ヴァイオリンの巨星、ルッジェーロ・リッチ氏、逝去
アメリカを代表する名ヴァイオリニスト、ルッジェーロ・リッチ氏が、去る8月6日に心不全のため、亡くなられました。享年94歳でした。
早くから神童として活躍、晩年に至るまで長いキャリアを誇った偉大なるヴァイオリニストで、そのレパートリーの広さ、録音の数を多さは特筆に価するもの。
10歳代で、ベルリンに留学、ゲオルク・クーレンカンプやアドルフ・ブッシュに師事、1947年には、彼の代名詞とも言えるパガニーニ:24のカプリースの最初の録音を行っています。
パガニーニやサラサーテを十八番とした彼は、その楽器本来の美しい音色と華麗なるテクニック、伝統的な様式美を伝える演奏スタイルにおいて傑出した演奏家でした。
心よりご冥福をお祈り致します。
『巨匠ルジェーロ・リッチ~1993年、東京ライブの貴重音源』
2012年に発売された“1993年東京ライブ”をご紹介致します。
ハイフェッツ、フランチェスカッティらと並んで、アメリカの5大ヴァイオリン巨匠の一角を占めていたルジェーロ・リッチが1993年に行った東京公演のライブ録音。
難曲として知られるパガニーニ:カプリスの、世界初の全曲演奏レコードをリリースしてパガニーニのスペシャリストと賞賛される彼の、得意とするヴァイオリン協奏曲第1番と肉声を含むアンコール曲が、音響工学研究者・村岡輝雄氏によって、その独自なマイクロフォンテクニックによって臨場感豊かに収録されています。
【曲目】
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番
クライスラー:レクタティーヴォとスケルツォ
パガニーニ:カプリス第13番
【演奏】
ルジェーロ・リッチ(ヴァイオリン)
堤俊作(指揮)、東京ニューフィルハーモニック管弦楽団
【録音】
1993年12月2日、東京・渋谷オーチャードホール;ライブ録音
【制作者紹介】
村岡輝雄氏
1967年九州大学大学院を終了。日本ビクター㈱研究所・音響情報研究室長、武蔵工業大学・教授、東京大学先端科学技術研究センター・客員研究員を歴任し、現在は日本女子大学文学部・客員研究員。高校時代よりオーディオに取り組み、大学・大学院で電子通信工学を学んで日本ビクター株式会社に入社後はプロ研究者に転向。入社後10年以上に亘って録音スタジオやレコード技術部門と連携して音楽録音技術とアナログレコードの研究に取り組み、4チャンネルレコードCD-4の基本設計とレコードカッティング/トレシング歪みの研究で工学博士を取得。ディジタルオーディオ時代以降は大学時代の音声合成認識研究の延長としてディジタル信号処理研究に取り組み、非調和周波数解析GHAの研究と実用化を行なった。大学時代から吹奏楽とオーケストラに参加し、業務で修得した録音技術を駆使して200枚のCDを制作して今日に至っている。