WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.66
J.J.ジョンソン『ダイアルJ.J.5』(1957)
J.J.ジョンソン(tb)
ボビー・ジャスパー(ts,fl)
トミー・フラナガン(p)
ウィルバー・リトル(b)
エルヴィン・ジョーンズ(ds)
1957年1月29日、31日、5月14日、ニューヨークにて録音
曲目:
01.ティー・ポット
02.バルバドス
03.イン・ア・リトル・プロヴィンシャル・タウン
04.セッテ・チョーズ
05.ブルー・ヘイズ
06.ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ
07.ソー・ソーリー・プリーズ
08.イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー
09.バード・ソング
10.オールド・デヴィル・ムーン
【アルバム紹介】
1.トロンボーンで高速フレージングを可能にしたJ.J.ジョンソン
2.バックにはジャズ名盤『オーヴァーシーズ』のトリオが参加
3.収録曲はオリジナル、パーカー、マイルス、そしてジャズ・スタンダードと充実
前回ご紹介のカーメン・マクレエのアルバム『アフター・グロウ』はバックがレイ・ブライアントのトリオがそっくりそのまま参加した一作でした。
今回のこのJ.J.ジョンソンのアルバムはトミー・フラナガンのトリオ、しかもジャズ・ファンの間では名高い傑作『オーヴァーシーズ』(WEEKEND JAZZ Vol.39参照)のトリオのメンバーが参加した一作です。
J.J.ジョンソンはモダン・ジャズ期のトロンボーン奏者としては信じられないテクニックの持ち主でした。トロンボーンという楽器は構造的にスライドを使用するため、音程も不安定ゆえ、ビバップのような高速のテンポでの細かいフレージングには向かない、と誰もが思っていましたが、J.J.ジョンソンはそれを見事に可能にしたプレイヤーです。本作はその驚異のプレイ・スタイルが楽しめる一作です。
50年代の半ばにトロンボーン奏者カイ・ウィンディングとの双頭コンボで一世風靡しましたが、その解散後にテナー・サックス&フルートのボビー・ジャスパーと、ピアノのトミー・フラナガン、ベースのウィルバー・リトル、ドラムスのエルヴィン・ジョーンズというニュー・クインテットで本作をレコーディングしました。この同じメンバーで北欧のツアーに出かけた際、現地のレーベルがストックホルムでトミー・フラナガンのトリオでレコーディングを行ったものが先述の『オーヴァーシーズ』というわけです。
本作に収録されている楽曲はジョンソン自身もしくはジャスパーのオリジナルの他、チャーリー・パーカーやマイルス・デイヴィス、そしてスタンダード曲を取り上げており、ジョンソンのプレイはもちろん各プレイヤーの並みならぬソロがたっぷり聴けます。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
J.J.ジョンソンのオリジナル “ティー・ポット”。
プレイヤーとしてはもちろん、コンポーザーとしてもすぐれた存在だったJ.J.ジョンソンですが、本作では1曲目の“ティー・ポット”を提供しております。
曲の展開はコード進行を決めただけのジャム・セッション風な演奏という印象が残ります。
エルヴィン・ジョーンズの快速なシンバルワークによるドラムスで幕を開けるやいなや、ジョンソンのトロンボーンが軽快に吹き始めて曲はスタートします。最初からソロに突入し、技巧的なフレージングで圧倒してゆきます。その後、ジャスパーのテナー、フラナガンのピアノのソロが展開、そのあとにリフレインやメロディが現れ、そして最後にエルヴィンのドラム・ソロをはさみエンディングに向かいます。
続くチャーリー・パーカーの“バルバドス”も快演で飛ばしてゆきます。
トロンボーンという楽器の可能性を広げたJ.J.ジョンソンの偉業ともいうべきプレイをじっくり聴いてみてください。
国内盤(一般普及盤)
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2020年02月28日 10:00