70年代における新しいハワイ音楽のスタイルを提示した代表的バンド=オロマナ
ピーター・ムーン・バンドやカントリー・コンフォートなどと共に<アイランド・ミュージック>とも呼ばれた70年代における新しいハワイ音楽のスタイルを提示した代表的バンド<オロマナ>。オアフ島出身のふたりの若者、ジェリー・サントスとロバート・バーモントによって73年頃結成。本盤は76年リリースのファースト・アルバム。ハワイ人としてのルーツを忘れずに、ハワイの伝統的な音楽をメインランド(特に西海岸)のコンテンポラリーなポップ・ミュージックとブレンドした彼らの音楽は熱狂的に受け入れられた。歌の内容はもちろん、グループ名やジャケットの意匠に至るまで、ハワイ人としてのアイデンティティを巧みに刺激したことも、人気の秘密だった。なかでもジェリー作の[2](原題は“カハルウにある私の家”の意)は、生まれ育った古き良き時代のハワイをノスタルジックに回想した名曲で、以降多くのアーティストによって取り上げられることになる。オリジナル中心だが、冒頭の「ライオン」の作者クレジットは、“ヴァン・モリソン/トラッド”となっているように、ヴァン・モリソンの「リッスン・トゥ・ザ・ライオン」の歌詞とタイトルを若干変えて、トーケンズでお馴染みの「ライオンは寝ている」のフレーズをつなげたもの。ジェリーの甘いテナー・ヴォイスを軸に、ふたりのハートウォーミングなヴォーカル・ハーモニーと、スラック・キー・ギターの美しい響きは、理屈抜きに聴く者の心をとらえて離さない。