【追悼】指揮者ミシェル・コルボ(1934年2月14日 - 2021年9月2日)
ルネサンスからロマン派に至る宗教音楽の録音や、度重なる来日公演でお馴染みだったスイスの指揮者、ミシェル・コルボ氏が、スイス公共放送の報道によると9月2日、心不全で亡くなりました。87歳でした。謹んでご冥福をお祈りいたします。
コルボ氏は1934年2月14日、スイス、フリブール州マルサンの声楽家の家系に生まれました。地元フリブールの音楽学校で声楽と作曲を学んだあと、ローザンヌとシエナで指揮法を修めました。1961年にローザンヌ声楽アンサンブルを、ついでローザンヌ器楽アンサンブルを組織して、ルネサンス・バロック音楽の普及に尽力。1964年、ヌヴェールで開催された国際合唱会議で、エラート社の芸術監督ミシェル・ガルサンと出会い、レコーディングへの道が開かれ、その後の彼のキャリアに決定的な影響を与えました。1967年に録音したモンテヴェルディ「聖母マリアの夕べの祈り」(第1回録音)は1967年度フランスACCディスク大賞を獲得。1972年には彼の代名詞となるフォーレのレクイエム(第1回録音)を録音。ボーイソプラノを起用した透明感のある音色が大評判となり、合唱指揮者としての国際的な名声を不動のものとしました。
1969年からはリスボンのグルベンキアン合唱団と管弦楽団の指揮者を兼任し、レパートリーをロマン派にまで広げて活躍することとなります。この2つのグループ、ローザンヌ声楽アンサンブルとグルベンキアン合唱団は、コルボの録音のほとんど(100枚以上)で共演し、数え切れないほどの成功を収めました。また、教育者としては1976年から2004年までジュネーブ音楽院で合唱指揮を教えました。
日本へは1989年以降、度々来演し、とくに「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭では音楽祭の顔として毎年のように素晴らしい名演を披露しました。筆者も2014年5月3日のフォーレのレクイエム、2015年5月3日のバッハのヨハネ受難曲に接し、生涯忘れがたい感銘を受けました。改めてコルボ氏に感謝したいと思います。
ここでは彼の芸術を振り返るために、代表的なディスクをご紹介いたします。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)
コルボ指揮のバッハ
コルボが日本でもたびたび名演を披露したバッハの三大宗教作品がCD化されています。4点目はリスボンのグルベンキアン管弦楽団を指揮したバッハのピアノ協奏曲集で、ポルトガルの名ピアニスト、ピリスが共演しています。
コルボ指揮のフォーレ、デュリュフレ
コルボの代名詞となったフォーレのレクイエム。1枚目と2枚目は1972年の第1回録音。フルオーケストラ第3稿による演奏です。3枚目は2005年の日本でのライヴ録音。こちらは小編成オケによる第2稿(1893年版)による演奏です。歴史的名盤に接したい方には1972年盤を、日本公演やコルボ晩年の陰翳深い演奏に接したい方には2005年盤をおすすめします。4枚目はフォーレのレクイエムに倣ってデュリュフレが作曲した美しいレクイエム。ここでもコルボは決定的な名演を聴かせてくれます。
その他の現役盤
2021年9月時点で注文可能と思われるコルボのCDです。メーカー在庫切れの場合は入荷しない場合もございます。あらかじめご了承ください。
カテゴリ : Classical
掲載: 2021年09月06日 12:00