NHK 映像の世紀バタフライエフェクト「戦争の中の芸術家」で話題!フルトヴェングラー「ヒトラーの第九」
2023年4月3日と12日にNHKで放送された「映像の世紀バタフライエフェクト~戦争の中の芸術家」で、ドイツの名指揮者、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーが1942年4月19日のヒトラー生誕記念前夜祭でベートーヴェンの第九を指揮したCDが話題となっています。
1942年、戦況の悪化のため、国民統合の象徴として当時ドイツ文化を象徴する存在だった名指揮者フルトヴェングラーに総統誕生祝賀演奏会を指揮させようと宣伝大臣ゲッベルスが画策。それまでほかに演奏スケジュールを入れ要請を断っていたフルトヴェングラーもついに屈服、ナチス党旗を前にして指揮する羽目に陥りました。この日の演奏はドイツ全土にラジオ放送されたため、ラジオ中継音源が遺ることに。演奏の終楽章一部はナチスの宣伝用ニュース映画に撮られました。フルトヴェングラーとしては不本意ながらの指揮であるはずなのに、戦時下、ナチス党幹部を背にしての極限状態のなかで行われた指揮はすさまじい激しさ。まさに凄絶の極みです。LPレコードやステレオ録音が開発される前の、戦時中の放送録音のため、音の状態はモノラルでノイズを伴い、歪みも伴いますが、貴重な歴史のドキュメントと言えます。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)
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フルトヴェングラーがスイスに亡命する直前の公演であるフランクの交響曲とブラームスの第2番は、その凄まじい演奏内容により、今や伝説と化しています。
(平林直哉)
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ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
第2次世界大戦中にナチス・ドイツにとどまったため、ナチスへの協力容疑で連合国から演奏禁止を宣せられたフルトヴェングラーが、晴れて無罪となり、ベルリン・フィルに復帰した際の凄絶極まる「運命」交響曲の名演です。
(タワーレコード)
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監督:クリスティアン・ベルガー
制作:2022年
日本語字幕:西久美子
CMajorEntertainment公式YouTubeページより
なぜフルトヴェングラーはナチス政権と係わりを持ったのか?
なぜ死の収容所で音楽が演奏されたのか?
復元・カラー化され鮮明に浮かび上がる歴史的映像!
ホロコースト生存者のチェロ奏者アニタ・ラスカー=ウォルフィッシュを中心に描かれるドキュメンタリー
なぜフルトヴェングラーはナチス政権と係りを持ったのか、なぜ死の収容所で音楽が演奏されたのか?
ドイツ国営国際公共放送(Deutsche Welle)制作のこのドキュメンタリー映像『ハーケンクロイツの下のクラシック』では、ナチス政権にとってなぜクラシック音楽が重要だったのかを、第三帝国時代の音楽文化を象徴する二人を中心に描いています。ひとりは、ナチス政権時代にはすでにして大指揮者であったヴィルヘルム・フルトヴェングラー。そしてもうひとりは、ユダヤ人として強制収容所に送られるも、音楽によって生き延びることができたチェロ奏者アニタ・ラスカー=ウォルフィッシュです。さらにドキュメンタリーではダニエル・バレンボイム、クリスティアン・ティーレマンといった現在活躍する音楽家や、フルトヴェングラーの子供たちなどのインタビューも収録。苦悩に満ちた歴史とその背景を克明に記録しています。
ドキュメンタリーの主人公の一人フルトヴェングラー。1942年4月、戦況の悪化のなか、国民統合の象徴として総統誕生祝賀演奏会を指揮させようと画策した宣伝大臣ゲッベルスの圧力の前についに屈服、ナチス党旗を前にして指揮する羽目に陥りました。この演奏はドイツ全土にラジオ放送され、ラジオ中継音源が遺ることに(KKC-4288/ヒトラーの第九)。演奏の終楽章一部はナチスの宣伝用ニュース映画に撮られました。本映像では、それらのアーカイヴ・フィルムを復元しカラー化。歴史的ドキュメントが鮮明に映し出されます。
そしてもう一人の主人公は、ホロコースト生存者であるアニタ・ラスカー=ウォルフィッシュ。1925年にポーランドで生まれ現在94歳。1938年からナチス政権下のベルリンでチェロを学び、1942年に姉妹とともに強制労働に従事させられ、1943年にアウシュビッツ絶滅収容所に移送。両親は殺害されてしまいましたが、アニタはチェロが演奏できることから収容所を生き延びることができ、ベルゲン・ベルゼン強制収容所で解放されます。彼女はドキュメンタリーの中で歴史の証人として、壮絶な収容所での生活を振り返っています。
アドルフ・ヒトラーと宣伝省大臣ヨーゼフ・ゲッベルスは、ドイツ音楽を第三帝国が世界において強力な地位にあるということを正当化し、聴衆の目をナチスの犯罪からそらすために使われました。そして戦争の士気を保つために工場でも演奏会が行われています。フルトヴェングラーとベルリン・フィルが1942年2月26日AEG工場で行った演奏会では、ヒトラーが愛好したワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲が演奏されています(KKC-5952/フルトヴェングラー帝国放送局(RRG)アーカイヴ1939-45に収録)。
このように音楽は戦争遂行のために利用されていたのです。ただ音楽はプロパガンダに利用され、破壊されただけではなかったということも、アニタの証言から感じ取ることができます。アニタはこう言います。
「ナチスは多くのものを破壊しました。でも音楽は?誰も破壊できません。」
(キングインターナショナル)
76 2808
(DVD)
画面:NTSC,16:9
音声:DD5.1
字幕:英独仏韓日
86分
KKC 9797
(DVD)
輸入盤・日本語帯・解説付
カテゴリ : Classical
掲載: 2023年04月13日 12:00