ジャン=バティスト・レオネッティ監督作『カレ・ブラン』発売
自ら袋に入る者に 生きてる価値はない。
社畜と家畜のすばらしい新世界を映す、非情と絶望の近未来ディストピアSF
『THX1138』『時計じかけのオレンジ』の遺伝子を受け継いだ近未来・暗黒譚。
社畜とは、属する組織の中で、その組織におけるルールに忠実に、一切の疑問を持たずに行動をする人間。その組織における権力や威力のあるものに依存し、その従属度合いに比例して畜度を増す。そこには倫理、道徳、モラルは存在せず、権威の価値観がすべてであり、善と悪の判断が完全欠如する。簡単に言えばロボットと同じだが、権威側からとらえれば生物的に人間であるのでロボットより細かい指示ができる分都合が良い。社畜が生まれ、培養される背景にあるものは徹底した管理・統制と、社畜化する側の生物学的な弱さ。要するに社畜は家畜の一種であり、従属する組織内でのみエグゼクティブになれる可能性を秘めた、完全に麻痺したモルヒネ漬け人間ということである。
『カレ・ブラン』は管理の行く末を厳しい世界にとらえ、その環境における夫婦愛と、人間性の保持による大きな希望を提示する。また明確に「権威」を登場させず、「麻痺した人間=社畜、家畜」と、「気づいた者」を登場させることで、家畜化の原因は外的なものではなく個々の人間の意識にあるということを訴えている。
監督はパリ生まれの当時44才、本作で長編映画デビューを果たし、そして2011年フランス映画批評家協会賞に輝いた驚異の新鋭、ジャン=バティスト・レオネッティ。ヨーロッパ各国各都市に入念なロケハンを敢行し、直線的なコンクリート建築に象徴される現代都市、その灰色の風景を自らのイメージする暗黒感に満ちた未来社会として表現。VFXを一切使用せず、冷徹なカメラ・アイで切り取った現代と地続きのディストピア、その非情と絶望のヴィジョンは、権威にすがる真の「生物学的弱者」をあぶり出す。本国フランスのレヴューや世界各国の映画祭では、自らのヴィジョンに忠実かつ恐れを知らぬ新人監督の映像表現に、多くの熱狂的な賛辞が寄せられた。しかし過度な流血やセックス、薬物描写がないにもかかわらず、「精神的暴力の提示」を理由にR指定を受け、フランスでは数館しか上映されていない。
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<ストーリー>
弱者が生きる余地なき社会。母親が自殺したフィリップは、孤児だけが集められた教室で同じ年頃のマリーと出会い、共に思想教育を受ける。成人した2人はやがて夫婦となリ、フィリップは、「家畜」たちに理不尽な能力テストを強いる、組織のエグゼクティヴ「社畜」として何不自由ない生活を送っていた。しかし通い合っていたはずの2人の心はいつしか冷え切り、結婚生活は破綻しかけていた。そして夫婦関係の修復を願うフィリップの脳裏に、はるか昔、母親から聞かされた野生の白熊親子の残酷譚がよぎった…。
<キャスト>
サミ・ブアジラ
ジュリー・ガイエ
ジャン=ピエール・アンドレアーニ
フェイリア・ドゥリバ
ヴァレリー・ボドソン
カルロス・レアル
ドミニク・パチュレル
マジッド・イヴ
アデル・エグザルチョプロス
<スタッフ>
脚本/監督/製作:ジャン=バティスト・レオネッティ
製作:ベンジャマン・マムー
製作総指揮:カミーユ・アヴァール・ブルドン
撮影:デヴィッド・ニッセン
美術:ノエル・ヴァン・パリクス
衣装:デザインニコル・フェラーリ
編集:エリック・ジャクマン、アレックス・ロドリゲス
音響:エドガー・ヴィダル
音楽:エヴゲニ・ガルペリン