イヴァン・モラヴェツ生誕90年記念特集(1930年11月9日 - 2015年7月27日)
20世紀を代表するチェコの偉大なピアニスト、イヴァン・モラヴェツ(1930-2015)。存命ならば2020年11月9日に90歳を迎えました。生誕90周年(没後5周年)を記念してチェコのSUPRAPHONレーベルから「イヴァン・モラヴェツ/ポートレート」をリリースしました。この偉大なピアニストへの思いをチェコの5人のピアニスト、ヤン・バルトシュ、スラーヴカ・ピエホチォヴァー=ヴェルネロヴァー、イヴォ・カハーネク、ミロスラフ・セケラ、イトカ・チェホヴァー、そして生前モラヴェツと親交の深かったマレイ・ペライアがメッセージを寄せています。
(キングインターナショナル)
ヤン・バルトシュ
私がイヴァン・モラヴェツの生演奏に初めてふれたのは11歳の時でした。その夜、私はピアニストになろうと決心しました。モラヴェツの演奏は真摯かつ繊細にして毅然としていました。それはモラヴェツ自身の人柄もそうでした。SUPRAPHONレーベルからリリースされた「イヴァン・モラヴェツ/ポートレート」のボックス・セットは世界で最も偉大なピアニスト、モラヴェツの芸術性に触れることができます。
スラーヴカ・ピエホチォヴァー=ヴェルネロヴァー
毎日、ピアノの前に座ると、恩師イヴァン・モラヴェックが私のそばにいてくれるような気がします。それは師が私に与えてくれたピアノを現在も弾いて練習しているからです。弟子としてレッスンをしてくださった充実した9年間、そして音楽院で師事した10年間は私にとっての宝物です。その間、週に2回は師の声を聞いていたので、今でも彼の声が聞こえてくる時があります。「あなたが既に持っているものを演奏で表現しなさい!」「よい演奏は鍛錬した者のみに与えられます!」「運動を続けなさい!」などなど...。師を思い出すとき、彼が教師として私たち弟子のそれぞれの個性を尊重し、その誠実な人柄と同様に、純粋で正直な人間であったことです。彼は平凡さ、見せかけ、押し付けがましいことを嫌いました。今、私はその師の遺志を受け継ぎたいと思っております。
イヴォ・カハーネク
イヴァン・モラヴェツは、ルドルフ・フィルクシュニーと並んで、チェコの最も偉大なピアニストです。私は彼の弟子ではなく、彼と直接会ったこともごく僅かですが、完璧な音楽表現を追求する彼の姿勢に心を奪われてしまいました。細部にまで気を配り、丁寧に音楽と向き合うこのような謙虚な姿勢にはますます感銘を受けております。
ミロスラフ・セケラ
私は幸運にもイヴァン・モラヴェツのマスタークラスに参加する機会を何度か得ることができました。彼の楽曲に対する飽くなき研究と細部へのこだわり、そして努力は本当に驚かされました。私はそのマスタークラスを録音し何度も聴き返し、その演奏を比較しながら自分自身の演奏をさらに向上させるために役立てました。彼は完璧なパフォーマンスを求め続け、弟子たちにもその姿勢を求めました。彼のストイックなまでの飽くなき探求、そして類まれな才能により、彼はコンサート会場を聴衆で埋め尽くし聴き手に感動を与えました。
イトカ・チェホヴァー
ピアニスト、イヴァン・モラヴェツを思うと最初に思い浮かぶのは何でしょう?彼は偉大なピアニストであることは言うまでもありませんが、偉大な作曲家の作品を美しく演奏することに努力を惜しまなかったことを思い出します。作曲家の思いの核心に近づけるよう、その完璧なまでの演奏を実現するための絶え間ぬ努力の結果が反映されていました。彼が録音したモーツァルト、ベートーヴェン、ショパンに、私は子供の頃から感化されていました。音楽院で学んでいた私は、プラハで彼のコンサートを聴くことができ、その後、彼の弟子になることができたことは今も私の財産です。私は師のピアノへの向き合い方、作品に対する姿勢、そして解釈と、飽くなき探求に魅了されました。イヴァン・モラヴェツが亡くなってから5年が経ちました。しかし、師の演奏は今も私の中で生き続け、SUPRAPHONレーベルからリリースされた「イヴァン・モラヴェツ/ポートレート」を聴くことで、その魂をゆさぶる演奏がよみがえります。
マレイ・ペライア
チェコの偉大なピアニスト、イヴァン・モラヴェツとの個人的な付き合いは、何年も前にさかのぼります。1980年代、私は彼がリリースした録音を聴いていました。その後、私はオールドバラ音楽祭に彼をリサイタルに招待しました。こうして始まった友情は彼が亡くなるまで続きました。それはプラハに行くたびに彼に会うことはもちろんのこと、ベルリンやエルサレムなど、各都市でのツアーでもお互いに訪問しました。私は幸運なことに彼のリサイタルを何度も聴くことができ、また彼が行った魅力的なマスタークラスに参加することができました。直接会えない時に電話で長話したこともありました。私は、彼のピアニストとしての知識、芸術家としての姿勢に感嘆するばかりでなく、正直さと道徳的な誠実さに感銘を受けました。彼の演奏については、色彩感の豊かさ、フレージングの自然さに強く魅了されています。彼はこの世を去ってしまいましたが、彼が残してくれた素晴らしい録音を聴くことで、彼が唯一無二の存在であったことを思い出させます。
絶賛発売中!
初CD化を含むチェコの名ピアニストの集成!『イヴァン・モラヴェツ - ポートレート 』(11CD+DVD)
生誕90周年、歿後5周年記念。スプラフォン原盤だけでなく米コニサー・ソサエティ、ヴォックス、ノンサッチ、ドリアン原盤の録音も入っているのが嬉しいところ。DVDにはドキュメンタリーと演奏映像を収録!
イヴァン・モラヴェツと言えば、オールド・ファンには米コニサー・ソサエティから続々とリリースされた優秀録音のステレオLPが懐かしいところ。日本ではフィリップス・レーベルで発売され、新譜が出るたびに話題となりました。CD時代に入ると、チェコを代表する巨匠ピアニストとして広く親しまれたのはご承知の通りです。今回のスプラフォンによる集成は、チェコ録音だけでなく、彼の西側での録音を広く集めているのが大きな特徴で、これまでCDでは聴けなかった、もしくは入手困難であった音源も多く、ファン待望の集成となっています。
情報解禁時に不明だった、収録各曲の原盤名もCD毎に追記しました。ご確認いただければ幸いです。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)
【曲目】
CD 1
モーツァルト:
(1)ピアノ協奏曲第14番 変ホ長調 K 449(1784)
(2)ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K 488(1786)
(3)ピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K 503(1786)
(1)(2)チェコ室内管弦楽団、ヨゼフ・ヴラフ(指揮)
(3)チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、ヨゼフ・ヴラフ(指揮)
録音:(1) 1974年5月4日、(2) 1974年4月11 & 12日、(3) 1973年2月3 & 4日/ドヴォルザーク・ホール(ルドルフィヌム)
原盤:スプラフォン
CD 2
ベートーヴェン:
(1)ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 Op.37(1800)
(2)ピアノ協奏曲第4番 ト長調 Op.58(1805/1806)
(3)ピアノ・ソナタ第27番 ホ短調 Op.90(1814)
(1)チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、ヴァーツラフ・ノイマン(指揮)
(2)ウィーン楽友協会管弦楽団、マルティン・トゥルノフスキー(指揮)
録音:(1) 1979年12月17日/ドヴォルザーク・ホール(ルドルフィヌム)
(2) 1963年10月6 & 7日/ムジークフェラインスザール(ウィーン)
(3) 1964年/マンハッタン・タワーズ・スタジオ(ニューヨーク)
原盤:(1)スプラフォン、(2)(3)米コニサー・ソサエティ
CD 3
ベートーヴェン:
(1)ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調「悲愴」Op.13(1798-99)
(2)ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調「月光」 Op.27-2(1801)
(3)ピアノ・ソナタ第26番 変ホ長調「告別」Op.81a(1809-10)
(4)ピアノ・ソナタ第15番 ニ長調「田園」 Op.28(1801)*
(5)7つのバガテルより第4番 イ長調 Op.33-4(1801-02)
(6)バガテル第24番 イ短調「エリーゼのために」WoO 59(1810)
録音:(1)(2)(6)1964年/マンハッタン・タワーズ・スタジオ(ニューヨーク)
(3)(5)1969年9月/セントポール・チャペル、コロンビア大学
(4)1970年2月4日/ドヴォルザーク・ホール(ルドルフィヌム)(ライヴ)
原盤:米コニサー・ソサエティ
CD 4
ショパン:
(1)バラード第1番 ト短調 Op.23(1831-35)
(2)バラード第2番 ヘ長調 Op.38(1836-39)
(3)バラード第3番 変イ長調 Op.47(1840-41)
(4)バラード第4番 ヘ短調 Op.52(1842)
(5)スケルツォ第1番 ロ短調 Op.20(1842)
(6)スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31(1837)
(7)スケルツォ第3番 嬰ハ短調 Op.39(1839)
(8)スケルツォ第4番 ホ長調 Op.54(1842)
録音:(1) - (3) 1965年/ウィーン・コンツェルトハウス内モーツァルトザール
(4)1963年5月30、31&6月3日/ドヴォルザーク・ホール(ルドルフィヌム)
(5) - (8) 1989年11月/トロイ貯蓄銀行ホール(ニューヨーク)
原盤:(1)-(3)米コニサー・ソサエティ、(4)スプラフォン、(5)-(8)米ドリアン
CD 5
ショパン:
(1)24の前奏曲 Op.28(全24曲)
(2)ポロネーズ第7番 変イ長調「幻想」 Op.61(1846)
(3)ピアノ・ソナタ第2番 変ロ長調 Op.35(1839)
録音:(1) 1976年3月14日/ドヴォルザーク・ホール(ルドルフィヌム)
(2) 1982年4月5-7日/RCAスタジオA(ニューヨーク)
(3)2002年11月11-13日/アカデミー・オブ・アーツ・アンド・レターズ(ニューヨーク)
原盤:(1)スプラフォン、(2)(3)米ヴォックス
CD 6
ショパン:
(1)マズルカ 嬰ハ短調 Op.50-3
(2)マズルカ 嬰ハ短調 Op.63-3
(3)マズルカ イ短調 Op.7-2
(4)マズルカ ハ長調 Op.24-2
(5)マズルカ イ短調 Op.17-4
(6)マズルカ ヘ短調 Op.63-2
(7)マズルカ イ短調 Op.68-2
(8)マズルカ 変ロ長調 Op.7-1
(9)マズルカ 嬰ハ短調 Op.30-4
(10)マズルカ ロ短調 Op.33-4
(11)マズルカ ホ短調 Op.41-2
(12)マズルカ ヘ短調 Op.68-4
(13)マズルカ ハ長調 Op.7-5
(14)マズルカ ハ長調 Op.56-2
(15)マズルカ ホ長調 Op.6-3
(16)マズルカ 変ロ短調 Op.24-4
(17)マズルカ 変ニ長調 Op.30-3
(18)ポロネーズ第1番 嬰ハ短調 Op.26-1(1831-36)
(19)ワルツ イ短調 Op.34-2(1831)
(20)ワルツ 嬰ハ短調 Op.64-2(1846-47)
(21)ワルツ ホ短調 遺作(1830)
(22)舟歌 嬰ヘ長調 Op.60(1845-46)
録音:(1)-(5)(22)1967年11月21-24日/ウィーン・コンツェルトハウス内モーツァルトザール
(6) - (10)(18) - (21)1982年4月5-7日/RCAスタジオA(ニューヨーク)
(11) - (14) 1989年11月/トロイ貯蓄銀行ホール(ニューヨーク)
(15) - (17) 2002年11月11-13日/アカデミー・オブ・アーツ・アンド・レターズ
(ニューヨーク)
原盤:(1)-(5)(22)米コニサー・ソサエティ、(6) - (10)(15) - (21)米ヴォックス、(11) - (14) 米ドリアン
CD 7
(1)ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調「熱情」Op.57(1804-05)
(2)シューマン:子供の情景 Op.15(1838)*
(3)シューマン:アラベスク ハ長調 Op.18(1839)*
(4)ブラームス:カプリッチョ ロ短調 Op.76-2(1878)*
(5)ブラームス:ラプソディ ト短調 Op.79-2(1879)*
(6)ブラームス:3つの間奏曲 Op.117(1892)*
(7)ブラームス:間奏曲 イ長調 Op.118-2(1893)
録音:(1) 1968年10月、(7) 1969年9月/セントポール・チャペル、コロンビア大学
(2) - (6) 1982年3月/RCAスタジオA(ニューヨーク)
原盤:(1)(7)米コニサー・ソサエティ、(2) -(6) 米ノンサッチ
CD 8
(1)シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54(1845)
(2)ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 Op.15(1858)
ダラス交響楽団、エドゥアルド・マータ(指揮)
録音:(1) 1992年4月16 & 17日、(2) 1993年1月14-16/モートン・H・マイヤーソン・シンフォニーセンター(ダラス)
原盤:米ドリアン
CD 9
ドビュッシー:
(1)映像第1 集 (2)映像第2 集 (3)版画 (4)ピアノのために
(5)子供の領分 (6)月の光~ベルガマスク組曲より
録音:(1) - (3) 1982年4月1 & 2日/RCAスタジオ(ニューヨーク)
(5)(6) 1964年/マンハッタン・タワーズ・スタジオ(ニューヨーク)
(4) 1967年11月21-24日/ウィーン・コンツェルトハウス内モーツァルトザール
原盤::(1) - (3) 米ヴォックス、(4)(5)米コニサー・ソサエティ
CD 10
(1)フランク:前奏曲、コラールとフーガ
(2)-(5)ドビュッシー:前奏曲集第1集より【IV.音と香りは夕べの大気の中に漂う/V.アナカプリの丘/VI . 雪の上の足あと/X . 沈める寺】
(6) - (10)ドビュッシー:前奏曲集第3 集より【II .枯れ葉/III .ビーノの門/VII .月の光がそそぐテラス/VIII .オンディーヌ/XII . 花火】
(11)ラヴェル:ソナチネ 嬰ヘ短調
(12)ラヴェル:ハバネラ形式の小品*
(12)アレクサンドル(サシャ)・ヴェチュトモフ(チェロ)
録音:(1)1962年5月、(2)(3)(5)(10)1965年/マンハッタン・タワーズ・スタジオ(ニューヨーク)
(4) 1982年4月1 & 2日/RCAスタジオA
(7)(8)(9)(11)/ウィーン・コンツェルトハウス内モーツァルトザール
(6) 1963年5月30日、(12) 1963年/ドヴォルザーク・ホール(ルドルフィヌム)
原盤:(1)-(5)(7)-(11)米コニサー・ソサエティ、(6)(12)スプラフォン
CD 11
(1)ヤナーチェク:ピアノ・ソナタ 変ホ短調「1905年10月1日、街頭にて」*
(2)ヤナーチェク:霧の中で*
(3)ヤナーチェク:草陰の小道を通ってより【VII.おやすみ/IX.涙ながらに/II.散りゆく木の葉】*
(4)マルティヌー:エチュードとポルカ集より【II . ポルカ ニ長調/V . パストラーレ/IV . ポルカ イ長調】
(5)スメタナ:チェコ舞曲集第1 集より【II . ポルカ】
(6)スメタナ:チェコ舞曲集第2 集より【VII .フラーン/VIII .オプクロチャーク/I .フリアント】
(7)スメタナ:3つの詩的ポルカより第2番 ト短調 Op.8-2
(8)スメタナ:ポルカ「プルゼニュの思い出」 変ホ長調
録音:(1) - (3) 1982年3月/RCAスタジオA(ニューヨーク)
(4) 2020年10月16日/マルティヌー・ホール(プラハ)
(5) - (8) 1984年12月19日/ドヴォルザーク・ホール(ルドヌフィヌム)(ライヴ)
原盤:(1)-(3)米ノンサッチ、(4)-(8)スプラフォン
DVD 57'30
(1)ドキュメンタリー「イヴァン・モラヴェツ」【字幕:英語】(57'30)
(2)ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲 ハ短調 WoO.80(収録:1976年/チェコ)
(3)ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調「熱情」Op.57(収録1976年/チェコ)
(4)プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第1番 変ニ長調 Op.10
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、カレル・アンチェル(指揮)
収録:1967年5月15日/スメタナ・ホール(プラハ)
(5)モーツァルト:ピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K 503
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、ヨゼフ・ヴラフ(指揮)
収録:1973年2月1日/ドヴォルザーク・ホール(ルドヌフィヌム)
(6)ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、ヴァーツラフ・ノイマン(指揮)
収録:1983年6月9日/ドヴォルザーク・ホール(ルドヌフィヌム)
*= 初CD 化音源
【演奏】
イヴァン・モラヴェツ(ピアノ)
使用楽器:
●ボールドウィン(マンハッタン・タワーズ・スタジオ録音)
●スタインウェイ(マンハッタンを除くアメリカ録音及びマルティヌー・ホール録音)
●ベーゼンドルファー(ウィーン録音)
●ペトロフ(ドヴォルザーク・ホール録音)
カテゴリ : Classical
掲載: 2020年11月09日 12:00