【入荷済】樋口紀美子&脇岡洋平によるドビュッシー: 2台ピアノのための3つのオーケストラ作品
樋口紀美子のCD第4弾は、ドビュッシーの没後100年を記念した録音で、脇岡洋平との共演で管弦楽作品を2台ピアノのために編曲された3作を収録しています。
(ユニバーサルミュージック)
『ドビュッシー没後100年記念 2台ピアノのための3つのオーケストラ作品』
【曲目】
ドビュッシー:
牧神の午後への前奏曲(ドビュッシー編曲)
夜想曲(ラヴェル編曲)
交響詩「海」(アンドレ・カプレ編曲)
【演奏】
樋口紀美子(ピアノ)
脇岡洋平(ピアノ)
【録音】
2018年5月24日、25日
所沢市民文化センター ミューズ アークホール
スタインウェイD-274 2台使用
<樋口隆一 ライナーノーツより>
クロード・アシル・ドビュッシー(1862~1918)の作品表を詳しく見てみると、2台のピアノのための編曲や作品の存在が興味を惹く。1889年にはワーグナーの《さまよえるオランダ人》序曲、翌1890年にはサン=サーンスの交響曲第2番イ短調の編曲が続き、1895年には自作の《牧神の午後への前奏曲》もみずから2台のピアノのために編曲している。
当時のフランスでは、音楽生活の中心をオペラが占めていたため、管弦楽曲の本格的上演はめずらしく、音楽家が出入りするサロンでは、2台のピアノによる編曲で楽しまれることが多かった。ドビュッシーも1889年には「国民音楽協会」に入会し、ワーグナーの《ワルキューレ》の2台ピアノによる上演には、ピアニストとして参加しているほどだ。これらの編曲はまた、若い作曲家に多少の収入をもたらすという意味でも重要であった。第1次世界大戦中の1915年に作曲された2台のピアノのための《白と黒で》も、多くの音楽家が出征したためにオーケストラが使えない状況を、「白鍵と黒鍵で」と皮肉ったものとも考えられる。
ドビュッシーの管弦楽曲がオーケストラのレパートリーとして定着した現代にあって、これらの2台のピアノのための編曲を聴く意義はどこにあるだろうか。それはあふれんばかりに多彩な管弦楽法の色彩を取り除いても、そこに厳然として現れるドビュッシーならでは音楽の構造の純粋な美しさである。微妙な響きと揺れ動くリズムの変幻の背後に、彼ならではの明晰な形式感が隠れている。わたしたちはいま、彼の作曲家としての驚くべき考察と手腕をよりはっきりと目の当たりにする。もちろんそれが可能となるのは、ふたりのピアニストの類いまれな音楽的能力に依るものであることは言うまでもない。
<樋口紀美子 プロフィール>
6歳より母の手ほどきでビアノを始める。藤田晴子、田辺緑、岡部守弘、永井進、神西敦子、K.ヘルヴィッヒ、H.E.リーベンザーム、G.アゴスティ、H.C.ステアァンスカ、W.ブランケンハイム、ディノラ・ヴァルジの各氏に師事。武蔵野音楽大学卒業後、1974年渡独。エッセン国立音楽大学、ベルリン芸術大学、ザールブリュッケン国立音楽大学演奏家コース卒業。
1977年イタリアのフィナーレ・リグレ国際ビアノ・コンクールにて3位入賞。以来ドイツ、スイス、イタリア各地で数多くのリサイタルを行う。1980年スイスのルガノ国際ビアノ・コンクール「スケルツォ特別賞」。1981年以来一時帰国しては東京にて15回のピアノ・リサイタルを開催。『音楽芸術』『音楽の友』『ムジカノーヴァ』『ショパン』各誌で高い評価を得る。1985年東京交響楽団とラフマニノフの協奏曲第2番を共演。1993年10月にはマーラ-《大地の歌》ピアノ版を邦人ステージ初演し、『音楽の友』のコンサート・ベストテンにノミネートされるなど絶賢を博す。1988年よりベルリンのフィルハーモニー、カンマームジークザールを中心に9回のリサイタル(ハンス・アードラー主催)で成功を収め、ベルリン・ピアノ界の常連としての地位を確立した。1993年の演奏会はベルリン最大有力紙「デア・ターゲス・シュピーゲル」の批評欄で、「微笑む理性」と絶賛された。1994年9月、イタリアのシチリア島におけるイブラ・グランプリ国際ビアノ・コンクールでブロフェッショナル・ピアニスト部門入賞。1997年、リスト・プログラムでCDデビュー、好評を博す。
ビアノ教育者としても、ベルリンの門下生からドイツ青少年コンクール、ベルリンとハンブルクのスタインウェイ・ピアノ・コンクール、ケーテンのバッハ・ピアノコンクールなどで常に上位入賞者やオーケストラ共演者を出すなど、異例の成功を収め、高い評価と注目を集めた。ベルリン教会音楽大学ビアノ科講師、ベルリン市立音楽学校ビアノ科および室内楽科講師などを歴任。ピティナ・ビアノコンペティション、ベルリン・スタインウェイ・ビアノ・コンクール審査員。 2005年よリドイツ音楽芸術家連盟ベルリン正会員。2007年7月、33年のドイツ滞在を終えて帰国。2008年、浜離宮朝日ホールでの帰国記念リサイタル以来、ヨーロッパでの長い演奏経験を生かして日本各地で演奏活動を展開するほか、コンクールの審査、講演、公開レッスンなど幅広く活躍している。
帰国後のCDとしては、2012年に「ドビュッシー 12のエチュード」(MF25701)、2014年には「ノアンの思い出、ショパン:ソナタ第3番ほか」(MF25702)をN&Fよりリリース、特に後者は『レコード芸術』準特選として絶賛を博した。
<脇岡洋平 プロフィール>
1980年東京生まれ。5歳よりピアノを始め、東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て東京藝術大学音楽学部を卒業。2010年ベルリン”ハンス・アイスラー”音楽大学大学院コンツェルトイグザーメン課程の卒業試験において最高点で卒業し、国家演奏家資格を取得。その後1年間ブダペストのリスト音楽院にて学ぶ。
在学時よりかずさアカデミアピアノコンクール、日本音楽コンクールなどの国内のコンクールをはじめ、ドイツ、イタリア、ポルトガルなどで数々の国際コンクールにて入賞を重ねる。2005年度より明治安田文化財団奨学生に2年間、2007年度文化庁海外研修生、また2008年度よりローム音楽財団研修生となる。
これまでに藝大フィルハーモニア、ニューフィルハーモニー千葉、東京シティフィルハーモニック交響楽団、ブランデンブルグ交響楽団、ベルリンコンツェルトハウスオーケストラ等と共演。特にブランデンブルク交響楽団と共演したシューマンのピアノ協奏曲はドイツ国内の音楽雑誌、新聞等で高い評価を得た。また2010年、2012年に東京文化会館小ホールにて開催したリサイタルでは国内の音楽誌上にて高い評価を受ける。2009年より定期的にブダペストのリスト博物館のリサイタルシリーズに出演し、2013年春にはリストソサイエティーに招かれ、同博物館にて開催されたワーグナー=リスト音楽週間のオープニングセレモニーに出演。室内楽では、鈴木良昭(クラリネット)、リンツ・ブルックナーハウスのアンナ・マリア・パーマー(ソプラノ)、江口心一(チェロ)各氏等と共演を重ねている
これまでに大畠ひとみ、出羽真理、神谷郁代、堀江孝子、田辺緑、播本枝未子、H.シグフリッドソン、G.クプファーナーゲル、G.ナードルの各氏に師事。また、V.ミシュク、V.マカロフ、A.ヴァルディ、中村紘子、D.バシュキーロフ、P.ギリロフ、B.L.ゲルバー各氏のマスタークラスを受講。
現在ソロピアニストや室内楽奏者として日本各地及びヨーロッパで活動し活動し、後進の育成やコンクールの審査にも携わっている。元東京藝術大学音楽学部付属音楽高等学校非常勤講師。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会正会員。
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2018年11月28日 00:00