WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.48
ソニー・クリス『アップ・アップ・アンド・アウェイ』(1967)
ソニー・クリス(as)
タル・ファーロウ(g)
シダー・ウォルトン(p)
ボブ・クランショウ(b)
レニー・マクブラウン(ds)
1967年8月18日、ニュージャージーにて録音
曲目:
01.アップ・アップ・アンド・アウェイ
02.柳よ泣いておくれ
03.ジス・イズ・フォー・ベニー
04.サニー
05.スクラップル・フロム・ジ・アップル
06.パリス・ブルース
【アルバム紹介】
1.チャーリー・パーカー直系のアルト・サックス奏者ソニー・クリス
2.当時リアルタイムのR&Bヒットを2曲カヴァー
3.ギタリストを入れたクインテット編成で聴かせる見事なブロウ
“クリス”という名前が共通になりますが、前回のクリス・コナーは女性シンガー、今回はファミリー・ネームが“クリス”さんであるアルト・サックス奏者ソニー・クリスの60年代後半の人気作です。
ソニー・クリスはチャーリー・パーカー直系のアルト・プレイヤーとしてジャズ・ファンにはよく知られていた人で、そのプレイ・スタイルは王道のビバップ・スタイルを消化した、非常に明快なものです。 それゆえ、レパートリーもバリバリのビバップ・ナンバー主体かと思いきや、本作に関しては当時のポップ・ヒット・カヴァーをやっているのが特徴です。このタイトルをご覧になって、そこに気づかれた方はR&Bにも詳しい方ですね。
タイトル曲は、フィフス・ディメンションの1967年のヒット、4曲目も1966年のボビー・へブのヒット・ソングという2曲のR&B名曲のカヴァーを収録しています。その他はジャズ・スタンダード“柳よ泣いておくれ”、パーカーや自身のオリジナルを聴かせています。
編成としてはワン・ホーンのクインテットというべきもので、メンバーはピアノがシダー・ウォルトン、ギターのタル・ファーロウ、ベースのボブ・クランショウ、ドラムスのレニー・マクブラウンという顔ぶれ。この中で、ギターのタル・ファーロウは60年代は半ばは引退状態にあったプレイヤーだけに、本作は彼の数少ない60年代のレコーディング音源の一つとなっています。
全編にわたって、ソニー・クリスのビバップ然としたプレイは圧巻で、ポップ・カヴァーがあろうが、スイング、ジャズ・ワルツ、ブルース、どんな曲調でも、あざやかなフレージングでブロウしまくっており、聴きごたえのあるアルト・サックスに魅了されます。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
サックスで聴かせるR&B名曲“アップ・アップ・アンド・アウェイ”。
60年代の後半になると、ビートルズのジャズ・カヴァーをレコーディングしているミュージシャンは多いですが、こういう当時のリアルタイムのR&Bカヴァーは少々珍しくもあります。この曲は原曲もすごくいい曲ですが、このソニー・クリスのバージョンもラテン・フレイヴァーが漂うリズムに乗せて軽やかにメロディを歌い上げています。ソニー・クリスの最初のソロの後、ピアノのシダー・ウォルトンのソロも軽快で、ウォルトンは60年代はアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズのメンバーとして活躍し、このソニー・クリスのアルバムのレコーディングの一ヶ月前に、デビュー作『シダー!』(現在廃盤)を録音しており、この時まさに勢いにのった気鋭のピアニストゆえ、非常にいいプレイを展開しています。
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タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2019年10月18日 12:00