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WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.35

ハービー・ハンコック『処女航海』(1965)

HH

ハービー・ハンコック(p)
フレディ・ハバード(tp)
ジョージ・コールマン(ts)
ロン・カーター(b)
トニー・ウィリアムス(ds)

1965年3月17日 ニュージャージーにて録音

曲目:
01.処女航海
02.ジ・アイ・オブ・ザ・ハリケーン
03.リトル・ワン
04.サヴァイヴァル・オブ・ザ・フィッテスト
05.ドルフィン・ダンス

【アルバム紹介】
1.60年代、新主流派によるモード・ジャズの傑作
2.才人ハービー・ハンコックが描く“海"がテーマのコンセプト・アルバム
3.60年代初頭“ウェイン・ショーター加入前"のマイルス・バンドのメンバー参加

前回ご紹介のエロール・ガーナーのライヴ傑作『コンサート・バイ・ザ・シー』はそのタイトルどおり、"海“と深い関係のある一枚でしたが、このハービー・ハンコックの名盤も同種のアルバムです。

本作は、ブルーノート・レーベルの中では、60年代当時、新主流派と呼ばれたプレイヤーたちによって演奏されたモード・ジャズの傑作としても有名です。
ハービー・ハンコックというピアニストは、演奏はもちろん、作曲に長けた才人であり、その本領を発揮した内容になっています。自身にとって5作目のリーダー・アルバムであり、ブルーノート時代の代表作となります。

このアルバムはジャズのアルバムとしては非常に珍しい“描写音楽"あるいは“標題音楽"の部類で、海をジャズのサウンドで表現したコンセプト・アルバムのような内容になっているのが人気の秘密です。
1曲目のタイトル曲は夜明けの海を漕ぎ出して、初航海に出てゆく様子を描き、2曲目“台風の目"、まさに嵐が吹き荒れて緊張感が高まり、3曲目は“小さきもの"、様々な海中に存在する生物を示し、4曲目は“適者生存"の厳しさを激しいトーンやプレイで表現、そしてラストの5曲目は海原を行くイルカの群れがダンスする穏やかな午後の情景が描かれる、いろいろな解釈はあるかと思われますが、そんな風に展開されます。

ハービー・ハンコックは本作をレコーディングした頃、マイルス・デイヴィスのバンドのメンバーとしても活躍していたため、本作のリズム・セクションは同じマイルス・バンドの2人、ベースのロン・カーターとドラムスのトニー・ウィリアムスが参加、そこに気鋭のトランぺッター、フレディ・ハバード、テナー・マンのジョージ・コールマンが加わったクインテット編成になっています。昔からのジャズ・ファンならここで気づきますが、フレディ・ハバードの位置にマイルス・デイヴィスが入ると、1960年代初頭の“ウェイン・ショーター加入前"のマイルス・バンドの面々(アルバム『マイルス・イン・ヨーロッパ』『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』『フォア&モア』等)になります。

【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
“処女航海"か“ドルフィン・ダンス"か。

曲名でお分かりの通り、アルバムの1曲目か最後の5曲目か、ということになります。 “処女航海"はジャズのビートには程遠いリズム・パターンの上を、マイナーともメジャーともつかない広がりのある響きのコード進行が続く、当時としては前例のない曲調だったと想像できます。80年代に日本のウィスキーのCMでハービー・ハンコック自身が出演し、しかもベースはロン・カーター、ドラムスはトニー・ウィリアムスという、本作と同じリズム・セクションでこの曲を演奏していたのをご覧になった方も多いでしょう。
“ドルフィン・ダンス"は、本作の中では一番“聴きやすい"“歌いやすい"、ある意味キャッチーなメロディ・ラインを持ったナンバーで、こちらもコード進行に特徴があり、非常にスムーズな流れでメジャー・セヴンスやテンション・コードが連鎖しており、そこに漂う美しさが、まるで海面上をキラキラと反射する陽光を想起させます。
どちらもアルバム・リリース時は極めて“新しい"ジャズのオリジナル曲であったと思われますが、今やスタンダード曲として数々のミュージシャンに演奏されているナンバーとなっています。
ちなみに“ドルフィン・ダンス"のような美的な雰囲気にあふれた曲は、リリカルなスタイルのピアノで知られているビル・エヴァンスもカバーしており、1977年録音のアルバム『アイ・ウィル・セイ・グッドバイ』で聴くことができます。

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タグ : WEEKEND JAZZ

掲載: 2019年07月19日 11:30