須田亮太(ナードマグネット)× 宮田翔平(The Whoops)スペシャル対談:後編
スペシャル対談
須田亮太(ナードマグネット)x宮田翔平(The Whoops)
司会:橋本薫(Helsinki Lambda Club)
大阪のパワーポップバンド、ナードマグネットと、埼玉県北浦和発のセンチメンタルロックバンドThe Whoops。レーベルメイトとなった両バンドのフルアルバムが6月12日、同日リリースされた。出会いや、それぞれ制作中のエピソード、お互いの魅力……などなどのトピックについて、両バンドを代表して須田亮太(ナードマグネット/vo,gt)、宮田翔平(The Whoops/vo,gt)が対談を行った。またスペシャルなインタビューアーとして彼らの友人であり、音楽をよく知るHelsinki Lambda Club橋本薫が参加、迷?司会ぶりを発揮し、深イイ話がたっぷりの対談となった。
-- 宮田にすすめる洋楽入門編は?
橋本「音楽の話してねーな…あ、宮田から質問したいことがあるらしく」
宮田「そう。僕は個人的に超洋楽入門っていうプレイリストを作ってるんです。もともと邦楽育ちなんですけど、洋楽も聴くようになって。けど、やっぱそのハマるものもあればハマらないものもあって、深く入っていけてないっていうのがあって」
須田「入門編として?」
宮田「誰かが薦めてる音楽ってやっぱスッと入ってくるんですよね。僕がたまたま買ったBlurのアルバムがあって」
須田「どれすかどれすか?」
宮田「『Think Tank』っていう」
須田「あ~『Think Tank』買っちゃった?」
橋本「地味~!地味~!」
宮田「っていう話を(橋本)薫くんにされて。僕それ聴いて全然Blurハマんなかったって言ったら何聴いたの?って聞かれて『Think Tank』って言ったら「えっ??」
みたいなこと言われたから、もう入門からして間違ってたんだなって」
橋本「そうね~」
宮田「その1枚で僕のBlurのイメージができちゃってるから、その時に入っていけなくて。それを知りたいんですよ。須田さんもそうだし、薫くんの提示する、もうこれが洋楽の入門編だっていうおすすめの1枚を」
須田「じゃあ逆に海外では何が好き?俺ちょっと聞きたかったの、何が好きなんかな宮田くんはって。ルーツはどこなんやろって。結構良い曲作るな~って思ってたから」
宮田「嬉し~めっちゃ嬉しい。なんだろう…北欧のバンドとか好きっすね。Caesarsとか」
須田「あ~懐かしい」
宮田「The Cardigansとか…あとなんだろう、Phoenixとかも好きですね」
橋本「Phoenixてフランスだっけ?」
須田「フランスやね」
宮田「結構露骨に意識してるのはThe Strokesですね」
須田「あ、そうなんや。でもそうか、世代的に27?28歳はあのへんの時代よね。The Strokes、Arctic Monkeysとか」
宮田「そうっすね。あとやっぱ最初はThe Beatlesでしたね。みんな通る道だとは思うんすけど。割と、重厚感あるものよりは結構軽めというか、クランチ感のあるものが多かったですね」
須田「うんうん」
宮田「最近こうTHISTIMEでやるってなってから、僕のギターガンガンに歪んできてますね。無意識にパワーポップ感を意識してて(笑)ゲインが上がってきてます」
須田「あはは(笑)」
宮田「僕がけっこうのめり込んだのはそこですね、それこそThe Strokes、Arctic Monkeysとかその辺が多かったですね。すごい掘れてるかって言ったらそういう訳でもなくて、なんとなく新しいのが出ても最新で追ってるわけでもなくて」
橋本「じゃあ、それを踏まえて、マウント取ってください」
須田「マウント(笑)」
宮田「出た!洋楽マウント~」
須田「難しいな~なんやろな~。いうてもさ、超入門はだいたい聴いてるとは思うからさ、それこそ今あげたやつって入門にぴったりなね、The Strokesもそうだし」
宮田「そうっすね~。なんか、これはもう僕だけとかじゃなくて、一般のお客さんとか邦楽ファンの人たちに向けて」
須田「なんやろな~」
橋本「じゃあ僕から言いましょうか。一応準備してきたんで」
宮田「お~!」
橋本「The Whoopsとナードマグネットを好きでこれを読んでる方とかに良さそうなものをと思って。曲単体とかだといくらでもあるんすけど、アルバム全体で聴けるものってなんだろうって考えて、二つ思いつきまいした。ひとつはLocksley」
須田「はあ~~~~~、良い」
橋本「まあ古いっちゃ古いけど、今聴いてもアルバム全体通して聴きやすいし、ロックスリーのアルバムとか、ファーストね。あとはAsh。Free All Angelsとか」
須田「あ~~~~」
橋本「多分ナード好きな人とかにもすごく合う、なんかこうリファレンスというか。聴きやすいし、名曲いっぱい入ってるし」
須田「そやね。でもなんかこう、重すぎないところ、Free All Angelsとかは重すぎないところだから、The Whoopsとかもね」
宮田「そうっすね」
須田「いいなぁ~」
橋本「須田さんは?」
須田「なんやろな~、The Cribsとか?」
橋本「あ~最高っすね」
宮田「最高っすね」
橋本「どのアルバムすか!」
須田「俺はあのあれ『Men’s Needs』すかねぇ」
橋本「あ~最高っすね。The Cribsは確かにわかるわ。須田さんの好きな音楽についてはめちゃめちゃ気になるからなぁ。俺が人と分かち合えなかった音楽を絶対分かち合えるからな」
須田「あはは(笑)そうかな(笑)」
宮田「出た出た洋楽マウント」
橋本「あ~ちょっと、やめとくわ~(笑)」
宮田「蚊帳の外や~もう(笑)」
須田「今の話の流れからしたらなんか、The Cribsはぱっと思いつくな。あとSuperchunkとか」
橋本「俺もちょっと思ってたんすよ」
須田「なんかこう、めっちゃへなちょこなやつの全力疾走みたいな。センチメンタルな全力疾走みたいな感じがいいかなって」
橋本「Superchunkはちょっとアルバムが多くて」
須田「どっからっていうのはあるよね」
橋本「難しいっすね」
須田「ずっといいからねSuperchunk」
橋本「そういうバンドでありたいっすね」
宮田「Fountains of Wayneも教えてもらいました」
橋本「それもちょっと思ったんだよね」
須田「あ~~」
橋本「カバーしてますしね『Welcome Interstate Managers』は。あのアルバムは僕、中3の受験期にCD買いに行って」
宮田「その頃聴いてたのすごいな」
橋本「たまたまMTVかなんかで『Stacy’s Mom』のMV流れてて」
宮田「MTV懐かしい…」
須田「『Stacy’s Mom』はなぁ。めちゃめちゃいいよなぁ」
橋本「すごい流行って。CD買ってずっと聴いてた」
須田「Fountains of Wayneたしかに聴きやすいかもね」
-- 10代の頃聞いていた音楽
宮田「最初に、音楽やろうって思ったきっかけって何だったんですか?」
須田「親戚のおじさんが元々バンドマンで。で、俺が中学に上がった時に『そろそろこれを託そうと思う』って」
橋本「かっけぇ(笑)ドラマがあったんすね」
須田「無理矢理、半ば強引にスクワイヤー※①のストラトをもらって
橋本「スクワイヤーってのがね」
須田「スクワイヤーって」
橋本「まずお前はここからだっていう」
須田「そうそう(笑)」
橋本「でもちゃんと弾きやすい」
宮田「たしかにたしかに」
須田「でも元々あんまりバンドものが好きっていうよりはラジオとかで流れてくる音楽が好きで。テレビのMステとかでやってるような曲が好きやったりっていうのだったから。J-pop好きな子供やったから。中学上がってエレキもらったけど、何やったらいいんかわからんくて、まずコピーしたんがゆずの曲やったから」
橋本「そういうの通ってきてる人がやっぱりグッドメロディーをね、染みついてる感がね、ありますね」
須田「根底がやっぱりJ-popやから、メロディーが親しみやすいものが好きっていうのはあるんかもしれないかな」
宮田「そっからどのタイミングで洋楽にのめり込んだんすか?」
須田「ギターもらった段階でバンドものも聴いてたの。ラルクとかがめっちゃ流行ってたからその時期、シングル3枚同時リリースとか。で、すごいプログレみたいな曲がさ、オリコン3位に入っちゃったりする変な時代やってさ(笑)」
橋本「はいはい(笑)」
須田「それでラルク好きやったし」
橋本「マジすか?僕もラルクめちゃめちゃ好きなんすよ」
須田「あ、そうなんや!」
橋本「ラルクめっちゃ好きなんすよ」
須田「そうなんや~。俺活動休止する前のは全部、どれ言われても分かる」
橋本「マジすか、僕も割といけますよ」
須田「リアルくらいまで」
宮田「邦楽マウント始まった!」
橋本・須田「あははは(笑)」
宮田「洋楽のみならず」
橋本「去年東京ドームいってるから」
須田「え~!めっちゃ好きやん」
宮田「行ったんだ!(笑)」
須田「やっぱさ、ラルク好きやと、UKロックとかの道に開かれるくない?」
橋本「はいはい」
須田「ラルクのメンバーが昔ラジオをやっててさ、そこでRADIOHEADとか、スマパンとかMuseとか、いろいろかけてたん。それで当時俺が中学生だった時、なんかちょっと背伸びしたい時期で『俺、洋楽も知ってるぜ』って感じ出したいから、ラルクが薦めるやつ全部メモして」
橋本「わかるなぁ~。俺、小6だか中1くらいまでヤフーミュージックっていう所の中で情報集めてたんですけど、そこのラルクのディスクの紹介の所に勝手にコメントしてる人とかが『ハイドはNIRVANAとLINKIN PARKが好きらしい』って書いてあって(笑)そっからNIRVANA聴いた(笑)」
宮田「そこなんだ導線(笑)」
須田「幅広くいろいろ好きになれるきっかけってL'Arc-en-Cielやったと思う。めっちゃポップな曲もあればそういう『侵食』みたいなさ、プログレな曲もあったり」
橋本「またね、ゆっきーの書く曲がね」
須田「またマニアックやんかすごい」
橋本「そうなんすよ…あ~ごめん。この話したら長くなっちゃう(笑)」
宮田「ラルクかぁ~」
橋本「ラルクあんま聴かない?」
宮田「何曲かだったかなぁ~友達に勧められてくらい」
橋本「ラルクいいすよ~」
宮田「そん時僕は日本のインディーズを聴いてる自分かっけー状態だったから」
須田「それってどの辺の時期?」
宮田「青春パンクの全盛期がちょっと過ぎ去ったくらいですかね」
橋本「ガガガとかそんくらい?」
宮田「そうっすね、ガガガ、銀杏BOYZとか、STANCE PUNKS」
橋本「あ~スタパンね~」
須田「懐かしいな」
宮田「SABOTENとか聴いてたかな。175R、SHAKALABBITS」
橋本「稲葉※②と一緒だな」
宮田「ストリートロックファイルみたいな」
須田「あ~~はっはは!!!」
宮田「わかります?」
須田「あの冊子ね(笑)」
宮田「あの辺の音楽を聴いてましたね。みんなが知らない音楽を知ってる俺かっけぇっていう、洋楽じゃなくて日本のインディーズで。それこそ、インディーズバンドってめっちゃ検索して、めっちゃ地下まで調べてた」
橋本「いまだにカラオケでジャパハリネットめっちゃ歌うけどな」
須田「やば」
宮田「懐かしい…物憂げ世情」
橋本「そうそう(笑)」
宮田「逆にジャパハリネットは当時曲しか知らないから、最近写真見たらボーカルの人意外とリーゼントだなって」
橋本「そうそう(笑)」
宮田「思ってたんと違う!って(笑)」
橋本「Mステとか出てましたよ」
宮田「ね、それも後から知った。でもその時聴いてたものってめっちゃ影響出ますよね」
橋本「そうだね。もう呪いみたいなものだよね」
須田「いまだに、何年も聴いてなくてもパッとかけられたら全部歌えるよね」
橋本「全部歌えるね~」
宮田「たしかに」
橋本「だから本当、僕ら世代だとそういう音楽とかを聴いてきて、最近の若い世代、例えばNo Busesとかさ、No Buses近藤くんは話聞いたらけっこうJ-pop的なの聴いてたらしいんですけど、ナチュラルにカッコいい音楽を若いころから聴いてるから、土台が違うなって感じめちゃめちゃするな」
須田「だって物心ついた時からYouTubeあるし」
橋本「すごいっすよね」
須田「年代とかも全然関係ないんやろね。だから今20歳くらいの子が僕らスマパン大好きですみたいな、普通にあるから。すごい時代になったなって。どこからこんなん知ったの?って、YouTubeですって。YouTubeのおすすめを聴いてたらって」
橋本「Smashing Pumpkins好きになってくれるなら本望っすけど、スマパン布教委員会としては」
宮田「布教委員会(笑)」
橋本「スマパンなかなかね~気に入ってくれないからね~。あれも入り方間違えるとね、なかなか難しいところあるからね」
須田「そやね」
宮田「有名な曲から入ったら結構うまくいきそうな感じしますけどね」
橋本「ただその、名盤とされるメランコリーから聴くと、曲めっちゃ多いしヘビーなものが多いから、割とそこで挫折しちゃう人が多いから」
須田「はいはい」
宮田「誰かがリハで弾いてたりするとめっちゃ見ちゃいますよね」
須田「あ~俺めちゃめちゃ弾く(笑)」
宮田「あはは(笑)」
橋本「俺めっちゃスマパンリハで弾いちゃう」
須田「俺もたまにやるな」
橋本「気持ちいいっすからね」
須田「気持ちいいね(笑)」
橋本「ダダドダダドダダドダダダダダダド」
須田「ドロップDだとデュルルルデュルルルデュルルルデュルルルウォロロロロ」
橋本「あはは(笑)須田さんって基本ドロップDなんですか?」
須田「あ~曲による」
橋本「そうなんすね」
須田「ドロップDシリーズはちゃんとあって」
宮田「見ててびっくりした(笑)」
須田「アップサイドダウンらへんはドロップDかな」
橋本「あ~そうなんだ」
宮田「須田さんどうやって(弦を)押さえてるんだろうって見てました…」
橋本「ドロップDは最高に気持ちいいからな」
須田「そう、楽しい」
宮田「森ちゃんのギャグにドロップEってのがあって、弦ダルダルで弾くっていう(笑)」
橋本・須田「あははは(笑)」
宮田「オクターブ下げ(笑)」
須田「オクターブ下げ(笑)」
-- 宮田にすすめる洋画入門編は?
橋本「真面目にやれよ(笑)で、あとなんだっけ、映画だっけ」
宮田「超洋画入門」
須田「洋画入門?」
橋本「まあこれもね、詳しく話し出すとキリがないと思うんで。どうすか?」
須田「洋画入門ですか?」
宮田「須田さんめっちゃ観てるんで、気になりますよね。一個オススメするなら何なのかって」
須田「え~難しいなぁ~一個か~…。生涯ベスト映画は『リトルミスサンシャイン』」
橋本「面白いっすね」
須田「家族のロードムービーなんやけど」
橋本「あれはいいっすね~」
須田「なんでそんな映画なの?普段観ないから?」
宮田「僕も結構観るんす。結構観るんすけど、映画好きな人が薦める映画ってやっぱり気になるというか」
須田「俺今年ちょっと困ってるんやけど、アベンジャーズのエンドゲームを観たせいで映画に対して不感症になってきてしまって。エンドゲームで極限まで感動して尽くしてしまって」
宮田「え~そんなすごいんすね。ムツムロ(ハンブレッダーズ)にめっちゃ薦められて」
須田「そう、あいつに薦めたら2、3週間でシリーズ22、23品くらい全部観て(笑)そんで最終的にみんなで一緒に観に行くっていう」
橋本「いいっすね」
宮田「楽しそ~追わないとな、アベンジャーズ全然観たことない」
須田「MCUシリーズを追うだけで、今のハリウッドのメジャーな映画の美味しいところは全部楽しめるというか。いろんな要素が入ってるから。入門っていう意味ではいいかも」
宮田「アベンジャーズのシリーズって何から観たらいいんですか?」
須田「アイアンマン」
橋本「アイアンマンが一番最初なんすね」
宮田「22作品かぁ~長いっすね…。ウォーキング・デッドは全部観たんすよね」
橋本「あ~ウォーキング・デッド全部観た。2、3年前のフルアルバム作ってる時、フルアルバム作んなきゃいけないのに、ずっと観てた」
宮田「途中からさ、惰性になるよね」
橋本「惰性だね。ずっと救いがないから、ずっと救いがない気持ちだった」
須田「最初しか観てないなぁ」
宮田「早く終わんねえかなって思いますね。早く幸せになってくれとしか思わない」
橋本「今ね『ブルックリン・ナイン-ナイン』っていうドラマ観てて」
須田「あれ最高」
橋本「めっちゃ面白いっすよね」
宮田「Netflix?」
橋本「Netflix。あれ完璧なんすよ~」
須田「あの主人公の、ペラルタ、あの人すごい好きで」
橋本「あの人良いっすね。あれ出てますよね、なんだっけ、あの…」
宮田「洋画マウントやこれ」
橋本「あれなんだっけな…あ『That's My Boy!俺のムスコ』」
須田「あ~そうやそうや!」
橋本「あれとかも結構好き」
須田「アダム・サンドラーね」
橋本「アダム・サンドラーも好きっすよ」
須田「大好き」
橋本「最近心が疲れてくると、アダム・サンドラーの出てる映画ばっか見たくなる」
須田「ちょうどいいんよね。温度感が」
宮田「ストレンジャー・シングス観たいんすよね」
須田「あ~」
橋本「ストレンジャー・シングスはね、あんまりハマんなかった」
須田「ほんまに?」
橋本「途中まで観てたけど、面白いな~と思いつつ、めちゃめちゃ観ちゃうってなんなくて、途中でやめちゃってるんすよね」
須田「最後まで観ると結構、グッとくる」
宮田「そうなんですね」
橋本「入門編ね、これもまたThe Whoopsやナードマグネットが好きな所だと、絶対『アバウト・タイム』」
宮田「俺も同じ事言おうと思ってた」
須田「あ~。大好き」
宮田「Time Machineでしょ」
橋本「あ~たしかに」
宮田「アバウト・タイムいい」
橋本「アバウト・タイムいいね」
宮田「めっちゃいい」
橋本「あとは最近ので言うと、『さよなら僕のマンハッタン』とか」
須田「あ、それ観てない」
宮田「観てない!」
橋本「あれっすよね、マーク・ウェブ。『(500)日のサマー』とかの」
須田「マーク・ウェブ!」
橋本「いいっすよね」
宮田「割と、橋本薫から影響受けてるんすよ」
橋本「あ、そうなの?(笑)」
宮田「ヘルシンキの前身バンドで僕がギターで入った時の曲で「レンタルガール」
って曲があって、そのキーが高すぎてライブで一切やらないっていう」
橋本「キーの下げ方わかんないんで(笑)」
宮田「その歌詞に『ほんとはグーニーズが観たいけどキューブリックをレジに持ってく』みたいな。そっから『グーニーズ』観て」
須田「グーニーズも観たんや(笑)」
宮田「グーニーズってなんだろうみたいな感じで(笑)キューブリックも後から観ました」
橋本「そうだったんだ(笑)」
宮田「すごい影響を受けてて」
須田「いい話や」
──互いのアルバムについて
-- ナードのアルバムについて
橋本「よし、次行こうか。やっぱ作品の話ちゃんとした方がいいっすよね」
須田「だいぶ迂回したな(笑)」
橋本「だいぶ曲がりくねった道をね。じゃあお互いに、新作を聴いてどうでした?」
宮田「いいっすよやっぱ、フェス感があるのめっちゃいいなって思いますね」
須田「あ~ほんまに?」
宮田「シンガロングする場面を意図的になのか自然になのか。その画が浮かぶというか。ナードマグネットが超洋楽入門的な感じはありますよね」
須田「あ~それは、意図してやってるから」
宮田「ナードマグネット聴いた人がさらにルーツになってるものを聴いていくっていう導線がちゃんとあってって、それをすごい思いました」
須田「そこは本当に、もう開き直ってやろうかなって。だからほんまに、詳しい人はもういいのよ(笑)」
橋本「わかります」
須田「詳しい人に、こんなもんは子供だましだって言われても、それはいいのよ。そうですって(笑)わかりますって」
橋本「そのスタンスはめっちゃ最高ですね」
須田「でも僕もあなたが聴くようなやつ好きなんですけどねっていう(笑)たまにエゴサとかしてたら面倒くさい大学生とかに叩かれてることあんのよ。ナードマグネットむかつくみたいな。で、Earl Sweatshirtのアルバムをアイコンにしてるみたいな。俺、ブラックミュージック聴いてるぜみたいな。俺はEarl Sweatshirtも聴いてるから!って(笑)」
宮田・橋本「アッハッハ(笑)」
須田「バカヤローって(笑)」
橋本「いや最高っすね。勝手にそういうある種の使命感というか」
須田「だって、現にそのフェスシーンみたいな一番盛り上がってるシーンが、そういう要素が足りてないなっていうのはいまだに思うから。わかりやすい導線を作る人っていうのはいないといけないのかなって」
橋本「いてほしいっすよね」
宮田「めっちゃ納得した」
須田「意図的にわかりやすくしてる部分もあるかも」
橋本「たしかに今までよりそこが分かりやすくなったような気はしましたね。「COMET」とか、サビまではすごいJimmy Eat World感あるし、そういう部分が見えやすくなったなっていうのは」
須田「こういうインタビューとかでは俺全部言うから。これはこういう曲に影響受けてとか。それで掘りたいなって人は掘ってくれればいいかな」
橋本「自分の楽曲に自信がないと、そこってやっぱり出せないものだし、いい曲だからって前提がすごいあるなとは思います」
宮田「いいんだよなぁめっちゃ。嫉妬しちゃいます僕は」
-- フープスのアルバムについて
須田「The Whoopsはさ、全部宮田が作ってるの?」
宮田「全部僕です。今回は1曲だけ弟が作ったやつで」
須田「え?!」
橋本「手紙ね」
宮田「(弟のバンド、ニャンダースに)手紙って曲があって、それをやったのをすごい覚えてたんすよね。音源とかも全然なくて、単純に記憶だけで僕の中に残ってたから、そのバンドも解散しちゃったし復活させたいなと思って。Cメロだけ僕が付け足して僕が作ったみたいな顔をして(笑)」
橋本「ニャンダースの「手紙」めっちゃ良かったなぁ」
宮田「なんでなんで(笑)一番聴きどころのCメロ作ったよ」
須田「あ~そうやったんや。あの「踊れない僕ら」ってあるやん」
橋本「あ~、意欲作ですね」
須田「ちょっと詳しく聞きたいっすね。あれはほぼ宮田が作ってるの?」
宮田「ほぼ僕作りました」
須田「トラックとか」
宮田「そうっすね」
橋本「あれは元々誰の曲なんすか?」
宮田「僕…」
全員「アッハッハッハ(笑)」
宮田「全部もらってる訳じゃないから、あの手紙だけだから!その、iPadのガレージバンドで、通勤途中に良さそうなトラックのサンプル音源とかを張り付けて作ったら意外とできてしまって」
須田「あ、じゃあ冒頭のピアノとかも全部サンプルってこと?」
宮田「あれ全部サンプルで、ピアノオートプレイみたいなのを取ったら結構いい感じのフレーズがあって。で、それをMacに取り込むとちょっと(Mac版のガレージバンドの音源に切り替わって)音カッコよくなるんすよ。でもガレージバンドは結構トラック数に制限があってミックスしずらいから、途中でロジックに変えたんすけど。で、無理矢理作ったのをエンジニアの人がミックスとか、変なところを調整してくれて、最終的にトラックができて。通勤DTMっすよ」
橋本「通勤DTM(笑)新ジャンル」
須田「すごいね」
宮田「ボーナストラック的に作ってたんで、遊びで作ってたんすけど、本当にギターとかも一切弾かず、iPad上でやってましたね」
須田「へえ~。あれどうやってつくったのと思ってて、本当に異色やからこれまでのより」
宮田「アルバムだから入れられた感はありますけどね」
須田「あれすごくいいよね」
宮田「ありがとうございます。嬉しいです。須永くんとかめっちゃ不機嫌でしたね、露骨に不機嫌」
須田「ドラマーってそういうとこあるよね(笑)」
宮田「別にもう、作ってないんだからええやんって(笑)シングルで出したらちょっと違うじゃないですか、なんか変わったなみたいな。アルバムだから遊び曲があってもいいかなって」
橋本「ライブでやってたね」
宮田「ライブでやってた。そう、あれMVにしたくて、その様子を。催眠術絡んで。で、メンバーにも歌うパート作るから、ちゃんとサビと歌詞を覚えてきてねって言ってレコーディング入ったら、ナナナナナナ~~みたいな(笑)須永くんのトラックだけ聴くとやばいですよ(笑)こいつどうした?ってくらいのグニャグニャで。歌詞持ってんだけど全然覚えてこなくて」
橋本「須永なりのねプロテストだったんだよ」
須田「勝手にぶち込みやがってってね(笑)」
宮田「僕は好きなことやれたんで良かったっすね。自分の聴いてきた2000年代初頭とかの流行ったヒップホップの上澄みを(笑)」
橋本「上澄み言うな(笑)」
宮田「僕のルーツは全然深くないから、J-popしか聴いてこなかったから。ヒップホップとかレゲエとかね」
須田「でもちゃんとバキバキに韻踏んでるし」
宮田「嬉しいっすね。結構普段の曲でもめっちゃ韻踏んでるんすけどね、あんまり誰かピックアップしてくれることもなく、もっと聴けよ!って思うんすけど」
橋本「まあ韻よりいっぱいいいとこある」
藤澤※③「結局『踊れない僕ら」
がプレイリスト系選ばれてるんですよ」
宮田「マジすか!」
須田「そうなんすか」
藤澤「ゴリゴリにヒップホップのプレイリストを聴きながら掃除してたのこの間、で、あれ?これめっちゃ聴いたことあるな?でもこんなやばいやつ誰だ?あれこれ、The Whoopsじゃね?って(笑)」
宮田「弊社の(笑)」
藤澤「そう、ここに入ってたかと」
須田「え~すごい」
橋本「へえ~そんなことあるんだ」
須田「ほんま、そのうちやってみたいことではあったから」
-- 音楽と時代性
宮田「それ気になってるんすよ。須田さんあえて、ナードマグネットやるにあたってパワーポップに寄せてるけど、絶対好きな音楽もっと広くて、もっとやりたいことって他にあるんだろうなって思うから、どんなこと他にやりたいのかなってすごい気になりますね」
須田「でもあんまり、今世界で流行ってる最前線のことをそのままやるのも違うなって思って。今って本当に、世界的にギターって嫌われてるっていうか、ギターの音が出た瞬間に飛ばす、みたいなさ」
橋本「らしいっすね」
須田「ギターバンドに対しての風当たりが強くなってきているというか。じゃあその潮流に乗れば済むのかっていうと、それはすごく寂しい気もするから。俺はギターの音好きやし。パワーポップってひとつのジャンルミュージックやからさ、ジャンルって歴史の積み重ねやから。ジャンルであることを嫌う人ってめっちゃ多いけど、『俺はジャンルにはとらわれたくない!』とかそういうこと言ってる奴に限ってそのジャンルのこと掘り下げないと思うから。
先人たちの積み重ねによってジャンルってものがあるんやから、それを途絶えさせてしまうとそれは本当に悲しいことやと思う。やから、あえてそこはパワーポップって名乗って、先人からもらったものを自分らなりにやりたいみたいな所はある」
橋本「どうせそうやって守ってやってても、今の時代自分で鳴らしてたらもう今の音になりますし。だからその姿勢は僕もすごく共感するところではありますね。新しいことをやるって大事なんだけど、新しさにばっか目が行き過ぎて『新しいけどそんな良くない』っていう現象がなくはない。そうなっちゃうんだったらまずいいと思うものを作って、作った上で新しければ尚更いいしって思うなって。そういう面でナードマグネットというのはすごく、支えになるというか」
須田「音的には古臭いんやけど今回のアルバムは、Jimmy Eat Worldそのままやったりとか(笑)それだけじゃなくて、これを今2019年に出すっていう意識はちゃんと持ってやったかな。歌詞の内容とかその辺は踏み込んで、今っぽい感じにはしたかなぁ」
橋本「たしかに、時代性は絶対あったと思いますね」
宮田「歌詞いいっすよ、めっちゃ」
-- ナードの歌詞の世界観
橋本「歌詞の話でいうと『FREAKS&GEEKS』。まあ良い悪いで言ったら全部いいんすけど。今までのナードっていうものの世間的な印象っていうか、Weezer的なその泣き虫ポップ的な、いじいじした感じみたいな風に捉えられてる部分もあるのかなと。それは別に間違いではないと思うんですけど。今回の作品だともうちょっとその俯瞰の視線というか、『君の好きな歌、実はそんな好きじゃないでしょ』とか、すごい時代性もあるし。ただのカウンターっていう訳じゃなくて、気づかせるというか。啓発とかっていうとちょっと仰々しいですけど、ちょっと冷静になって見てみなよっていう感じが、すごく変わったっていうわけじゃないですけど、今回改めて感じたなと思ってて」
須田「それはそやね。やっぱりなんかね、腹立つんですよ(笑)腹立つことが多いから。前のアルバム出してから2年間いろんな気持ちを経験して、あとは今までと同じことを歌っててもしゃあないなって思ったし、情けない恋愛ソングみたいなのが流行ってきたかなっていう気もするし、この2年くらいで」
橋本「あ~まあたしかにね、そうかもしれないですね。それはナードがある種耕した道なのかもしれないですけど」
須田「耕したのかどうなのかわからないですけど、そこに対してもひねくれてしまうというか(笑)そこじゃねーだろってなってしまうというか」
橋本「そういった部分で視点がちょっとシフトしてきたっていうのは、全体的に聴いて感じた所ですね」
須田「やぱりその、映画とかドラマとか好きやから、それがこの2年間くらいで海外のカルチャーの描いてることも変わってきたから、それに引っ張られてる部分はあるかもしれへん。海外はこういう事を描いてて日本はこんな感じってそのギャップになんか、あれ?みたいな」
宮田「今日俺(お酒で酔い過ぎて)ダメかも知れない」
須田「嫁にまた怒られてしまう」
宮田「めっちゃ怒られますよ」
藤澤「でも自分から飲んでるよ」
宮田「ああ、ちょっと楽しいんで」
藤澤「なら良かった(笑)最初緊張してたから」
宮田「意外と僕緊張しちゃうんですよね。人見知りが加速して」
-- ポップパンクをパワー・ポップの側面から
橋本「もうちょっと曲の話していいですか?バッド・レピュテイションの時って、出した時に結構『わ!SUM41的だ』って、僕も思ったんですけど、今までパワーポップっていう部分でやってきたと思うんですけど、これ作った時ってそっちのポップパンク、SUM41的なものは実際意識されたりしたんですか?」
須田「めっちゃした。今回のアルバムって意図的にWeezerのオマージュから逃げようって思ってて、今まで和製Weezer和製Weezerって言われてたから。それで、前に『MISS YOU』って曲、あれは1曲の中にWeezerの要素を3つ4つ入れてるから、それでもう一旦、ちょっとようやったなと思って、なんかちょっと新しい、自分の中でポップパンクのバンドもパワーポップの文脈で聴いたりしてたから」
橋本「実際僕もそうっすね」
須田「普通にいい曲やんみたいな。Bowling For Soupとかも、ポップパンクの流れの中でできたバンドではあるけども、俺の中ではパワーポップバンドやし。パワーポップっていう解釈の、元々解釈は広いジャンルではあるからね。そこを意図的に、自分らなりに、これもパワーポップって呼んじゃうよって、呼んじゃっていいんじゃないって感じで今回12曲はそういう振り分けはしてるかな」
橋本「ポップパンクとかエモとか、それに引っ付いて」
須田「そうそうそうそう」
橋本「たしかにそれが全部集まってナードって感じが特に出来上がってるし」
須田「 「バッド・レピュテイション」
はなんかね、作っていく過程でこれも入れるこれも入れるってなって、どんどんあの2003年のサマソニ感を取り寄せた感じ」
橋本「僕も元々SUM41とかその界隈の音楽が好きでバンドを始めたんで、だから今回の作品はすごく個人的な胸アツポイントがたくさんありましたね」
宮田「元はそういうバンドだったもんね」
須田「あ、そうなの?」
橋本「僕、高校時代まではメロコアやってました、英語で歌ってました(笑)元々パンク畑なんで」
須田「なるほどなぁ~」
橋本「初ライブ、スターリンやりましたもん」
藤澤「そっち??(笑)」
橋本「Green Dayとかもやってました」
須田「そうなんや~」
-- The Whoops の新しい一面、 そして森ちゃんはいい
橋本「The Whoopsの作品についても話しますか」
須田「今回冒頭びっくりしたというか、サイケな感じなんやと思いきや」
宮田「マジすか?」
須田「冒頭ってほんまに冒頭がすごいサイケな感じで、ちょっとリヴァービィーな感じで、こういう感じで今回行くの?と思ったら一気にガっと変わるのが」
橋本「結構器用だよね」
宮田「器用?(笑)」
橋本「自分の思い描いてたThe Whoopsの印象とは違う面がいっぱいあって、まだ全然俺はThe Whoopsのこと知らなかったんだなって」
宮田「こんなに近くにいたのに?」
橋本「そうそう。ちょっと寂しい気持ちになりました」
宮田「意外性持ってくれたなら嬉しいですね」
須田「森ちゃん歌いいよね」
宮田「いいっすね」
須田「あれいいよね。森ちゃん、ちゃんと歌えるのいいよね」
宮田「森ちゃんボーカルの曲もっと増やしたいですけどね」
須田「うん、なんか全然いけると思ったこれ聴いて」
宮田「時々やってますけど、やっぱいいっすね。あとレコーディング早いっす。1回か2回でOKっす」
橋本「森ちゃんのベースすごい良いなって思う。森ちゃん自身も、勝手な印象だけどあんまり音楽詳しくないというか、言ってると思うんだけど、そういう部分でのいい意味での諦めっていうか、詰め込み過ぎない、すごく聴きやすいベースだなって」
宮田「Skreamのインタビューで森ちゃんが言ってたのが、「私はキャラクター的にはルート弾きで全然問題ないんですけど、意外と動いてるよっていう所で笑いを取りに行ってる」って(笑)確かに動くんだよね」
橋本「結局それは音の気持ちよさっていうそういう部分での判断で構築してるなっていう感じが、いやらしさがないっていうか、そういう部分の潔さみたいなのが意欲的に映るなっていうのが」
宮田「元は吹奏楽の人なんですよ。ハモリとかにもすごいこだわりがあって、ベースラインとかも多少はそれ意識してやってるのかな。理論とかは一切覚えないです。こうこうこうって何回説明してもわかんないっすみたいな感じで」
須田「感覚なんや」
橋本「けっこうネオアコっぽいのとかもあったように聴こえたんだけどそうでもない?」
宮田「空間系っぽい音色が増えたからかもしれない」
橋本「僕はあれっすね「行方」
がすごい好きですね」
宮田「あ~嬉しい!」
橋本「『行方』はなんか、back numberみたいで」
宮田「でもわかる。俺ら的にはミスチルだった」
橋本「あ~ミスチルだ。間違えたなぁ」
宮田「俺ら的にはミスチルだった」
橋本「メロディーをもう、気持ちがある種全国的なというか、『だってそれが気持ちいいんだもん』っていうのをちゃんとやってるっていうか。そこがThe Whoopsの良い所っていうか。そこで逃げるという訳じゃないけど、別のやり方とかもあると思うんだけど、でも絶対これが気持ちいい訳じゃん。ミスチルは絶対気持ち良いコード進行でいってやってる訳じゃん。それを気持ちいいんだもんっていう感じを、やっぱり今の時代だとみんな舐められたくないから、そういう風にやらないっちゃ、やらないのかもしれないけど、それが気持ちいいんだからやるしかないじゃんっていう」
宮田「サビが弱いとメンバーがボツにするんで(笑)」
橋本「そういう理由(笑)」
宮田「なんかちょっと、う~ん…サビ弱いっすねって。でもそれは客観的な意見だから、そうか、『じゃあ保留ね』って言って死んできた曲たちがたくさんいる」
橋本「ゆえにここまでの名曲が」
宮田「『行方』は二人がめちゃくちゃハマって、すごい嬉しかったですね」
橋本「ちょっともう1回聴いていいすか?サビ聴きたくて」
藤澤「サビ聴いたら、マジでドームみえましたよ」
橋本「(サビを聴いて)あ~泣ける。映画のタイアップでしょこれ」
宮田「うちのメンバーはベタベタが大好きなんすよ、J-popのメロディーが大好き」
橋本「いや間違ってないっすよ」
宮田「アウトロは完全にイエローモンキーなんですよ。球根のギターソロをまんまいれててて。最後のトレモロのテンポを遅くするのを森ちゃんにやってもらって」
藤澤「人力なんだ(笑)」
宮田「完全に人力で」
須田「いい曲や」
宮田「嬉しい、めっちゃ」
橋本「これ書こうと思ってもなかなか書けないっすよね」
藤澤「これさっきの話で言ったらフェス向けなんじゃないですか?」
宮田「マジすか!僕らとっ散らかってしまって、ジャンルの話で言うと」
須田「そうかな?」
宮田「ほんとね~好きなバンドのオマージュをね、好き放題やってたらとっ散らかってしまって。『踊れない僕ら』もそうですし、The Strokes、スーパーカー、ミスチル(笑)」
橋本「でもちゃんとThe Whoopsとしての鳴り方があるし」
宮田「Time Machineっていう軸ができたから」
橋本「後付けだけどね」
宮田「ん、うん後付けなんだけど…」
藤澤「アッハッハ(笑)」
宮田「最後にそれ回収できた感があってよかった」
橋本「それはうちもよくやる」
宮田「アスタリスク」
橋本「後で回収するやつ」
藤澤「『春について』のさわりのサイケな感じのやつ、あれはTempalay周辺のシーンを意識したとかいう訳ではない?」
宮田「シーンを意識したっていうよりは、とにかく緩急をつけたかったんですよね。とにかく意外性を出したいって言ってやりました。僕ら早い曲作るのがめっちゃ苦手で」
須田「そうなんや?俺一番好きな曲『花と街』やけどな」
藤澤「あのイメージあるよね」
須田「あれ大好きやけどな」
宮田「我々も早い曲を書きなれてなかったから、書いた後のメンバーの評価はそんなに高くなかったんすよ。アルバム曲やろ~くらいの感覚だったのに一番反響があって、意外だったというか。なんであれでMVを撮らなかったんだって(笑)須永くんがぼそぼそ言うんですよ」
須田「あははは(笑)」
宮田「むかつくわ~って(笑)当時言え当時!」
藤澤「おまえ~!あの時は~!って(笑)スンってしてたやんって」
宮田「しかもレコーディングで全然覚えてこないんすよ。全然叩けないみたいな。6時間くらいかけて録り終わって」
── バンドマンと社会人
-- バンドやめたいと思うとき
橋本「バンドやめたいと思ったことはありますか?」
宮田「バンドやめたいと思ったことはね、思い返したらあるね」
橋本「どういう時に?」
宮田「全然動員がないとか、地方とか行ってどうにもならないなぁとか実感したりすると、運転した帰り道の中ですごいナーバスになる」
須田「運転してる時に、我に返るってのはあるらしいね」
橋本「それはあるね」
須田「最近知り合いの大阪のバンドがメンバーが脱退するって発表したんやけど、そいつも遠征の帰りに一人で深夜運転してて、もうそん時にいろいろ考えちゃってフッと我に返ってしまったって…」
橋本「それめっちゃある。俺も前にUKFCっていうUK PROJECTのでっかいイベントとかでワーキャー言われた後に自分で運転して帰ってて。駐車場からぼろい自転車で帰ってく道中、すごい思った」
宮田「我に返るタイム(笑)」
橋本「さっきまであんなにワーキャー言われてたのに、駐車場から自転車で家帰ってるんだって」
宮田「隙間埋めて!(笑)」
橋本「あれ結構きつかったな。車、良くないっすね(笑)」
宮田「メンバーがスヤスヤ寝てるわけですよ。でもね、メンバーにね、ちゃんといい思いをさせてあげたいんすよ。いい景色を見せたい」
橋本「たしかに、それめっちゃ思うね」
宮田「バンドなんて僕のワガママですからね結局。ワガママについてきてくれる二人が絶対あの二人しかいないから、バンドやる意義があると思うし、ちゃんといい景色を見せたい」
橋本「まあ(メンバーが)変わったら変わったでまた面白くなるけどね」
宮田「いやあ森ちゃんと須永くんはいないよ」
須田「The Whoopsは本当にキャラがちゃんと立ってるから」
宮田「ありがたいっすよ本当、奇跡だと思いますよ。2代目っすけどね」
橋本「まあそうね」
須田「そうなんや」
宮田「2代目っす。初期メンバーじゃないっす。初期メンバーが抜けた時に僕が薫くんのバンドに入ったんすね。その後に森ちゃんが入って、もう1回ちゃんとやろうかなって思って薫くんのバンドを抜けたんすけど」
橋本「辞められちゃいました」
宮田「あの時はすまんかった(笑)2代目であんな初期メンバーですけど感出せる人そういないっすよ」
須田「すごいよね森ちゃんはね」
宮田「The Whoopsは本当に好意のある人間が集まって支えてきてもらったバンドなんで、その人たちにお礼をしたいっていうか。ちゃんと売れて返したいっすね」
藤澤「エモいな~」
宮田「マジな話マジな話。絶対酔ってないと言わないですよ」
藤澤「この間『春について』のMVできた後、The Whoopsの過去PVを観返してたんだけどさ、森ちゃんとか見た目がまだ超子供で(笑)今の話聞いたら胸張りさけそうだわ」
全員「アッハッハッハ(笑)」
藤澤「むしろ一人の女の子の思春期奪ったみたいな。どこにでもいるやんちゃなね、キッズだったんですよ」
-- 会社員であることを公表している話
橋本「バンドマンが苦しい話が出たところで、須田さんも宮田も社会人やりながらバンドやってるの公表してますよね?」
宮田「僕は公表してなかったっすけどね。みんなが勝手に言うから」
藤澤「あ、公表してないんだ!」
宮田「別に自分から言ったことはそんなになくて、みんなは僕が公表してないこと知らないから笑」
宮田「ナードは言ってもいいかなって思ったきっかけとかってあるんすか?」
須田「え~いや、どうやろ。最初っからこんなかんじやけど(笑)」
橋本「元々音楽だけでやっていきたいぜーってスタンスではなかったんですか?」
須田「昔はそうやったし、今もちゃんと売れたいとは思ってるけど。そこで追い詰められすぎてブレるよりは、ちゃんと生活基盤固めた上でやった方が良いかなって。俺1回仕事辞めて6カ月無職やった時にブレそうになって、怖くなっちゃって。それで再就職しようって思って」
宮田「『就職してるんだ』みたいな、『音楽一生懸命やる気ないのね』みたいな空気感とかあったと思うんすよ、数年前まであって。それを僕はナードマグネットが打開したと思って」
橋本「あるね」
宮田「僕の同世代のバンドとかも就職してバンドやるって言う人たちが増えてるし、それって間違ったことじゃないんだなっていうのはめっちゃ希望だと思うんすよ」
須田「なんで真剣に音楽やってるやつは貧乏であらないけないのかっていう話ですよ。ムカつくやんか普通に(笑)なんで食えてないのってみんな」
宮田「みんな音楽辞める理由が、金がないからとかってなるじゃないすか」
須田「そうそう。それやったら普通に別で金稼いでやれよって。そのなんかなぁ、やりがい搾取みたいな感じがすごいムカつく」
橋本「あははは(笑)」
宮田「その人の適性があると思うから、どういう仕事をして音楽をやっててもいいとは思うんすけど、自分的にはお金ないとかって一番精神的に病むじゃないですか、何してても楽しくなくなっちゃったりするし。意外とちゃんと決まった時間働くっていう状況の方がスケジュールもたてられたりして、結果良かったかなって」
橋本「理にはかなってるよね」
須田「やっぱり本当に、貧すれば鈍するだと思うんですよ。今の日本の状況がそんな感じっていうか、日本の社会の状況が。みんなちょっと追い詰められてるというか、ミュージックの中でもそうなってしまったら本当に良くないし」
宮田「『就職しながらバンドやる=一種の諦め感』みたいなのが感覚としてあったと思うんですよね。週末バンドマンみたいな感じで、売れても売れなくても趣味として一生懸命やりたいみたいな感じだったのを、ナードマグネットが変えてるっていうか。俺たちもナードマグネットみたいになれるかもしれないっていう。僕的にはすごい希望だと思ってて。ナードと同じスケジュールこなせるかって言われたらそこはかなり難しいとは思うんですけど、でもそれが結構僕の中では精神的支柱になってるとめっちゃ思いますね。1個気にしなくてもいいことが増えたというか、自分の中で引っかかってたものが別にいいじゃんって、本当は自分自身の中でそれを変えていくべきなのかもしれないですけど、ナードマグネットのおかげで気持ち的に楽になったところはあります。とりあえず森ちゃんがアメトーク出るまでは頑張んなきゃ」
須田「方向性が(笑)」
宮田「タモリ?楽部出てほしい」
藤澤「ちょっと見えるね(笑)」
──終わりに
橋本「ぼちぼち締める方向でまとめますか。今の時代ってすごく裸の王様みたいな状況だなって僕はずっと思ってて」
宮田「いいワードですね」
橋本「なんかよくわからない得体のしれないものが良いと言ってるものを良いものとして受け入れているというか。さっきの『君の好きな歌そんな好きじゃない』につながるんだけど」
宮田「それね~、俺の歌やんって思った。MVとかももうね」
橋本「自分で自分のことも分かんなくなってきてるというか。そういった状況の中でこの2バンドどっちも、音がめちゃくちゃ新しいって訳でもないけど良いものとして提示して。かといってそれが押しつけがましい訳でもなく、こういう良いものもあるよって提示してくれるのがすごく今の時代にとって希望だなって思ってます。だからこの2バンドが同じレーベルの括りでやってることっていうのがすごく意味のあることだと思うし、このスタンスで今後もやっていただけると、日本の音楽の希望になるのではないかと、僭越ながら」
須田・宮田「ありがとうございます」
宮田「やっぱ嬉しいっすね、THISTIMEでやれることになって。いろんなバンドの対バンとかで箱にいるバンド全員見た時に、僕らだけ無課金ユーザーみたいな感じで(笑)誰も事務所も何も付いてないみたいな感じで、僕らだけパンイチみたいな状態が本当にずっと続いてて、レーベルから声がかかるとか事務所から声がかかるとかっていう経験がマジで一切なんもなくて。そういうのがないと周りに置いてかれてる感覚の中でどんどん腐ってしまって、これからどうすんだろうって時に新しい兆しができたし、ナードマグネット好きだったから一緒にできる環境とか、誰かが一緒にやってくれるチームとかっていうのがThe Whoopsにとっては新しいし。メンバーがいろんな展開とかプロモーションをしてくれてることに対して『いろいろやってくれてありがとう』って言ってるのを聞いて、僕はすごく胸が熱くなるというか。頑張りたいんすよね、すごく。レーベルにもそうだし、今まで応援してくれた人にも返せる環境を作りたいなって思いますね。これ締めっぽくないすか?」
橋本「いい話だね。じゃあこの2バンドで今後やってみたいことってあったりしますか?宮田の方がありそうな気はするけど」
宮田「僕ナードの曲やりたいっすね」
須田「お!」
宮田「弾き語りやったりとかしてますけど、普通にバンドで録りたいなって。ただキーは下げますけど(笑)「アフタースクール」
とか1音半下げてますから(笑)」
須田「あはは(笑)」
橋本「1音半ってすごい、俺でもわかるわ(笑)」
宮田「すごいやりたいっすね」
須田「やろや、じゃあおれもやろ」
宮田「「花と街」
やってくれるんすか」
須田「やるわ。俺カバーしたことあるし弾き語りで」
宮田「嬉しい」
須田「ほんま、同じ傘下に入る前から好きやったからね。こうやって一緒にやれるのは嬉しい」
宮田「ありがとうございます。龍ちゃん※④ありがとう!」
須田「ほんとにね、悪ふざけだけが取り柄みたいなね我々なんでちょっとね。一緒に悪ふざけしたいね」
橋本「いいっすね」
宮田「たしかにやりたい」
橋本「ありそうで意外とないっすからね。そこは僕も期待したいところではありますね」
宮田「森ちゃん喜ぶと思うよ~」
橋本「一緒に悪ふざけをしていくレーベルメイトという事で、こんな感じですかね!」
宮田「楽しかった!」
橋本「ありがとうございました!」
須田「ありがとうございました!」
須田亮太(ナードマグネット) - 花と街(The Whoops COVER)
宮田翔平(The Whoops) - Mixtape(ナードマグネット COVER)
脚注
※① Fender社の低価格ブランド
※②稲葉 Helsinki Lambda ClubのBa担当
※③藤澤 THISTIME代表
※④龍ノ平HUNGRY OVER RECORDSレーベルヘッド
ナードマグネット
「だいそうさくツアー」
宮城 9/22(日) 仙台enn 3rd
埼玉 9/23(祝月) 北浦和KYARA
北海道 9/28(土) 札幌SPIRITUAL LOUNGE
愛知 10/6(日) 名古屋R.A.D (SOLD OUT)
福岡 10/19(土) 福岡graf
岡山 10/22(祝火) 岡山ペパーランド
大阪 11/3(日) 心斎橋BIGCAT
The Whoops
「遅れてた Time Machine TOUR」
ツアーファイナル
9/20(金) 下北沢BASEMENTBAR(※ワンマン)
OPEN 19:00 START 19:30
前売り¥2800(+1D) 当日¥3300(+1D)
タグ : J-インディーズ
掲載: 2019年09月19日 12:00