N響のゲスト・コンサートマスターに就任した白井圭と伊藤恵が共演『シューマン ヴァイオリンとピアノのための作品集』
ソロ、室内楽、オーケストラと縦横無尽な活動を続ける白井 圭。その存在はヴァイオリニストの域を越え、<音楽のオールラウンダー>と称されるべきものです。
ウィーンを拠点にする白井ですが、2020年4月よりNHK交響楽団のゲスト・コンサートマスターに就任、日本での活動の幅をさらに拡げることとなりました。
伊藤 恵との初共演は2004年です。白井が藝大4年在学中、教授陣と学生による室内楽企画で、ドヴォルジャークのピアノ四重奏曲を共演したのが出会いでした。
「すでにその頃から『自分がどう弾くか』ということよりも、『音楽がどうあるべきか』をつねに考える姿勢が伺えました。その後も武生国際音楽祭などで共演を重ね、素晴らしいアンサンブルを作り出す姿を目にしてきましたが、いつか彼の独奏するヴァイオリン作品の世界を耳にしてみたいと願っていました」
(伊藤 恵)
時至ってのソロ・レコーディング、白井が選んだのはシューマン晩年の傑作群です。ヴァイオリンの低音域を開拓し、協奏的な内容の両ソナタを高名な「ロマンス」で彩り、“鳥の予言” により未来を紡ぐ---
スペシャリスト伊藤 恵との共演は、シューマンの奥義と《天性の音楽家》白井 圭の魅力を余すことなく伝えます。
(フォンテック)
【曲目】
ロベルト・シューマン(1810-1856)
ロマンス 第1番 イ短調 Op.94-1
ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ短調 Op.105
ロマンス 第2番 イ長調 Op.94-2
ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ短調 Op.121
ロマンス 第3番 イ短調 Op.94-3
予言の鳥 Op.82-7(「森の情景」より アウアー編)
白井 圭 (ヴァイオリン) 伊藤 恵 (ピアノ)
【演奏】
白井 圭 (ヴァイオリン)
伊藤 恵 (ピアノ)
【録音】
2019年12月25-27日 三芳町文化会館 コピスみよし
白井 圭(Kei Shirai)
1983年トリニダード・トバゴ共和国に生まれる。3歳より庭野冬子氏にヴァイオリンの手ほどきを受ける。その後、天江光雄氏を経て、6歳より徳永二男氏の薫陶を受ける。東京芸術大学付属高校、同大学を卒業。その間、大谷康子、田中千香士、堀正文の各氏に主にヴァイオリンを、ゴールドベルク山根美代子、山崎伸子、鈴木秀美、若松夏美の各氏には室内楽および、古楽奏法を師事。在学中は、「明治安田クオリティオブライフ文化財団」より奨学金を受ける。2007年「文化庁新進芸術家海外研修制度」の奨学生として留学。ウィーン国立音楽演劇大学室内楽科にてヨハネス・マイスル氏に師事する他、ヴェスナ・スタンコービッチ氏の指導も受ける。またECMA(ヨーロッパ室内楽アカデミー) の受講メンバーとして、アヴォ・クュムジャン、ハット・バイエルレ諸氏の影響を受ける。
これまでに全日本学生音楽コンクール中学校の部第1位(1997)、日本音楽コンクール第2位及び増沢賞(2001)、ARDミュンヘン国際コンクール第2位及び聴衆賞(2009)、ハイドン国際室内楽コンクール第1位及び聴衆賞(2015)を始めとしたコンクールで受賞歴をもち、ソリストとしてチェコ・フィルハーモニー管弦楽団、ミュンヘン室内管弦楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、神戸市室内合奏団などと共演。ウィーン楽友協会や、ウィグモアホール(ロンドン)、コンツェルトハウス(ベルリン)等で演奏。2011年9月より半年間、ウィーン国立歌劇場管弦楽団及びウィーン・フィルの契約団員として著名な指揮者の下で演奏した他、チェコフィルや、ドイツの放送響のゲストコンサートマスターも務める。2018年まで約5年間、神戸市室内合奏団(旧称)のコンサートマスターとして活躍。また、岐阜県中津川市加子母で毎年行われる「田中千香士音楽祭」では恩師の後を受けて、2010年より指揮者を務めている。
現在も拠点をウィーンに置き、ヨーロッパではピアノのSibila Konstantinova、チェロのTristan Cornutと組んだシュテファン・ツヴァイク・トリオ、また南西ドイツ放送交響楽団のメンバーを中心とした弦管混合アンサンブルのルトヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズとして活動。日本においては東京芸大在学中に結成した、ピアノの津田裕也、チェロの門脇大樹とのトリオ・アコードの活動も近年再開された。セイジ・オザワ松本フェスティバル、木曽音楽祭、武生国際音楽祭などの音楽祭などに出演する他、幅広い活動を展開している。
Trio Accord、Stefan Zweig Trio、Ludwig Chamber Playersのメンバー。レボリューション・アンサンブル音楽監督。2020年4月にNHK交響楽団のゲスト・コンサートマスターに就任。
伊藤 恵 (Kei Itoh)
々の国際コンクールに入賞。1983年には第32回ミュンヘン国際コンクールで優勝(ピアノ部門日本人初)。同年、サヴァリッシュ指揮バイエルン国立歌劇場管弦楽団と共演。ミュンヘンでのデビューを飾る。1984年NHK交響楽団との共演により、日本での本格的な演奏活動を開始する。
最も敬愛し、その演奏をライフ・ワークとするシューマンのピアノ作品全曲CDシリーズ「シューマニアーナ」を1988 年よりリリースを開始。1990年9月の八ケ岳高原音楽祭では、5人のピアニスト(ヤブウォンスキー、ヴィルサラーゼ、伊藤、ラーンキ、ブーニン)によるモーツァルトのソナタ全曲演奏会に出演。1993年10月にはキタエンコ指揮フランクフルト放送響の定期演奏会に出演。また、その後の日本ツアーに同行し、ブラームスの協奏曲を各地で演奏する。同年、日本ショパン協会賞を受賞。1994年4月キタエンコ指揮ベルン響の定期演奏会に招かれ、リストの2番のコンチェルトを演奏。同年、横浜市文化賞奨励賞受賞。1999年より8年連続リサイタル「春をはこぶコンサート」を開催。2003年11月、フルネ指揮チェコ・フィル定期でラヴェルを演奏。その後の日本ソアーでも共演する。2005年12 月、2日に渡りおこなわれたジャン・フルネ引退公演で、モーツァルトK.491を共演。6月、N響定期で、準・メルクルとクララ・シューマンの協奏曲を演奏、「ベストソリスト」ランキングに入る。2007年「シューマニアーナ」シリーズ完成。記念コンサートをおこなう。2008年から2015 年まで、シューベルト作品を中心とする8回の「新・春をはこぶコンサート」を開催。同時にCDシリーズ「シューベルト ピアノ作品集」6タイトルをリリースする。その第6集は、第53 回レコード・アカデミー賞および第70回文化庁芸術祭賞を受賞した。また、ヴァイオリニスト岡崎慶輔と共演したCD「Duo 5」は、第54回レコードアカデミー賞を受賞。これまでに、バイエルン放送響、南西ドイソ放送響、ベルリン放送響、ワルシャワ・フィルなど数多くの海外オーケストラ、そして日本の各オーケストラの定期公演に出演している。ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン、サイトウキネンフェスティバル、武生国際音楽祭、小布施音楽祭、リゾナーレ音楽祭等に出演。1996年より2年間NHK-FM 「おしゃべりクラシック」のパーソナリティを渡辺徹とともにつとめる。現在、東京藝術大学教授、桐朋学園大学特任教授。
三大ソナタへ踏み入れる《第30番》、《幻想曲風ソナタ》として現在の耳にも新鮮な書法を駆使した作品27の連作、佳作ヴァリエーションの4曲を収録。
3曲のソナタは、共通する構造と密接な調性で結ばれています。そして、ベートーヴェン自ら「全く新しい手法」による作品した《6つの変奏曲》は、《第30番》終楽章変奏の先駆けと称すべき作品です。
前作に続き、本盤でも伊藤が選んだ楽器はファツィオリです。豊潤な低音を基に、大理石のような質感の響きが空間に拡がります。
すべての瞬間に細やかなニュアンスを聴かせる伊藤の演奏は、ベートーヴェンの音楽に新たな光を見出します。
2020年はベートーヴェン生誕250周年のメモリアルイヤーです。人類史上に燦然とその名を刻む偉大な作曲家へ思いを馳せるにふさわしい1枚となりました。ぜひお聴きください。
【曲目】
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1821)
ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 Op.109
ピアノ・ソナタ 第13番 変ホ長調 Op.27-1《幻想曲風ソナタ》
ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 Op.27-2《幻想曲風ソナタ》(月光)
6つの変奏曲 ヘ長調 Op.34
【演奏】
伊藤 恵(ピアノ)
【録音】
2019年8月27-29日 北上市文化交流センター さくらホール
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2020年05月18日 00:00