クレーメル、フォルケルト、堀米ゆず子~エリザベート王妃国際コンクール・ヴァイオリン部門の記録!
エリザベート王妃国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門の記録!
エリザベート王妃国際音楽コンクールは前身のイザイ国際コンクールの初開催(1937年)から数えて80年もの歴史をもつ、伝統と格式のあるコンクールです。後に世界的名手となる才能ある演奏家の登竜門として名高く、ヴァイオリン部門の優勝者だけを見ても、第1回のD.オイストラフに始まり、コーガン、ラレード、フリード、堀米ゆず子、戸田弥生、ズナイダー、スクリデ、ハチャトリャン、レイ・チェンと各年代を代表するヴァイオリニストたちが並びます。また入賞に留まった奏者にもオドノポゾフ、オロフ、J.シトコヴェッキー、ドゥーカン、シルバースタイン、スタインハート、ミラノヴァ、コルサコフ、藤原浜雄、清水高師、諏訪内晶子、ケレメンなど、後に世界的に活躍する名手たちの名前を確認することができます。入賞に留まった(第3位)ことが有名なのは1967年のクレーメルでしょう。ファイナルではめったに選ばれないエルガーのヴァイオリン協奏曲を弾き、演奏も意欲的なものでしたが、審査員全員の賛同を得るには至らなかったようです。今回CD化される3人の筆頭は、そのクレーメルです。また地元ベルギーの期待を一身にになったフォルケルト、そして日本人初優勝が大きな話題となった堀米ゆず子の演奏を聴くことができます。「栴檀は双葉より芳し」の格言を思い起させるような、3人の若き日の、コンクールの独特な雰囲気の中での差し迫った、才気あふれる演奏をお楽しみください。
(タワーレコード)
伝説の年、1967年クレーメルの貴重な記録
MU018(CD)
ギドン・クレーメル/1967年エリザベート王妃国際音楽コンクールヴァイオリン部門第3位入賞
・シューマン:幻想曲 ハ長調 op.131
1967年5月25日(ファイナル・ライヴ)/マリナ・ボンダレンコ(ピアノ)
・ショーソン:詩曲 op.25
1967年6月5日(受賞者コンサート・ライヴ)/RTBグランド交響楽団、ダニエル・シュテルンフェルド(指揮)
・エルガー:ヴァイオリン協奏曲 ロ短調 op.61
1967年5月25日(ファイナル・ライヴ)/ベルギー国立管弦楽団、ルネ・デュフォッセ(指揮)
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
1947年生まれのクレーメル、20歳の時のコンクールの貴重なライヴ音源の登場。前年にコンクール出場が決まったときからファイナルで演奏しようと決めたほど、思い入れのあったエルガーのヴァイオリン協奏曲は「当時20歳だった自分にとって特別に重要だったあらゆる感情と失望に根ざした私自身のロマン的なスピリットをすべて注ぎ込んだ」と語る完璧にして迫真の出来栄え。にも拘わらず第3位という結果に終わったことは大きな「失望」であり、「私の一番表現したいことが理解されなかった、受け入れられなかった、と感じた」と述べています(ライナーノートより/邦訳なし)。オイストラフ、メニューイン、フランチェスカッティ、シゲティ、グリュミオー、ギンゴールドといった錚々たる巨匠達が審査員に名を連ねた1967年の優勝者はフィリップ・ヒルシュホーンでした。この演奏で第3位とは、とあらためてこの年のレヴェルの高さに思いを馳せる、色々な意味で貴重な1枚です。コンクールの結果が出た後に行われた受賞者コンサートでのショーソンの「詩曲」は神がかったような演奏です。
ベルギー出身の女性ヴァイオリン奏者フォルケルトの貴重な記録
MU019(CD)
エディト・フォルケルト/1971年エリザベート王妃国際音楽コンクールヴァイオリン部門第5位
・ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 op.77
1971年5月22日(ファイナル・ライヴ)/RTBグランド交響楽団、ルネ・デュフォッセ(指揮)
・バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112
1971年6月2日(受賞者コンサート・ライヴ)/ベルギー国立管弦楽団、ミヒャエル・ギーレン(指揮)
エディト・フォルケルト(ヴァイオリン)
ベルギーの女性ヴァイオリン奏者、エディト・フォルケルト(1949-1992)21歳の時のコンクールの記録。この年の第1位はミリアム・フリードで、20回目となるコンクール史上初の女性優勝者でした。第3位には藤原浜雄、さらに第12位にザハール・ブロンが名を連ねています。フォルケルトは、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番を、初演したオイストラフが審査員にいる前で、しかもオーケストラとの時間も十分ではない2度のみのリハーサルの後に弾くという難しい状況の中素晴らしい演奏をし、見事第5位をかちとりました。受賞者コンサートでは、この数か月前に録音をしたバルトークの作品をギーレンの明晰かつ詩的な指揮で見事に演奏しています。フォルケルトは1980年半ばから病に苦しみ、1992年7月2日に亡くなりました。素晴らしいベルギー出身の奏者のコンクールの貴重な記録の登場となりました。
世界が堀米を認めた瞬間
MU020(CD)
堀米ゆず子/1980年エリザベート王妃国際音楽コンクールヴァイオリン部門第1位
・イザイ:ソナタ op.27-2
1980年5月15日(セミ・ファイナル・ライヴ、ブリュッセル国立音楽院)
・W.A.モーツァルト:ロンド ハ長調 KV373
1980年5月15日(セミ・ファイナル・ライヴ、ブリュッセル国立音楽院))/ジャン=クロード・ファンデン・アインデン(ピアノ)
・ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」ト長調 op.78
1980年5月30日(ファイナル・ライヴ、ブリュッセル・ファインアーツ・センター)/ジャン=クロード・ファンデン・アインデン(ピアノ)
・シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
1980年5月30日(ファイナル・ライヴ、ブリュッセル・ファインアーツ・センター)/ジョルジュ・オクトルス(指揮)ベルギー国立管弦楽団
堀米ゆず子(ヴァイオリン)
堀米ゆず子が優勝したのは1980年。ファイナルの結果発表で最初に名前を呼ばれた堀米は、自分が優勝したとは最初はわからなかったけれども、熱狂した聴衆や審査員の笑顔で、自分が優勝したと次第に理解したといいます。この上なく明晰で決然とした、集中しきったイザイは見事。ブラームスでのやわらかさは、コンクールということを忘れて聴衆が聞き入っていることが感じられるもの。シベリウスの協奏曲でも、冒頭からピンと張りつめた空気が心地よい演奏。世界が堀米を認めた瞬間のすべてがここにとらえられています。
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2017年06月14日 00:00