フィンランドの大作曲家ジャン・シベリウスの生誕150年記念特集
2015年12月8日は、フィンランドの大作曲家、ジャン・シベリウス(1865年12月8日~1957年9月20日)の生誕150年の記念日です。フィンランドではこの日を国旗掲揚日としています。シベリウスが生きた時代は、日本流に言うと慶応元年~昭和32年にあたります。明治、大正を生き抜き、第2次大戦後の復興まで見届けた人生と言えます。ここではシベリウスの代表的な作品のCDをご紹介しながら、彼の作曲家としての歩みを辿ろうと思います。
シベリウスが生まれたとき、フィンランドは帝政ロシアの支配下にあり、ナショナリズムの高まりによってロシア支配からの脱却を目指していました。この状況は、1917年のロシア革命に乗じてフィンランドが独立するまで続き、その間、1900年にシベリウスが愛国的な内容をもつ交響詩“フィンランディア”を発表したのは有名です。この作品は後に歌詞が付けられ、フィンランドの「第2の国歌」と言われるほど国民に愛され、かつ名曲として世界に知られています。
シベリウスは20歳のときヘルシンキ大学で法律を学ぶ傍ら、ヘルシンキ音楽院(現シベリウス・アカデミー)でヴァイオリンと作曲を学びました。1889年より政府の奨学金を得てベルリンとウィーンへ留学し、フックスとゴルトマルクに学び、大作曲家ブラームスと出会います。帰国後はヘルシンキ音楽院で教鞭をとり、1892年には“クレルヴォ交響曲”を、翌年には交響詩“エン・サガ”を自ら指揮して初演し、ヘルシンキの芸術家グループの中心的な存在となりました。彼は作曲、教育、指揮、室内楽演奏など旺盛に音楽活動を行いながら、毎晩のようにお酒を飲み談論風発する、といった日々を過ごしました。
1897年よりフィンランド政府の年金支給を受け、作曲に専心。シベリウスはイギリスやドイツで自作を指揮し、アメリカでもその作品が演奏されるようになるなど、国際的な名声が高まってゆきます。1899年には交響曲第1番を、1902年には交響曲第2番を自ら指揮して初演し、大成功を収めました。
1904年、シベリウスは家族とともに、ヘルシンキから北へ40kmほどのところにあるヤールヴェンパーに建てられた、アイノラ荘に引越した。誘惑が多く慌ただしい都会の生活から、平穏な田舎暮らしへの変化は、シベリウスの作風に大きな影響を与え、その音楽はロマン主義から離れてゆきます。1905年にはヴァイオリン協奏曲(改訂稿)、1907年には交響曲第3番を初演。1908年に喉の腫瘍の摘出手術を受けてからは、作風は更に内面的となり、1911年には「無駄な音が全く無く斬新な和声の響きとオーケストレーションの室内楽的とも言える交響曲」(藤岡幸夫氏)と言われる傑作、交響曲第4番が生まれます。
1915年12月8日のシベリウス50歳の誕生日は、国家的な祝典となりました。彼はこの日のために、死の恐怖から解放された喜びを謳い上げた祝典的な交響曲第5番を作曲し、自らの指揮で初演しました。その後、1923年には交響曲第6番を、1924年には交響曲第7番を発表し、「ベートーヴェン以後、最大の交響曲作家」(セシル・グレイ)との評価を得ました。最後にシベリウスが公の場に現われたのは、1935年の70歳の誕生日のときでした。その後はアイノラ荘に隠棲し、世界の音楽ファンが切望した交響曲第8番を結局完成させることなく、91歳で亡くなりました。
シベリウスの作品に長く、深く浸りたい愛好家の方々に、おすすめのBOXセットをご紹介いたします。
ジャン・シベリウス生誕150周年記念!
ラトル&ベルリン・フィルによるシベリウス:交響曲全集
2014~15年の最新録音&録画。CD4枚に加え、ハイレゾ音源を収めたブルーレイ・オーディオ、HD映像を収めたブルーレイ・ディスク、ハイレゾ・ダウンロード・クーポンなどを収めた至れり尽くせりの一組。
ハンヌ・リントゥ指揮フィンランド放送交響楽団によるシベリウス:交響曲全集(映像作品)
2015年、ヘルシンキ・ミュージック・センター ライヴ収録。来日公演も大好評だった名コンビによる最新映像です。
オッコ・カム指揮ラハティ交響楽団によるシベリウス:交響曲全集(SACDハイブリッド)
2012~15年録音。2015年11月の来日公演での名演が記憶に新しい同コンビの本拠地でのセッション録音。優秀な録音も注目されます。
マゼール指揮ウィーン・フィルによるシベリウス:交響曲全集(4CD+Blu-ray Audio)
1963~68年録音。名演として名高い1960年代のマゼールのシベリウス交響曲全集が久しぶりに復活。そして同内容を1枚の高音質のBlu-ray Audio Discに収録して封入というオーディオファンにもうれしいセットとなっております。
ストゥールゴールズ指揮BBCフィルによるシベリウス:交響曲全集(3つの断片付き)
2012~13年録音。フィンランド出身のヨン・ストゥールゴールズが、首席客演指揮者として共演を重ねるBBCフィルハーモニックと録音した全集。幻の交響曲第8番のスケッチと言われる「3つのフラグメント(断片)」を収録しています。
ゼーダーシュトレームとクラウセによるシベリウス:歌曲全集
1978~81年録音。名歌手2人によって録音された「歌曲全集」。その多くが当時のフィンランドの言語事情を反映してスウェーデン語で書かれており、穏やかな語調が独特の雰囲気を醸し出しています。
カヤヌス、ビーチャム、ハイフェッツ~シベリウス歴史的録音集1928-1948(7枚組)
【録音】1928~48年のSP復刻。
シベリウス音楽の偉大なる演奏者たち(カヤヌス、ビーチャム、クーセヴィツキ、ハイフェッツなど)による歴史的に意義深い録音を集めたもの。作曲者存命時の音が効ける貴重な一組です。
シベリウス・グレート・パフォーマンシズ(11枚組)
【録音】1950~65年のモノラル&ステレオ録音。
コリンズによる劇的アプローチによる交響曲全集。トゥクセン、ベイヌム、ロスバウト、モントゥー、ギブソン、マッケラスらによる管弦楽作品、ダーメンとリッチの2種のヴァイオリン協奏曲。フラグスタート、ニルソンによる管弦楽伴奏歌曲などを収録。
ドイツ・グラモフォンによるシベリウス・エディション(14枚組)
【録音】1959~2004年のステレオ&デジタル録音。
バーンスタイン、カラヤン、ネーメ・ヤルヴィ、シベリウスの娘婿ユッシ・ヤラスらによる管弦楽作品の名盤だけでなく、ムターによるヴァイオリン協奏曲、キム・ボルイ、トム・クラウセによる歌曲も含まれています。
スウェーデンBIS社によるシベリウス完全全集(全13巻)
シベリウスの没後50年を記念してBISが制作した「シベリウス完全全集」。全体を13のジャンルに分け、全65枚、世界初の大全集の完成となります。英・独・仏・フィンランド・日本語の五カ国語による77ページ豪華解説書と伝記(それぞれ別冊)つき。右は「音詩」と名付けられた第1巻。交響曲以外の管弦楽曲がすべて収められています。
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