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人気作曲家たちのサウンドトラック・スコア・セレクション

ファミリープロット

70年代から2000年代までの間で、現在入手可能なタイトルの中で、正統派にドラマチックなものから、異色のアレンジのものまで、映画音楽ファンに人気のスコア・サントラ盤を紹介。ジョン・ウィリアムス、クレイグ・セイファン、エンニオ・モリコーネ、ジョン・デブニー、ビル・コンティ、ジェームス・ホーナーなどの人気作曲家の作品から。

 

ジョン・ウィリアムス『ファミリー・プロット』

個性的演技派勢揃いで見せた、スリラーの巨匠ヒッチコックの遺作はユーモラスなミステリー。インチキ霊媒師が、プロの誘拐屋を追わねばならない羽目になり・・・さて、この遺作の音楽を依頼されたのが、最初にして最後となるジョン・ウィリアムズ。『スターウォーズ』以前の、ユーモラスさ、ポップさ、詩的なムードなどを兼ね備えた、ファンにも人気の頃の、あのタッチがふんだんに聴ける頃の作品。今まで、テーマとして有名なメロディがしっかり聴けるのは10曲目「THE WHITE MUSTANG」。ミステリアスさと親しみやすい美しさ、そして胡散臭い神々しさ(それは、後に本物的神々しさとして『未知との遭遇』『ET』に発展する)をふりまくエンドタイトル、そしてソフトロック・インストゥルメンタル的にすばらしいテーマ(21曲目)は、『大地震』の愛のテーマ、『タワーリング・インフェルノ』の"スーザンへの愛"の美しさと同様の心地よさを発する。あの頃のジョン・ウィリアムス・サウンドのファン必聴。

 

クレイグ・セイファン『バイオ・インフェルノ』

バイオ工場での事故により、細菌に汚染された研究所に閉じ込められたスタッフたちの姿をメインに、「バイオ版チャイナ・シンドローム」とも言うべきムードで展開するシリアスなサイエンス・パニック・ドラマ。監督・脚本は『続・激突!カージャック』のハル・バーウッドとマシュー・ロビンス。音楽は『スター・ファイター』『レモ 第1の挑戦』のクレイグ・セイファン。サウンドは、題材ならではの硬質なシンセ・スコアだが、悲しくメロディアスなメインテーマがユニークな絶望感をにじませて、このスコアの人気のポイント。全体的には無機質的な、いわば感傷的な『アンドロメダ』的電子スコアながら、インパクトが残る迫力のサウンド。

 

エンニオ・モリコーネ『恐怖に襲われた街』

パリの凄腕警部が、連続殺人犯を追う。クライマックスには大掛かりなアクション・シーンも。ベルモンドが製作にも加わり、アクション・スターとしての魅力を炸裂させた娯楽作。監督は『シシリアン』『エスピオナージ』など、華やかなフィルムノワールを作らせて名匠のアンリ・ヴェルヌイユ。音楽は『シシリアン』『華麗なる大泥棒』『エスピオナージ』とヴェルヌイユとタッグで快作を続けていたエンニオ・モリコーネ。モリコーネのサスペンスものの際のお得意の低くたたみかけるリズムに、ここでは口笛がメインメロディを奏で、ベルモンドの一匹狼ヒーロー的な頼もしさを感じさせ、幕を開ける。やすらぎのラウンジ・ナンバーは、雰囲気を重視して、ソフト・フュージョン的心地よさで、あくまでソース・ミュージックに徹し、メロディを歌い上げない。パリらしいアコーデオンのワルツ、そしてエッダのスキャットが大活躍するエロティックでメロディにも凝ったラウンジ・ナンバーの大曲など。ハードなサスペンス・アクションを支えるビートを中心に据え、そこからジャジーにさえ変奏したりする多様なハード曲と、時折の各ラウンジ・ナンバーでの安らぎのバランスが大人の娯楽映画感を満足させる完璧な職人技の一作。

 

エンニオ・モリコーネ『オルカ』

誤って、身ごもったメスシャチを殺してしまった漁師。復讐に燃えたオスシャチが、漁師の住む港町を襲撃し、漁師は北の海での一対一の勝負を強いられる…・ 『キングコング』をヒットさせた大プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスが次に放ったパニック映画・海洋編。監督は『2300年未来への旅』のマイケル・アンダーソン、主役の漁師を演じるのは『カサンドラ・クロス』のリチャード・ハリス。音楽はエンニオ・モリコーネ。悲しさと海の大らかさが融合した美しくスケールの大きなメインテーマは名曲。コミカルなナンバーや、ソース・ミュージックとしてのラウンジ・サウンドなど、カラフルに楽しめる部分もあり。モリコーネ・ファンのみならず、スペクタクル・サントラ・ファンにも人気の名盤。

 

ジョン・デブニー『パッション』

キリスト最後の12時間を描いた、この問題作の音楽を最終的に任されたのは、なんとジョン・デブニー! ここでは、神聖な女性ヴォーカル、コーラス、そしてオーケストラを繊細に駆使し、題材ならではの深く染み渡るドラマ・スコアを展開。デブニーの作品史の新しい1ページとなったのは明らかであろう、荘厳ながら聴きやすい!スコア。

 

ビル・コンティ『勝利への脱出』

シルベスター・スタローンとマイケル・ケインと、なんとペレ!が共演、そしてジョン・コューストンが監督したサッカー+戦争脱走映画の異色の傑作のサントラは、当時の超売れっ子、ビル・コンティが担当! 60年代の往年の戦争映画サントラを思わせるブラスバンド・タイプの編成で、コンティらしい勇ましくキャッチーでファンを虜にしたテーマ・メロディが炸裂! ほかにも、戦争映画ファンは、聴いててニヤリ(時に爆笑)間違いなしの、往年の戦争映画スコア傑作へのオマージュがふんだんに登場。エンタテイナー精神炸裂。

 

ジェームス・ホーナー『スター・トレック2 カーンの逆襲』

名ライターとしても知られるニコラス・メイヤーが監督し名作の誉れ高い、映画化スタトレの第2作。 カーク提督への復讐のため、テスト航海中のエンタープライズに立ちはだかるカーン。ホーナーの、人気の80年代の仕事のひとつのこの作品、オリジナル・テーマからのインスパイア的でありながらオリジナルでキャッチーなメインメロディを創造しつつ、緩やかに勇ましいオーケストラ・サウンドを聴かせる。若き頃の壮大なオーケストラのホーナーは、翌年に傑作『ブレインストーム』と『銀河伝説クルール』を担当する。燃えるSFオーケストラ・サウンド・ファンは外せない1枚!

 

エンニオ・モリコーネ『彼女と彼』

名作「ある夕食のテーブル」を書いた同じ年にモリコーネが書いた、もうひとつの美しい名盤。独特のメロディ進行、キャッチ-すぎず、奇抜なリズム・アレンジがメロディをひっぱる不思議なナンバーの数々。甘美なドライブ感が心地よい人気曲は「Amare Assolutamente」。刺激的なサウンドをお探しの方におすすめ。

 

アラン・シルヴェストリ『マック』

宇宙人の迷い子と地球の車椅子生活の少年の友情物語。監督は『アドベンチャー・ファミリー』のスチュアート・ラフィル。音楽は、ハートウォームなSFはお得意のアラン・シルヴぇストリ。シルヴェストリにとって『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の3年後の担当作となる本作、優しく明るく美しいメロディと、かわいらしさものこしつつスピーディな展開のオーケストラは、さながら優しいバック・トゥ・ザ・フューチャー・スコア。ラストに流れる主題歌は、アダルトなイメージのボビー・コールドウェルという意外な人選だが、コールドウェルらしいカジュアルな美しさとシルヴェストリのドラマチックさが融合した、聴き応えのあるナンバーになっている。

 

アラン・シルヴェストリ『ボディガード』スコア盤

自らを演じるかのような、華やかなスター・シンガーのホイットニー・ヒューストンと、こちらも、自身の役柄としてのイメージのど真ん中ともいえるボディガードでスーツ姿をキメるケヴィン・コスナー。狙われるスターと、彼女を身を挺して守るボディガードの、愛に限りなく近い関係。音楽面は、もちろんホイットニーが歌うナンバー他になるわけだが、こちらは、その陰を支えた、じっくりとドラマを盛り立てたスコア。担当は、このドラマにはちょっと異色なアラン・シルヴェストリ。結果、シルヴェストリ史上最もドリーミーでなかなか聴けない彼の優しい面を堪能することができる。サスペンス・シーンの迫力ある骨太オーケストラも聴けるがこのスコアのメインは、何といっても、まるで美しい時のゴールドスミスとガブリエル・ヤーレの世界の中庸を行く、明確に形作らないが、切なさとスウィートさが混じるメロディ。スコアのメインテーマは、歴々のゴールドスミス映画における愛のテーマを思い出させ、全体を覆う、シンセの音色も上品にあわせた幻想的な世界はヤーレのロマンティックさを想起させる。なかなか聴けない、ラブストーリー的シルヴェストリの異色作。

 

アレクサンドル・デスプラ『リアリティー』

『剥製師』『ゴモラ』など、独特の奇妙な味わいを見せるイタリア新世代の名匠、マッテオ・ガローネ監督の4年ぶりの長編。魚売りの気のいい男は、テレビのリアリティー番組のオーディションを受け、その頃から、彼は夢と現実が区別がつかなくなる・・・現代版フェリーニ映画とでもいいたい作品に、ガローネは、初めてデスプラ音楽と組む。まるでハリウッド・ファンタジーにおけるジョン・ウィリアムスとニーノ・ロータの世界をミックスしたかのような、明るく流麗だが、そこに危険な罠も隠されている、そんな不思議に輝くオーケストラ・スコアを、独特の音響で聞かせる。デスプラ的には『ベンジャミン・バトン』的世界の延長線上といったところか。

 

タグ : 映画 映画音楽

掲載: 2016年04月13日 15:54

更新: 2016年04月26日 12:02