シンガー・ソングライター、ジョセフ・アーサーとR.E.M.のピーター・バックによるユニット=アーサー・バック(ARTHUR BUCK)始動
「とても自然に生まれた作品だよ、ある種の魔法のようだった。言ってみれば僕らは全てから切り離された地でこの作品を作り上げていたからね。」 ─ ピーター・バック
「突然、僕に最高の音楽的パートナーであり友人でもある人が現われ、音楽への足かせが取り除かれたような感じだったんだ。何を意味してるのかわかってもらえると思うよ」 ─ ジョセフ・アーサー
偉大なるアートを創造する刺激となるものは、正しいタイミングで正しい場所にいること、というシンプルなことなのかもしれない。非常に高い評価を受ける知る人ぞ知る的存在であったシンガー・ソングライター、ジョセフ・アーサーと、アメリカン・オルタナティヴ・ロック・シーンを代表する重要なロック・アクト、R.E.M.のギタリスト、ピーター・バックという二人の才能のコラボレーションとなるこのアーサー・バックにとって、その場所とはメキシコであり、その時とは2017年の秋だったと言えるだろう。
東にシエラ・ラ・ラグナ山脈を望み、西には青く輝く大西洋が広がる小さな街、Todos Santos。R.E.M.としての活動を終了させた直後となる2012年から、ピーター・バックはこの土地で「Todos Santos Music Festival」という音楽フェスティヴァルを毎年開催している。このフェスティヴァルに出演した数多くのアーティストの中の一人がジョセフ・アーサーだったのだが、ある年にパフォーマンスをした後ドブロ・ギターを失くしてしまう。2017年、そのギターを再び入手すべくメキシコの地を訪れた時、メキシコに滞在していたピーター・バックと偶然出会った…、この偶然が、アーサー・バックというユニットの始まりとなったのだ。
2000年代初めにはR.E.M.のショウのオープニング・アクトとして同じステージに立ったこともあるジョセフ・アーサーであり、ピーター・バック自身も何度かジョセフのバックを務めたこともあった二人だが、この偶然の出会いで意気投合し、その後3日間で8曲を共に書き上げた二人は、4日目に地元の人を集めセッションを行なったという。
「最初は、’僕が手掛けてる曲に、ピーターがアコースティック・ギターで参加してくれる!みたいな考えだった。だからまず僕が彼に曲を披露したんだけど、そしたら彼は「うん、いい感じだね、じゃあこんなのはどう?」とコードやいろんなものを弾き始めたんだ。だから僕はギターを置いて、彼がアレンジしたその音に合わせて歌い始めることにした。まさに魔法の瞬間だったね。すごくスムーズに、素晴らしい曲が生まれていったんだ」 ─ ジョセフ・アーサー
その後も制作作業を続けていった二人は、ベーシック・トラックをオレゴン州ポートランドにあるType Foundry Studiosでレコーディング、そしてブルックリンにあるジョセフのパーソナル・スタジオでアルバムのプロデュースを行なっていく。ジョセフ本人がプロデュースを担当し、U2やパール・ジャム、ブラック・キーズなどを手掛ける名手チャド・ブレイクをミックスに迎えて制作されたのが、この11曲からなるアルバム『ARTHUR BUCK』だ。
きらびやかな彩を感じさせてくれる11曲には、自然発生的に生まれたこのプロジェクトの本質を感じさせてくれる、インスピレーションに満ちた二人の才能が織りなす極上のロック・サウンドが封じ込まれている。豊かなメロディ・ラインを情感豊かに歌うジョセフ・アーサーのヴォーカル、そしてアコースティックの音色が空間を支配しながら鳴り響くピーター・バックのギター、そのサウンドが、暖かいエレクトロニック・ビートと共に展開する見事な世界観を持つ作品が、今ここに届けられたのだ。
「全部新曲なんだけど、とても自然に生まれたんだ。こうやって作り上げていくやり方の素晴らしいところは、何の制限も受けず、何かの目的に向かって続ける作業でもなく、とにかく全てが自由な環境にいられるっていう事さ。このアルバムには、何かを成し遂げたすがすがしさみたいな感覚があるよ」 ─ ピーター・バック