとか。当然回避!

 

バニラビーンズ 「バニラビーンズ プロデュース会議DVD」 徳間ジャパン(2009)

これまで数回に渡って開催されたバニビ名物トークショー企画のDVD化。バニラビーンズがどうやったら売れるかを、ゲストやファンといっしょに考えるという、ある意味気持ちいいまでの丸投げ広告代理イヴェントだが、とにかくレナの自由すぎる思いつき100%全力発言と、リサの浮世離れした実家お金持ちトークが見もの。掟ポルシェを司会に、これまでのバニビの歴史を封印しておいたほうがいいものまで含めてわざわざ振り返ったり、庶民育ちのレナとセレブ育ちのリサの生い立ちを写真で検証する。他にも〈レナ、グルメリポートに挑戦!〉や〈実録、リサのお買い物!〉などのコンテンツで盛り沢山。“LOVE & HATE”までの全8本のPVも完全収録のファン必携盤。

 

ロマンポルシェ。 『盗んだバイクで天城越え』 ミュージックマイン(2010)

バニビとはトークの司会などでワンセット稼働率の高い掟ポルシェを擁するニューウェイヴ・バンド、ロマンポルシェ。が、2010年に出したアルバムにバニビが参加。ド頭のリード曲であるイモ欽トリオ“ハイスクールララバイ”のカヴァーで、あやうい魅力のハイスクール級コーラスワークを担当。テクノ・ポップの名曲をロマンでもポルシェでもない気鋭のプロデューサー、NEWDEALが現代的なエレクトロに見事リアレンジ。同曲のPVでは、“LOVE & HATE”の衣装を着たバニビの2人が、ロマンとポルシェをしこたまビンタしたり足蹴にしたり鼻の穴に濡れたコンセント突っ込んで感電させたりで、ツンデレを越えた残虐ぶり。清楚な北欧ガールのイメージをうっかり打破している。

 

バニラビーンズ 『Def & Def』 徳間ジャパン(2010)

バニビ初のミニ・アルバムは、制汗剤のCMソング&そのドラムンベースMIX+魔女っ子アニメソングのカヴァー×4曲という変則的な構成。“D&D”は、80年代に全世界のダンスフロアを席巻したプロダクション・チーム、PWLを意識した所謂ユーロビートな音作り。率直に言えば、さらにその影響下にあるWink、の・ようなものを、制汗剤CMソングらしく脇の下をあらわにしながら涼しげに歌う様子は、やはりアイドルとして異形。2枚組オムニバスCD『キラキラ・魔女ッ娘・Cluv』からの再録も含む魔女っ子アニソンは、SEXY-SYNTHESIZERによる8bitアレンジがバニビの欠片もないほどピコピコのビコビコ。全体にバニビの代名詞である北欧ポップを完全封印し、企画モノ的性質の強い作品となっている。

 

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