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春のラウンジ・サントラ・セレクション

ニール・ヘフティ

春から夏にかけて、ということで、ラウンジ・サントラ特集です。50年代後半から、70年代にかけて、お洒落なスパイ・アクションから恋愛映画まで、作品に華やかさを添えて、時代の娯楽の独特さで楽しませた、映画音楽におけるイージーリスニング。エンニオ・モリコーネ、ステルヴィオ・チプリアーニ、ジョン・バリー、ジョン・ウィリアムス、ラロ・シフリンはじめ、人気の作曲家たちの作品の中でも、この作風の名作は多い。そんな諸作の中から、近年リリースされた名盤はもちろん、現在入手可能な、ファンにおなじみのアルバムまで、紹介。

 

ニール・ヘフティ『Oh Dad, Poor Dad, Mamma's Hung You in the Closet and I'm Feelin' So Sad』『ボーイング・ボーイング』

ニール・ヘフティの艶笑コメディカップリング。ブラックユーモアもたっぷりの『Oh Dad Poor Dad...』の子供たちのコーラスもキュートで、他にカリプソ、ボッサと心地よく、後半、各社CAの美女たちの間をてんてこ舞いのプレイボーイを描く『Boeing Boeing』は、まさにジェットストリーム気分なイージーリスニング・ナンバーが次々でラウンジ感満開。楽しいヘフティのイージー盤。

 

エンニオ・モリコーネ『Spogliati,Protesta,Uccidi!』

許されない愛を発端に、ワイルドなヴァイオレンスと青春の暴走とも言うべきパワフルさが融合する独創的なストーリー。 英語詞の付けられた主題歌「NO ONE CAN」は、当時のフォークポップのメロディアスさを持つ名曲。このメロディを軸にサイケなモリコーネ・アレンジが次々に展開し、アクション・サスペンス系モリコーネ・ファンも興奮の流れにもなる、さすがの逸品。

 

ピノ・ドナジオ『鏡の向う側』

『金曜日の別荘で』『暗殺の森』のアルベルト・モラヴィア原作のエロティック・ドラマ。倦怠期の夫妻、ある日、妻は衝撃的な光景を鏡の向うに見てしまう。ピノ・ドナジオの音楽は『殺しのドレス』に代表される、エロを想起させる、あまりにも美しいストリングス・メロディがスローで展開。この年代を感じさせる、ソフト・フュージョン・バラードともいうべき歌ものも3曲あり。美しいサントラをお探しの方には、ぜひおすすめのロマンティックすぎる一作。

 

エルマー・バーンスタイン『サイレンサー 沈黙部隊』

ボンドヒットを受けてのスパイアクションでジェームズ・コバーン「電撃フリント」と同時に思い出される、軟派スパイもの『サイレンサー 沈黙部隊』。こちらの主演はディーン・マーティン。音楽はエルマー・バーンスタインで、スパイものとして聴くラテン・ジャズ・ビッグバンド。ハモンドオルガンの活躍もかっこいい。ラロ・シフリン好き辺りにお薦め。

 

ラロ・シフリン『ジェット・ローラー・コースター』

人気作多い70年代サントラ・スコアの中でも多彩な音楽を提供していたラロ・シフリンの異色作。テーマとなった2メロディ「マジック・カルーセル」「メリーゴーラウンド」は共に遊園地の乗り物の音楽のスタイルとフュージョンらしいきらびやかさをミックスしたユニークなトラック。そして、シフリン・ファンにはおなじみのフルートでさえもファンクするグルーヴィなトラック、その2つの流れを中心としたシフリンらしい仕事。特に「マジック・カルーセル」の不思議なワルツ調は、一度聴いたら忘れられない。

 

セルジュ・ゲンズブール『アンナ』

60年代フレンチの輝ける名編!!あまりにもキュートなアンナ・カリーナ主演のサイケでカラフルなフレンチ・ミュージカルのサントラ。音楽は、出演もしているゲンズブール。アンナが歌う超有名曲「太陽の真下で」を始め, おしゃれなポップ精神満開のゲンズブールのソングライティング、そしてクールな音楽職人ミシェル・コロンビエのかっこいいアレンジ。60年代フレンチ・サントラのもっともポップな部分がいっぱいつまった名盤。フレンチ・ファン、かわいいサントラのファンは当然必携盤です!

 

ステルヴィオ・チプリアーニ『コンコルド』

『テンタクルズ』『殺人魚フライングキラー』と並ぶ、サロン・ミュージック・サントラのマエストロ、ステルヴィオ・チプリアーニのパニック・サスペンスにおけるイージーリスニング盤。カリブ海に消えたコンコルドの謎と、カギを握るスチュワーデス。次なる事故を阻止するべく奔走する記者の活躍。そんな大型サスペンスながら、悲しくも美しくアコースティックに盛り上がるメインメロディ、『テンタクルズ』的アレンジの延長線上のモンドながらロマンティックなライト・フュージョンなサブテーマを中心に、サスペンスというよりも、繊細な海洋ロマンといった趣のサロン・サントラ名作。

 

ステルヴィオ・チプリアーニ『The Black Spider』

ステルヴィオ・チプリアーニのライブラリー音源。お馴染みのドリーミーなサロン・ミュージックが全編炸裂ですが、タイトルからも察せられる通り、陰りを帯びた度合いが、他のチプリアーニ・サウンドよりもやや深く、その分、他の作品では聴けない領域を楽しめるレア音源でしょう。

 

ファビオ・フリッツィ『Rewind』

なんとファビオ・フリッツィが、自身のスコア、ピッチオーニ、ルスティケリ「鉄道員」、そしてビートルズ、ポール・マッカートニーなどのナンバーを室内楽、コンボスタイルで新録音した企画盤。フリッツィが歌うナンバーも多数あり。これが、落ち着いた歌い方で、なかなか声もソフトでかっこいい。真面目に、大人のイージーリスニングとして寛いで聴ける好盤!

 

ニコ・フィデンコ『Sesso nero』

エマニュエル・エラ・シリーズで知られるジョー・ダマト監督の1980年作品ということで、チプリアーニが音楽の『Orgasmo Nero』と同年の、こちらもエキゾチック・エロの作品で、音楽はネラ・シリーズのニコ・フィデンコ。メランコリック・ラウンジなメインテーマから始まり、サイケ、エレクトロ、よりスウィートなイメージ、と様々に危険な香りのするサウンドに変奏させていく。

 

ジョン・ウィリアムス『おれの女に手を出すな』、ジョージ・ダニング『水曜ならいいわ』

ヘンリー・マンシーニ楽団のメンバーでもあった当時のウィリアムスらしい、まさしくマンシーニ・サウンド を思わせる、ロマンティックで軽快でおしゃれなソフト・ジャズを基調としたイージーリスニング・サウンド全開の『おれの女に手を出すな』。そして『水曜ならいいわ』(音楽 ジョージ・ダニング)こちらも、おしゃれで華やかなジャズものが人気のジョージ・ダーニング(『スージー・ウォンの世界』『媚薬』など。『僕のベッドは花ざかり』CD化希望!)による、楽しくてキュートでテンポのよいイージーリスニング/ラウンジ・ジャズ。ということで、DJ諸氏にもおすすめ。。

 

ステルヴィオ・チプリアーニ『Paradiso Blu』

言わばジョー・ダマト版『青い珊瑚礁』。主演は、巨匠イングマール・ベルイマンの娘、アンナ・ベルイマン。物語は、孤島での夢のようなエロティックな日々。チプリアーニの音楽は、だが、海原の大らかさの表現にベクトルは向けずに、いつもの独特のメロディのうねりを持った、チプリアーニ・サロン・イージー・サウンド全開。本作での特徴は、中でも、愁いをやや帯びたメロディの存在で、この憂いこそがエロを表現しているな、とわかる。メロディ展開やアレンジには、エロ的なもったいぶり方はせずに、さわやかなものである。エッダのスキャット登場曲は否応なく、エロ度は増すのだけれども。

 

フランシス・レイ『サファリの英雄』

アメリカの人類学者の親子と、東アフリカの族長親子の友情物語。後に『リップスティック』『ワン・オン・ワン』といったサントラも人気の作品を撮る、60年代はドラマ監督の職人だったラモント・ジョンソン監督が、『ラスト・アメリカン・ヒーロー』の次に手がけた劇場用作品。音楽はフランシス・レイで、アレンジはクリスチャン・ゴベール。アフリカが舞台だが、アフリカらしさは、ほぼ完全になく、その後の『続エマニエル夫人』『ビリティス』以降で知られる、シンセを効果的に使って、ストリングスとのコンビネーションで、独特のフランシス・レイ・メロディらしいうねりのある旋律を幻想的に聴かせる、モダンなイージーリスニングです。もう、本当にうっとりできます。本当は、そんな題材の映画じゃないんですが、音だけ聴けば、もう、恋人たちの少しエロティックなファンタジーの世界です。

 

クロード・ボラン『Les Passagers』

ディーン・クーンツの原作をフランス、イタリアに舞台を変えての映画化。母と息子、そして再婚相手の男が巻き込まれる『激突!』プラス・アルファのサスペンス。クロード・ボランのスコアは、まろやかに美しく、心地よい。リジェクトとなったドマルサン版が後半に収録で、こちらはより研ぎ澄まされた美しさ。共にカジュアルなポップ・イージー的な側面をもつ秀曲多い、ファン納得作。

 

クシシュトフ・コメダ『水の中のナイフ』他

週末をヨットで楽しむ夫妻は、行きずりの青年も同乗させる。ナイフを常に離さない青年。青年と妻の間に親しさを感じた夫は・・・鬼才、ロマン・ポランスキーが母国ポーランドで作った唯一の作品。『早春』のイエジー・スコリモフスキ、そしてヤクブ・ゴールドベルクとの共同脚本。ポーランドのジャズメンにして、アンジェイ・ワイダ『夜の終りに』の音楽なども担当していたピアニスト、クシシュトフ・コメダが気だるく美しいメロディのジャズで孤高の空間を彩った。こちらのCDで収録されている音源は、過去にポーランドのPOWER BROSレーベルから出た「CRAZY GIRL」収録の録音と同じもの。鮮やかなピアノと、サックスの心地良い掛け合いでシンプルにドライヴ感たっぷりに楽しませる。同映画のナンバーは4曲、そして、その貴重な『夜の終りに』(1960/監督 アンジェイ・ワイダ/主演 タデウシュ・ウォムニツキ、クリスティナ・スティブウコフスカ)からも3曲収録。こちらは幸福な結末に向う恋愛劇への、愛らしくも楽しいジャズ。他にも、コメダの演奏を収録し、全18曲、75分強収録。

 

タグ : 映画 映画音楽

掲載: 2016年04月12日 16:23

更新: 2016年04月21日 19:49