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ザ・ポップ・グループの『ハウ・マッチ・ロンガー』が遂に正規復刻!インタヴュー掲載!

ハウ・マッチ・ロンガー

ポップ・グループの1980年発表のセカンド・アルバム『ハウ・マッチ・ロンガー』の正規復刻記念、スペシャルインタヴュー!

訳:湯山惠子

Q:リマスター作業を行ったのはいつですか?

ギャレス・セイガー:約2年前だったかな。

 

Q:スムーズに行きましたか?

ギャレス:大変だったよ。時間はかけたね。当時の雰囲気を再現し、可能な限りいいサウンドに仕上げるためには時間を要した。

マーク・スチュワート:俺もギャレスも今回の再発には真剣だったから、もの凄く時間をかけた。パッケージの紙質からなにから全てに集中して取り組んだね。ポップ・グループ再結成に向けての話し合いをした際に「とにかく、きちんとやりたい」という気持ちがあって。俺達の主張や活動には独立性(=インディペンデントであること)が非常に重要だから、幸いほぼ全カタログを取り戻すことができて良かった。

 

Q:リマスターをするにあたって、どのような狙いで音を作りましたか?

ギャレス:(他のメンバーとは特に話し合わず)、俺とマークのふたりでドラムから何から最高のサウンドに仕上げようと取り組んだ。ふたりで進めるのが一番楽だから。よりパワフルかつ現代的なサウンドに仕上がっているね。『ハウ・マッチ・ロンガー』リリースから35年以上が経過し、マスタリング技術も進化したから本来あるべきサウンドに仕上がった。より生のスピーカーに近い、迫力ある音に仕上がったね。

マーク:若い頃の俺たちの、まるでスタジオでマイクに向かって火山爆発したようなエネルギーを捉えたかった。4人が放った微分子の磁気振動をね。今のデジタル技術って音楽に刻まれたそういった細かいところまで捉えることが可能だから。

 

Q:35年前のご自身が制作したマスター音源に改めて接して、何を感じましたか?

マーク:笑えたな。特に写真が一番笑えた。ギャレスなんてモヒカンだったし!

ハウ・マッチ・ロンガー

ギャレス:ワハハハ(爆笑)!いや、いい作品だと改めて思ったよ。特に新たにマスタリングしたことでよりエキサイティングな作品に仕上がった。個人的には、俺たちの人生における最高の時代や、あの頃にバンドとして表現したかったサウンドを上手く捉えることができたと思う。

マーク:幸運なことに、そこまで恥ずかしいことはしなかったと思う。幸い派手な髪型にもしなかったし(笑)。でも、当時あと2年ほど音楽活動を更に継続していたら、ハリー・ジョーンズみたいな派手な髪型にしていたかもな。今後もそうならないことを祈ってるぜ(笑)。

ギャレス:今後あるかもよ(笑)。

マーク:ドクロのアイテムとか、アホな革ジャン着てたりしてな(笑)。

 

Q:日本以外では今回35年経って初めて正式にCD化されるという、とても珍しいケースですがようやく発売出来ることについてどう感じていますか。

マーク:ポップ・グループには懐古主義的な奴なんていないから、もの凄く奇妙な感じ。俺達は常に未来に向かって新しいサウンドを作り続けてきた。過去に興味あるメンバーなんて誰ひとりいないと思うけど、ポップ・グループが歩んできた運命を自分たちでコントロールすることが重要だった。この作品はイギリスではもともとラフ・トレードからリリースされたけど、自分達のレーベルを立ち上げて原盤を含めた全てを自分達で管理することが大事だった。そうしないと、完全に偽善者になり下がっちまう。こうして自分たちでコントロールしてきたことを凄く嬉しく思うし、あとは聴いた人の感想次第だね。

 

Q:長らく流通していないにも関わらず、数多くのミュージシャンやアーティスト、そして若い世代からもこのアルバムから強く影響を受けたという人が後を絶ちません。このアルバムのなにが彼らを惹きつけていると思いますか?

マーク:俺に言えることは、俺たちも様々な音楽から影響を受けてきたってこと。アルバム制作時は、マイルス・デイヴィスやジャズ・フェスでエクスペリメンタル系アーティストのライヴを観たり、サン・ラーと会ったりした。ロンドン・ミュージシャンズ・コレクティヴのライヴで(チェロ奏者の)トリスタン・ホンジンガーに出会い、「We Are All Prostitutes」のレコーディングに参加してもらったりして。つまり、俺達も多様な音楽を消費し、そして影響を受けてきたってこと。ファクトリー・フロア等の若手アーティストや、ニック・ケイヴ、マッシヴ・アタック、ナイン・インチ・ネイルズ等ベテラン勢がポップ・グループから影響を受けてきたのは、俺達がマイルス・デイヴィスだとかコックニー・レベル、レオ・フェレ等から影響を受けてきたのと同じようなプロセス。謙虚さは大事だよな。

ギャレス:昔話の聞き伝えと似てるね。以前聞いた話を、自分なりの解釈で理解したりして。

 

Q:タイトルになっている言葉は誰のアイデアですか?なにかの引用ですか?

マーク:俺にとって『For How Much Longer Do We Tolerate The Mass Murder?』という言葉は現在でも言い続けている言葉だ。

 

Q:マークがつけたんですか?

マーク:あぁ。

 

Q:当時どのような想いでこのタイトルを付けたのでしょうか?

マーク:当時はベルギーのブリュッセルでジョイ・ディヴィジョンやウィリアム・バロウズとライヴをやったりしていた。JGバラード(=イギリス人SF作家)の『ハイ・ライズ』的でもあり、ウィリアム・バロウズのカットアップ手法的なことをポップ・グループもやっていたんだ。まぁ、俺の手法は泥まんじゅうみたいなもんで若干違ったけど。例えば、電車に乗っている時に他の乗客が発した言葉の中だとか映画のタイトルに面白いものがあったりする。俺にとって並列した言葉の組み合わせはこの時代を象徴するアートだ。組み合わせてはいけない相反するものを混ぜることで、きらめきや不協和音が生まれる。聞こえてきた言葉は、未来、過去、もしくは並行宇宙からやってきたサイキック・メッセージかもしれない。

 

Q:35年経った今でもこの言葉は有効だと思いますか?

マーク:ああ。これまで以上にね。

 

Q:音について。このアルバムはインドネシアのケチャから始まって、ファンクやフリー・ジャズなど様々な音楽性を含んでいますが、当時影響やインスパイアを受けていたアーティストや音楽はどのようなものでしたか。

ギャレス:マークがさっき話したように、マイルス・デイヴィスからは間違いなく影響を受けたけど、音楽的ルーツはパンクやファンク等まで幅広く、評論家的なジャンル分けにはとらわれず、直感でいいと思ったものを聴いていたよ。基本的には自分達が見つけてきたサン・ラーとかオーネット・コールマン等ジャズ系が多かったね。

マーク:今でもそうだけどポップ・グループは子どものような「遊び心」を常に大事にしている。このアルバムはウェールズの片田舎にあるスタジオで録音したんだけど、スタジオ・オーナーの子どものひとりが掃除機のホースみたいなものを振り回すと「ウ―――ッ」って音が鳴り響いたんだ。そういった感じでなんでも受け入れて、プラグを逆につけたり実験的なことを試した。子どものような無垢な遊び心は俺達にとってもの凄く大事だから。

 

Q:デビュー作「Y」はデニス・ボーヴェルとバンドの共同プロデュースでしたが、今作はバンドとデイヴ・アンダーソンという名前がクレジットされています。どのような人ですか?

ギャレス:デイヴはエンジニアだよ。俺らはレコーディング技術に関してはわかんないから、マイクをセット・アップしたり、録音するのを手伝ってくれるスタッフだった。

マーク:俺達、意図的に感謝の気持ちを込めてクレジットを入れることもあるんだ。

 

Q:レコーディング時にもっとも重要視していたことは何だったのでしょうか。

ギャレス:細かいことは覚えてないけど、マークが話していたようにスタジオで演奏した際の攻撃的かつ暴力的なサウンドのエネルギーやパワーをテープに録音したかった。例えばハイ・ハット音がどうだとかの細かい部分じゃなくて、そういったことが一番大事だった。

 

Q:1980年当時のシーンで仲の良かったバンド、シンパシーを感じていたバンドは?

マーク:俺もギャレスも当時流行っていた即興音楽シーンにシンパシーを感じていたね。「We Are All Prostitutes」のレコーディングでフリー・ジャズ奏者のトリスタン・ホンジンガーに参加してもらった。一方、ギャレスはハン・ベニックというジャズ・ドラマーが特に好きだったね。当時はニューヨークで過ごすことが多かったから。俺達って高校卒業してすぐに突然ニューヨークへ行くことになり、1ケ月ほどNYCで活動していたんだ。同世代で唯一自分たちに近い存在だったのはジェイムス・チャンスとその周辺だった。DNAと一緒にライヴしたことも何度かあったな。デファンクトと一緒にやったこともあったし。俺はセローンの「Supernature」あたりもよく聴いていたね。あの曲を歌ったこともあったし。クラフトワークのノイズ系作品を手がけていたコニー・プランクと仕事したいと考えていた時期もあった。いろんな音楽から影響を受けていた俺達は、このアルバムでバンドとしてのエネルギーを捉えたかった。当時のライヴ・テープを聴くと、実はスタジオ録音とあまりサウンド面は変わらない。メンバー全員でいつもスタジオで一日中いろんな曲を一緒に演奏していて、誰にも止められなかった。デュラセル社の電池のCMに登場するアホな兎みたいに、演奏を始めるともう止まらなかったね。

 

Q:ジャケットのデザインは誰が?

マーク:俺だよ。痛みと希望は同列に並ぶものだから、この写真は非常に意味があると思って。俺にとって「希望」とは力を意味する。若い頃の俺はジャーナリストかレポーターみたいな仕事に就くことも考えていて、「知能を刺激する興味深いテーマに高揚感と希望が溢れる素晴らしい音楽を作ることが一番だろう」と思っていた。情報と人間のエネルギーが同列に並ぶことは非常に重要。真剣な話をしながら同時にやたら可笑しかったり、希望を持てることってあるから。

 

Q:今回のリイシューでは「One Out Of Many」の代わりに「We Are All Prostitutes」が収録されました。なぜそうしたのですか?

マーク:もともと「We Are All Prostitutes」を入れるつもりだったんだけど、アルバム制作時になにかのトラブルでマスターが用意できなかったから代わりに急遽「One Out Of Many」を入れることになったんだ。今回のリイシューで「We Are All Prostitutes」を収録することができて初めてこのアルバムの本来あるべきストーリー通りの作品にすることができた。

 

Q:今回の公式リマスターリイシューに日本でもたくさんのファンがエキサイトしています。発売を待っているファンにメッセージを。

マーク:個人的に思うのは、このアルバムを制作していた時代から、俺達を取材した日本のジャーナリスト達は非常に知的かつ政治的関心が強かった。彼らはポップ・グループのみならず、日本のエクスペリメンタル系音楽を全般的に支持していて、素晴らしかった。ジャズが流行った時代も日本はいい空間とエネルギーを人々に与え、まるで第二次対戦後に大勢のジャズ・メンを暖かく受け入れたパリのように、ミュージシャンを応援してくれた。ミュージシャンに対する敬意と自由度のある日本人リスナー達の耳は俺たちを助けてくれた。アーティスト側の視点から言うと、自分達の音楽が一体何処に届けられ、どんな反応を得られるのかが見えないこともある。例えばイギリスではおかしなことに特に音楽雑誌なんかは取り上げるものが決まっていたりするけど、日本のオーディエンスは世界屈指のオープン・マインドな人達だと思う。日本の皆、ありがとう!!!!

 

リリース情報

1980年発表、ザ・ポップ・グループのセカンド・アルバム──ロック史に残る名盤と高く評価されながらも、20年に渡って国内での正式リリースがなく入手困難なアイテムとして知られる作品が遂に正規復刻!当時オリジナル発売時には収録される予定だったにもかかわらずカットされた「We Are All Prostitutes」を収録。(オリジナル盤収録の「One Out of Many」と差し替えられます)、マーク・スチュワート、ギャレス・セイガーらメンバー自らの手による最新リマスター、オリジナル発売時に封入されていた大判ポスター4枚を縮小再現!!

 

 

カテゴリ : キャンペーン

掲載: 2016年02月15日 13:14