東欧エストニアのジョエル・レンメル・トリオの新作『サム・シングス・ネヴァー・チェンジ』
澤野工房が得意とする、東欧はエストニアのトリオ。写真から察するに若手でありながら、このメンバーで固定して7年も活動しているそう。三者一体となってプレイされる彼らのジャズは一聴シンプルでいて、実は長い時間の中で作り上げられてきた、このトリオならではのものです。
アルバムはさりげない4ビート曲でスタート。どこまでがテーマでどこからが即興なのか… …よくわからないけど、三人のグルーヴが伝わる心掴まれるスリリングなオープニングです。以下、僕の思う聴きどころを少しだけ紹介します。
本作のタイトル曲でもある(3)はベースに導かれ静かにメロディが現れる美曲。これもひっそりとした展開で、徐々に音楽を拡げていくのが彼らのうまさ。(6)は優しく光のさすようなピアノの中に、しっかりトリオでの力強さも垣間見せる。大きな曲想を持った、本作のクライマックス曲でしょう。(7)はゴスペルのジョエル的解釈か? ルーツを見る思いがするソウルフルなピアノソロです。ビル・エヴァンスの名曲(8)は、前曲同様に彼らのルーツをうかがわせる選曲。じっと耳を傾けていると、最後にもうひとつの原点が聴こえてきます。お聴き逃しなく。
全8曲で51分ちょっと… …21世紀のトリオらしい、さまざまなスタイルのプレイを聴かせながら、全てにジョエル・レンメル・トリオらしい澄みやかな空気感をにじませる。それはさりげなく出されるきらっとしたメロディのよさや、演奏を大きく描ききる力強さだと思うのです。曲の隅々に散りばめられたトリオの魅力をじっくりお楽しみください。
Text by 神尾孝弥
掲載: 2016年07月05日 10:46