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Perunika Trio『ブルガリアン・ワラベウタ』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/05/07   11:50
ソース
intoxicate vol.97(2012年4月20日発行号)
テキスト
鈴木智彦(タワーレコード本社)

何かを遠い過去に置き忘れてきてしまった大人が聴くべきなのかも

人口集中が甚だしい首都圏の通勤路線はほぼ毎日何かの理由で遅延して多くの人々の心に毎日多大なストレスを与えてくれているが、そのようなストレス低減を狙ってのものなのか? JR路線の電車の発着メロディはなかなか素敵なアイディアである。僕が毎日利用するJR中央線八王子駅の電車の発着メロディは《夕焼けこやけ》であり三鷹駅のそれは《めだかの学校》なのだが、これらのわらべ歌のメロディから長閑な風景が広がっていた、かつての武蔵野から奥多摩にかけてのひろびろとした景色や豊かな自然を想起して、なんとなくほっとした気持ちを抱いている人も少なからずいるのではないだろうか? 貧しさや不便さを受け入れるかわりに、長閑な暮らしや豊かな自然を手にして、その中で(わらべ歌に象徴されるような、伸びやかで瑞々しい情感を持って)生きていた昔の人々と、ひたすら物質的な豊かさや利便性、そして刺激を追い求めながら、ストレスを抱えて疲れきっている(ように見える)現代の人々。どっちが幸せなのか? という事を、もう一度ほんとに真剣に問い質す時がきている気もするのだがいかがなものだろうか?

と、そんな事を考えがちだったところに出会ったのがこのブルガリアのうら若き乙女3人トリオが日本のわらべ歌を唄うという企画盤である。ブルガリアン・ヴォイスという大所帯のコーラス・グループがここ日本でもかって大きな話題を呼んだが彼女たちの歌声はもっと素朴でシンプルに庶民的なものである。だが、それでもブルガリア・ヴォイス特有のポリフォニーの特徴を彼女たちの歌声はしっかりと備えており、その非西洋音楽的な不協和音を生み出す和声のおかげで、同じくそのような特徴を持つ和声構造を持つ日本のわらべ歌が、とても自然に歌声にフィットしている。わらべ歌=子供向け、ではなく、何かを遠い過去に置き忘れてきてしまった僕たち大人にこそ、聴いてもらいたい作品だ。

LIVE INFORMATION
『ペルニカ・トリオ初来日 <live image 12 douze>出演決定』
5/19(土)OPEN 16:30 / START 17:30   東京国際フォーラム ホールA
5/20(日)OPEN 14:30 / START 15:30   東京国際フォーラム ホールA
【出演】 加古隆クァルテット、小松亮太、ゴンチチ、NAOTO、葉加瀬太郎、 羽毛田丈史、宮本笑里 and more...(50音順)
http://www.liveimage.jp/