フランチェスコ・トリスターノが「東京」の心象風景を描いた『東京ストーリーズ』
[Sony Classical 公式チャンネルより]
[FTristanoVEVO 公式チャンネルより]
東京について書き、東京で録音したリアルな「東京物語」。渋谷慶一郎、ユザーン、Hiroshi Watanabeといった日本のミュージシャンをフィーチャー!
1981年ルクセンブルク生まれ。ルクセンブルク音楽院、王立ブリュッセル音楽院、ラトヴィア音楽アカデミー、パリ市立音楽院で研鑽を積んだ後、1998年にアメリカの名門ジュリアード音楽院に入学、修士の学位を獲得。
グレン・グールドと同じくバッハの「ゴールドベルク変奏曲」(2002年)でアルバム・デビュー。その後バッハを中心に活動を続けるが、いっぽうでテクノやハウスなどの電子音楽にも傾倒し、以後クラシックとエレクトロニカの両方の分野で活動するマルチタレントなアーティストである。2007年にドイツ・グラモフォンからソニー・クラシカルに移籍し、アルバム『ピアノ・サークル・ソングス』を発売。これまでの彼の作品のリズムオリエンテッドな部分はおさえられた、静謐でメロディアスな作品となった。
また、昨今の「ネオ・クラシカル・ムーヴメント」にも呼応する感触もあり、新しい世界を切り開いた。同年6月にはこのアルバムの楽曲のみの来日公演を東京と大阪で行い、好評を博す。また、この年の年末には坂本龍一をキュレータに迎えた「グレン・グールド・ギャザリング」に坂本の希望により参加。自身が敬愛するグールドが愛奏したバッハ作品の新解釈を披露し、さらにファン層を広げている。
ソニー・クラシカルからの第二作は、2000年、18歳の時に初めて訪れて以来、これまでに40回以上訪れた東京という街に焦点をあて、東京のソニーミュージック乃木坂スタジオでレコーディング、そして日本のミュージシャンをフィーチャーして制作された、その名も『Tokyo Stories』。
このアルバムは日本を何度も訪れたこのルクセンブルクのピアニストによる、「東京」という街で心に浮かんだ心象風景を描き出した小品の集合体と言える。たとえばそのトラック名は「ホテル目黒」「ネオン・シティ」「血の音」「中目黒第三橋」「代々木リセット」「赤坂間奏曲」など。「パクチー」という曲もある。しかしそれは特に日本的、というのではない。
フランチェスコが東京を訪れて感じたものを、彼自身のフィルターを通してアウトプットしたものである。
ゲストに迎えられたミュージシャンは「ボーカロイド・オペラ」で有名になった渋谷慶一郎、フランチェスコとはデトロイト・テクノの殿堂Transmat(デリック・メイ主宰)のレーベルメイトであるHiroshi Watanabe、坂本龍一との交流でも知られるタブラ奏者U-zhaan。そしてもうひとり、フランスのクラリネット奏者ミシェル・ポルタル。彼はかつて大島渚監督のフランス映画「マックス、モン・アムール」(1986年)の音楽を手掛けているという縁もあるのだ。
(ソニーミュージック)
『フランチェスコ・トリスターノ/トーキョー・ストーリーズ』
【曲目】
1.ホテル目黒
2.ネオン・シティ
3.エレクトリック・ミラー
4.血の音
5.中目黒サード・ブリッジ
6.ラザロ
7.代々木リセット
8.インソムニア (フィーチャリング Guti)
9.カフェ新宿(フィーチャリング ミシェル・ポルタル)
10.パクチー(フィーチャリング ユザーン)
11.赤坂インタールード
12.乃木坂
13.ゲート・オブ・エントリー(フィーチャリング 渋谷慶一郎)
14.銀座リプライズ
15.ボケ・トゥモロー(フィーチャリング ヒロシ・ワタナベ)
16.Kusakabe-san
【演奏】
フランチェスコ・トリスターノ(ピアノ、シンセサイザー他)
・参加ゲスト
Chelly Jerrera(ヴォーカル/4)
Guti(シンセサイザー/8)
ミシェル・ポルタル(バスクラリネット/9)
ユザーン(タブラ/10)
渋谷慶一郎(シンセサイザー/13)
ヒロシ・ワタナベ(シンセサイザー/15)
【録音】
2018年10月 ソニーミュージックスタジオ東京
[Blu-specCD2 仕様]
※日本盤にはボーナストラック1曲追加:赤坂 (ソロ・ピアノ・バージョン)
「Tokyo Stories」は、日本の首都、東京への私の「捧げもの」です。 ネオン・ジャングルを40回ほど訪問し、そこで自分の音楽をレコーディングするのはごく自然なことに思われましたし、それゆえ私はほとんどの曲の作曲を私が愛するようになった街、東京で始めたのです。インスピレーションは私の地元の習慣、ならわし、そして訪れた場所からもたらされました。 日本の音楽家の友人がスタジオに来て(録音セッションに)参加してくれました ――ついでに言えば、(訳註:録音に使用した乃木坂のSONY MUSIC STUDIOSは)私が今までに録音した中で最も美しいスタジオの1つです――そして私は<都市の音Sound of City>もたっぷり録音しました。これらのフィールドレコーディングはプロジェクトの要点であり、それはアルバムの至るところで聴かれます。東京のように巨大で、異質で、まったく想像もできないような都市では、むしろ短い小品が必要とされているのです。このアルバムで私はピアノ、シンセ、打楽器を演奏します。
(フランチェスコ・トリスターノ)