WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.54
ドン・フリードマン『サークル・ワルツ』(1962)
ドン・フリードマン(p)
チャック・イスラエル(b)
ピート・ラロカ(ds)
1962年5月14日 ニューヨークで録音
曲目:
01.サークル・ワルツ
02.シーズ・ブリーズ
03.アイ・ヒア・ア・ラプソディ
04.イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ
05.ラヴズ・パーティング
06.ソー・イン・ラヴ
07.モーズ・ピヴォティング
【アルバム紹介】
1.“エヴァンス派”のピアニスト、ドン・フリードマン
2.美しき自作曲“サークル・ワルツ”
3.ビル・エヴァンスとの共通要素
前回はビル・エヴァンス&ジム・ホールのピアノ&ギターによる傑作をご紹介しました。ビル・エヴァンスといえばその繊細かつリリカルなタッチで、沈思したようなフレージングや柔らかいハーモニーによるプレイを得意とするピアニストですが、そんなスタイルは“エヴァンス派”と呼ばれました。その一人として名を知られていたのが今回のドン・フリードマンです。
本作はフリードマンにとってリヴァーサイド・レーベルでの2枚目のリーダー作でピアノ・トリオ編成による代表作です。取り上げた楽曲は、スタンダード3曲を除きすべて自身のオリジナル曲になっています。どの曲でも“エヴァンス派”の名に恥じない、リリカルなピアノを聴かせます。 まずは代表曲であり、タイトル曲でもある1曲目の“サークル・ワルツ”から深いハーモニーを取り込んだ、センス抜群のピアノを聴かせでおり、時に流麗なフレージングをおりまぜたソロのアプローチは素晴らしいものがあります。 スタンダード曲は“アイ・ヒア・ア・ラプソディ”“イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ”“ソー・イン・ラヴ”といったロマンティック・チューンとなっており、独自の世界観で聴かせます。そのうちコール・ポーター作曲の“ソー・イン・ラヴ”はソロ・ピアノでの演奏となっており、フリードマンの持ち味が十分伝わってきます。
“エヴァンス派”と呼ばれただけに、意図的ではないにしろ、フリードマンはビル・エヴァンスとの共通要素がいろいろな点で感じられるピアニストでもありました。
例えば本作を含む最初の4枚のリーダー・アルバムが、ビル・エヴァンスの代表作群とおなじリヴァーサイド・レーベルからのリリースであること、そのデビュー作とその次にあたる本作ではベーシストが、エヴァンス・トリオのチャック・イスラエルであること、そしてビル・エヴァンスの名曲 が“ワルツ・フォー・デビイ”ならば、フリードマンは“サークル・ワルツ”という、代表曲がワルツであること。
そういうところから、音楽性だけでない何かがつながっているような気もしてきます。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
耽美的なジャズ・ワルツ名曲“サークル・ワルツ”。
最初この曲を聴いた時、とても不思議な印象を持ちました。イントロもなく、ブラシワークのバックの上でテーマ・メロディがいきなり始まります。それからすぐにやんわりとしたブレークが連続、一瞬曲が止まるかな、と思えるのですが、また何事もなかったようにテンポが戻り、曲が続いていく、という。
テーマは短く、その後、ピアノがリズムの上を静謐な雰囲気をたたえて音を繋ぎ、ボトムではベースのチャック・イスラエルがソロを聴かせ、曲が3分を過ぎたところから、ドラムスのピート・ラロカがブラシからスティックに持ち替え、ピアノ・ソロとなり、フリードマンがより美しく情熱的なプレイを展開してゆきます。
強いメロディで出来ている曲というより、ゆるやかなワルツの上を漂うように断片的なメロディが舞うような、そんな1曲です。
SHM-CD国内盤(一般普及盤)
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2019年11月29日 10:00