タワレコバイヤーが選ぶ!お勧めビートルズカバー・アルバム、カバー曲収録アルバム(ロック編)
『真実』Fiona Apple
フィオナ・アップルによる“アクロス・ザ・ユニバース”のカバーは、ゲイリー・ロス監督映画「プレザントヴィユ」(邦題「カラー・オブ・ハート」)の為に録音された曲で、このアルバムに日本盤ボーナス・トラックとして収録。(残念ながらサントラは現在廃盤!)ダウナーな魅力を放つ彼女にとってこの曲のカバーはあまりにもハマり過ぎで、原曲の持つ美しさと気怠さを捉えた歌唱っぷりはもうお見事。発表当時、ラジオでよく流れており、それを聴いた友人が『今流れてる“アクロス・ザ・ユニバース”のカバー最高!』って興奮気味にメールを送ってきたのが良い思い出です。
(難波店:赤瀧洋二)
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『イノセンス & ディスペアー』Langley Schools Music Project
70年代半ばに録音された小学生によるロック名曲の合唱盤。デヴィッド・ボウイ、ジョン・ゾーン、リチャード・カーペンターらを感動させたカルト名盤として知られ、演奏のたどたどしさ、歌の音程の危うさが問題にならない〈純度の高さ〉が魅力。特にビートルズの “The Long and Winding Road”、そしてイーグルスの“Desperado”はピアノ伴奏+女の子のソロ歌唱でなんともピュアゆえの美しさとダークさが共存する奇跡的歌唱で、はからずもオリジナルを凌駕してしまっている。
(梅田大阪マルビル店:村越辰哉)
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『Young Americans』David Bowie
地球征服をしたペルソナ=ジギースターダストを葬ったボウイはジョン・レノンに接近し「Fame」を共作、アメリカでも本格的に成功した本作で「Across The Universe」をカバー。グラムロックから大胆な舵を取りアメリカン・ソウルにどっぷり浸っていたこの頃のボウイは自らを皮肉し、白人によるソウル=プラスティック・ソウルを提唱。ジョンが描いたメロディーの中でも屈指の美しさを放つドリーミーなこの曲も最高にセクシー&グルーヴィーなソウル・アレンジで大胆カバーしてます。変貌ぶり、憑依型によりカメレオン的イメージの強いボウイですが、何より歌の凄さに一発で圧倒される極上のカバー。ドラッグの影響で40kg台まで痩せこけた体とは思えない、キャリア随一に危うくもエモーショナルな歌唱を聞かせてくれます。心身がボロボロだったせいでボウイ本人もこの頃の作品をあまり好んでないようですが、誰が何と言おうと74~75年のボウイが一番色気があり、一番ヤバく、一番私を魅了するのです。
(吉祥寺店:巻本拓也)
Across the Universe (2016 Remaster)
Fame (2016 Remaster)
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『ストリート・ラッツ』Humble Pie
ハンブル・パイの9作目。なぜか1枚のアルバムにビートルズのカバーが3曲も入っているのに加えて、“Rock And Roll Music”(チャック・ベリー作だがビートルズのカバーでも有名)も収録されています。ところが、ビートルズ色の強いアルバムなのかというと全然そうではなく、むしろここで演奏されているビートルズ曲、“We Can Work It Out”や“Drive My Car”は、ボーッとしてるとそれとはまったく気づかないくらい、オリジナルとかけ離れたアレンジで、ちゃんとパイの曲になっているのが面白いわけです。ちなみに、本作はなぜかベースのグレッグ・リドリーのヴォーカル曲がやたらと多く、スティーブ・マリオットとのバランス感覚が絶妙なのも特徴。異例尽くしの不思議な1枚で、パイはいったん解散してしまうのでした。
(人事部:土井 基)
掲載: 2019年10月09日 18:30