エディト・パイネマンがセル、カイルベルト、ヴァントと共演したヴァイオリン協奏曲集!
1933年からのナチス政権時代のユダヤ人政策のため、クライスラー、フーベルマン、ゴールドベルク、及びドイツ人ながら政策に抗議したブッシュは相次いでドイツを去りました。そして国際的な名手としてただ一人ドイツに留まったクーレンカンプも早世し、戦後のドイツ・ヴァイオリン界は極端な人材払底に悩まされることとなります。ムターやツィマーマンが台頭するまで、ただ一人の希望の星として活躍したのがエディト・パイネマン(1937~)でした。その名声に較べ商業録音の少ない彼女ですが、その渇きを癒すヴァイオリン協奏曲集の2枚組が登場します!何れもケルン放送による正規録音で、音の状態が良い上、共演の指揮者がセル、カイルベルト、ヴァントと最高の顔ぶれ。とくにセルは彼女の才能を高く評価し、クリーヴランド管弦楽団、ニューヨーク・フィル、コンセルトヘボウ管弦楽団、ベルリン・フィルで共演したほか、シュヴァルツコップとのR.シュトラウス:歌曲集(品番:WPCS-23101)の録音でも、わざわざ彼女を呼んでソロを弾かせました。パイネマンがヴァイオリンを購入した際も、チューリヒのコンサートホールを借りて、セルが客席で5本のヴァイオリンの彼女の試し弾きを聴き、一本のグァルネリを選んだと伝えられています。セル指揮によるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲録音は、正規録音では戦前のフーベルマンとのものしかなく(品番:9029589516)
、この戦後の録音はたいへん貴重なものとなっています。ヴァイオリン・ファン、及びそれぞれの指揮者のファンの方は必聴のディスクと言えるでしょう。
(タワーレコード)
パイネマンとセル
美貌の天才ヴァイオリニストとして高名なパイネマンの未発表ライヴ録音が一気にリリース。その高名に比して録音は極めて少なく、DGへのCD1枚分が全てでしょうか。マニアは、ハウシルトとのレーガーのヴァイオリン協奏曲の録音を知ることでしょう(AMATI)。
1937年にドイツ・マインツに生れたパイネマンは、4歳で同地のオケのコンサートマスターであった父からヴァイオリンを学びます。さらにハインツ・スタンシュケ、マックス・ロスタルに師事。19歳でドイツ放送局(ARD)主催のコンクールで第1位となり,国際的な活動を開始します。アメリカでは、特に大指揮者ジョージ・セルがパイネマンを高く評価したために、1965年のクリーヴランド管のニューヨーク・カーネギーホール公演にもソリストとして起用されます。以降、共演した指揮者にはミュンシュ、ショルティ、カラヤン、カイルベルト、クリップス、バルビローリ、クーベリック、テンシュテット、マルティノン等が挙げられます。1972年にはミュンヘンフィル初来日公演にソリストとして参加。1970年代以降は教育活動に重きを置いたために、演奏家として録音に恵まれなかったのかも知れません。それ故に協奏曲の名曲、名演を集めた当企画は長年の渇きを癒すリリースと申せましょう。芸風は典雅にして高潔。無駄な効果を狙った演奏とは無縁です。
ベートーヴェンの伴奏は、パイネマンが「あらゆるジャンルの音楽に精通する真の天才」と称賛する巨匠セル。上記のカーネギーホール公演に先立つ意欲溢れる超名演。正に崇高、高貴な音楽を両者が展開します。プロコフィエフの第1番は、何とヴァント共演。現代音楽にも鋭く切り込むヴァントならではの見事な伴奏との会話が聞きもの。カイルベルトとも縁が深かったようで、「プフィッツナーの協奏曲を勉強しろ」との指示に従い、パイネマンは、ベルリンフィル・デビューをこの曲で飾りました。当盤では、想像もつかないカイルベルトのシベリウスが聴けます。豪快で堂々とした見事な名演。メンデルスゾーンもドイツのリリシズムの極みといった感のある、感傷が懐かしくも感動的です。
(東武ランドシステム)
【収録曲目】
(1)ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
(2)プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番
(3)シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
(4)メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
【演奏】
エディト・パイネマン(ヴァイオリン)
(1)ジョージ・セル(指揮)ケルン放送交響楽団
録音:1964年6月11日ビスマルクザール、モノラル
(2)ギュンター・ヴァント(指揮)ケルン放送交響楽団
録音:1975年10月10日ビスマルクザール、ステレオ
(3)ヨーゼフ・カイルベルト(指揮)ケルン放送交響楽団
録音:1967年10月27日ビスマルクザール、ステレオ
(4)ヨーゼフ・カイルベルト(指揮)ケルン放送交響楽団
録音:1960年5月6日ビスマルクザール、モノラル
※日本語オビ・解説付/音源提供:WDRケルン放送
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2017年03月15日 18:00