映画ファンにお勧め、今、入手可能な映画音楽名作特集
エンニオ・モリコーネ、ジョルジュ・ドルリュー、ジェリー・ゴールドスミス、ジョン・ウィリアムス他、不動の人気を誇る巨匠を中心に、まさに映画音楽、のドラマチックさを楽しめるサウンドトラックから、現在CDで入手可能なものをピックアップ。名盤ばかり。限定盤多数のため、お求めは、お早めに。
『天国の日々』(音楽 エンニオ・モリコーネ)
20世紀初めのアメリカの農場を舞台に、農場主の余命が少ないことを知った農夫が貧しさから逃れるために、自分の恋人を結婚相手として差し出す人間ドラマを置きながら、あまりにも絵画的に美しい映像の中に描き出す奇跡的叙事詩。監督は、本作で天才監督の名を確定したテレンス・マリック。本作のみマリック作品に音楽をつけたエンニオ・モリコーネの音楽も神々しい。物語のメインメロディ的な、サン・サーンス「動物の謝肉祭」の「水族館」の変奏もしくは延長線上につづられるモリコーネ作曲のメインテーマや、スコアの数々。優しく美しいが、どこか突き放した厳しさを感じさせるメロディを奏でるストリングス。今回のFSM盤は、オリジナルLP用のマスターと、大量に録音されながら、ごく一部しかLP収録にならなかったモリコーネの音源を、DISC1の後半とDISC2であわせて約100分もの収録。
『オルカ』(音楽 エンニオ・モリコーネ)
誤って、身ごもったメスシャチを殺してしまった漁師。復讐に燃えたオスシャチが、漁師の住む港町を襲撃し、漁師は北の海での一対一の勝負を強いられる…・『キングコング』をヒットさせた大プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスが次に放ったパニック映画・海洋編。監督は『2300年未来への旅』のマイケル・アンダーソン、主役の漁師を演じるのは『カサンドラ・クロス』のリチャード・ハリス。音楽はエンニオ・モリコーネ。悲しさと海の大らかさが融合した美しくスケールの大きなメインテーマは名曲。コミカルなナンバーや、ソース・ミュージックとしてのラウンジ・サウンドなど、カラフルに楽しめる部分もあり。モリコーネ・ファンのみならず、スペクタクル・サントラ・ファンにも人気の名盤。
『ある夕食のテーブル』(音楽 エンニオ・モリコーネ)
ほぼ全音楽ファン必聴の、エンニオ・モリコーネのラウンジ系 サントラの名盤中の名盤が、貴重な録音を追加して、登場!! あまりにも有名なボッサのテーマ・メロディ、エッダの甘い スキャット、さわやかだがエロい、美しいモリコーネ・メロディの 名曲が、一作のサントラなのに、次から次へと登場する、この すごさ。ファンには、驚愕は、10曲目に収録されている テーマの「アンカット・バージョン」。そう、あの曲には、まだ 続きがあったのです。イージーリスニングでありながらディープ な世界に誘う、歴史的傑作。大おすすめ。
『ベストフレンズ』(音楽 ジョルジュ・ドルリュー)
1959年から81年まで。22年間のふたりの現代女性の友情を描くドラマ。この映画の企画者でもあったビセットがトリュフォーに相談し、女性映画の巨匠ジョージ・キューカーを、引退中だったところを口説いて実現。という経緯の為、本作の音楽をドルリューが担当して名編のひとつになった理由も納得。哀しさと希望が同居するメロディを、まさにドルリュー節のストリングス・アレンジで聴かせます。中でもテーマ・メロディは有名。過去、ドルリューのユニバーサル・フランスのボックスで一度収録されましたが、フルは初。ごゆっくりお楽しみ下さい。 そして、豪華なことに、このカップリング盤、後半は『ONE IS A LONELY NUMBER』(1972/音楽 ミシェル・ルグラン/監督 メル・スチュアート/主演 トリッシュ・バン・ディーバー、モンテ・マーカム、ジャネット・リー)突然、夫がいなくなった女性の心の惑いを描く、日本未公開作品。監督は『火曜ならベルギーよ』のメル・スチュアート。音楽はルグラン。いかにもルグラン節炸裂の遊び満点の芳醇なオーケストラのメインタイトル、ジャズ・ロック調の”ソース・ロック""、18曲目には、ルグラン自身がジャズ・ボサ調で歌うムードたっぷりの「太陽、海、そして船」も収録、ほかも、ルグランならではの遊び満点オーケストラ劇伴いっぱいで、美しいオーケストラ・サントラ・ファン必聴の一枚となりました。
『大列車強盗』(音楽 ジェリー・ゴールドスミス)
1855年。ロンドンからフォークトンまで、軍資金である金塊を積んだ列車からの、数々もの挑戦者たちが失敗した強奪作戦。を原作者でもあるマイケル・クライトン自身が監督、音楽はもちろん盟友ゴールドスミス、そしてキャストも、彼らと気心の知れたやんちゃな名優たちが揃っての、大人の余裕の娯楽アクション・スペクタクル。70年代までのゴールドスミス作品の中でも、陽気に楽しく豪快な作風としての代表作としての人気を確立。今回、イントラーダの限定なしのシリーズでピックアップ。1枚目の「DEAD WILLY」他、作品中の重要曲でありつつも今回初収録となる貴重音源もふんだんでゴールドスミス・ファン、アクション・スコア・ファンは要注目。
『オーメン』(音楽 ジェリー・ゴールドスミス)
外交官が妻には我が子と偽り、もらい受けた子供、ダミアンをめぐり起こる、謎の怪死事件。外交官は、ダミアンの秘密を知るが…。『エクソシスト』とならび、世界的にオカルト映画ブームを起こすきっかけとなった名作スリラー。音楽を担当したジェリー・ゴールドスミスは本作でアカデミー賞作曲賞を受賞。有名な恐ろしくもキャッチーなコーラス曲「アベ・サターニ」、あまりにも美しい「新任大使のテーマ」を軸に、サスペンスシーンでのコーラスの活用、ストリングスの清々しい音色で、ホラー・スコアでおさまらない繊細なドラマ性を感じ取らせるオーケストラ・スコア職人の一級品。
『リーインカーネーション』(音楽 ジェリー・ゴールドスミス)
自身の前世の具体的記憶をたどるうち、身の危険にさらされていく青年を描いたホラー・ミステリー。『オードリー・ローズ』と並び、この主題を描き、カルトな人気を確立する本作は、ジェリー・ゴールドスミスのミステリアスなスコアの力も甚大だ。数少ないフレーズで恐怖のイメージを固定させるメインメロディを軸に、独特のオーケストラ・サウンドに、その後の聴かせ方ではなく、神秘な表現としてのシンセサイザーの音色の大幅導入など、お馴染みのテイストに実験音楽要素も加味する、興味つきないサウンド。
『エアポート'77』(音楽 ジョン・カカヴァス)『エアポート'80』(音楽 ラロ・シフリン)
公開当時は、サウンドトラック盤が発売されなかった、スリリングかつメロディアスなサウンドで展開するパニック映画ヒット作2作のカップリング!『エアポート'77』は、ハリウッドの至宝級俳優たちが、美術品も載せた富豪のプライベート・ジェットの乗客として登場。ハイジャックされた機はバミューダ海域に落下!海底からの決死の救助活動が描かれる。パニック映画サントラの金字塔『エアポート'75』で充実のキャッチーなサスペンス・スコアを聴かせた、テレビドラマ・シーンの職人、ジョン・カカヴァスが再登板、<75>の続編を思わせる重厚なメロディで、大人のパニック映画スコアを聴かせる。そして、一転して、当時のフランス航空界の華、コンコルドが謎の何者かに攻撃される『エアポート'80』は、御大ラロ・シフリンが登板、アラン・ドロン、シルヴィア・クリステルといった華やかなメンツのアドベンチャーを盛り上げるスピーディでゴージャスなテーマ。こちらは、ラウンジ的ナンバーなども用意し、60年代アクション的な遊びも聴かせて往年のシフリン・サウンド的に楽しめる。70年代、アクション/スペクタクル・スコア・ファン必聴タイトル!
『コンコルド』(音楽 ステルヴィオ・チプリアーニ)
『テンタクルズ』『殺人魚フライングキラー』と並ぶ、サロン・ミュージック・サントラのマエストロ、ステルヴィオ・チプリアーニのパニック・サスペンスにおけるイージーリスニング盤。カリブ海に消えたコンコルドの謎と、カギを握るスチュワーデス。次なる事故を阻止するべく奔走する記者の活躍。そんな大型サスペンスながら、悲しくも美しくアコースティックに盛り上がるメインメロディ、『テンタクルズ』的アレンジの延長線上のモンドながらロマンティックなライト・フュージョンなサブテーマを中心に、サスペンスというよりも、繊細な海洋ロマンといった趣のサロン・サントラ名作。
『ビッグ・マグナム'77』(音楽 アルマンド・トロヴァヨーリ)
妹の謎の死を追い、刑事の兄のマグナムが火を 吹き、壮絶なカーチェイスが繰り広げられる!! トロバヨーリの作品の中でも、最もハードボイルドな 作品と思われる、辛口フュージョン・タッチのサウンドが全編を漂う傑作。妹の名を冠した切なく美しく、心に残るメインタイトル、非情でハードなアクションを彩るグルーヴィながら丹精なナンバーなどを中心に、マウリツィオ やチプリアーニの刑事ものとも違うユニークで美しく切なく クールな世界を醸しだす。超名盤。
『愛のメモリー』(音楽 バーナード・ハーマン)
ブライアン・デ・パルマがヒッチコック『めまい』にオマージュを捧げたかのごとき、サスペンス・ミステリー・ロマンス。妻を衝撃的な事件で失ってしまった男の前に、妻と生き写しの娘が現れて。音楽は『悪魔のシスター』に続き、巨匠バーナード・ハーマンだが、本作製作年に、亡き人となった。妖しく、やわらかいがショッキングな展開も聴かせるオーケストラで、愛のテーマ的なワルツが殊にエレガントで美しい。様式美的な陶酔で楽しめる、これぞ映画音楽、的な傑作。
『ロゴパグ』(音楽 カルロ・ルスティケリ)
監督の名前の頭文字を合わせて映画のタイトルとした『ロゴパグ』。4つのエピソードからなるオムニバスだが、カルロ・ルスティケリの音楽はエピソードごとに作品を色づけするのではなく、全てにかかるツイストやジャズを用意。ひとくせもふたくせもある、悲しさが隠されつつ、寛げるナンバーをさらっと並べたという面白さ。
『午後の曳航』(音楽 ジョニー・マンデル)
三島由紀夫の原作を、舞台を英国の港町に置き換えて、脚本家のルイス・ジョン・カルリーノが監督。憧れのヒーローだった船員が、母と恋仲に。そして、少年たちの儀式が始まる……。音楽は、『いそしぎ』のジョニー・マンデルが、エレクトリック・ピアノとオーケストラを静かにアレンジし、ミステリアスな美しさを演出、そして主役も務めたクリス・クリストファーソン作曲によるテーマ曲「シー・ドリーム」は映画音楽ファンの記憶に残る甘美な名曲。美しいサントラをお探しのかたに。
『チャンプ』(音楽 デイヴ・グルーシン)
『ロミオとジュリエット』『ブラザー・サン、シスター・ムーン』の名匠、フランコ・ゼフィレッリが79年に発表した、こちらは親子の愛情を見せて涙を誘ったヒット作。マーヴィン・ハムリッシュ&キャロル・ベイヤー・セイガー作の主題歌「イフ・ユー・リメンバー・ミー」がまずストレートに感動を誘う名曲。スコアは、デイヴ・グルーシンのハートウォーム・サウンドで、優しいナンバーから、アップテンポのライト・フュージョンまで、コンテンポラリーな作り。ドラマを知る人間は、優しいメロディを聴けば聞くほど涙腺が刺激されるピュアな名盤。
『ポリー・マグーお前は誰だ ウィリアム・クライン作品集』(音楽 ミシェル・ルグラン、セルジュ・ゲンスプール、ミシェル・コロンビエ)
世界的フォトグラファー、ウィリアム・クラインが監督した映画作品3作のサントラ。『ポリー・マグー、お前は誰だ』は、ミシェル・ルグランが彼としてはメズラシイフォーク・スタイルのヴォーカルとバロック的なメロディによる不思議なサウンドを、『ミスター・フリーダム』はセルジュ・ゲンスブールとミシェル・コロンビエがゴーゴー、ロック・スタイル、『モデルカップル』はコロンビエが彼らしいジャズロックを。そして、この3作に通ずるのはサイケらしさとアヴァンギャルドさだ。
『嵐が丘』(1970)(音楽 ミシェル・ルグラン)
芳醇で美しいルグラン・サウンド。
エミリー・ブロンテの不朽の名作の1970年の映画化。 監督のロバート・フューストは、なんと後に『魔鬼雨』『聖女アフロディーテ』を撮る監督。クラシックな題材といえども、さまざまに美しいメロディを自在に遊ばせ、品のよさと冒険心を共に兼ね備えたオーケストラを 聴かせる、ルグランならではの幸福に満ちたサウンド。ストーリーは、愛憎に満ちた悲劇ながら、悲しいメロディで表現する、という技に出るわけではないのが ルグラン流だ。主題歌は、詞はバーグマン夫妻、歌はマイク・カーブ・コングリゲーション。豊かに感動できる、至福の映画音楽の一枚。
『溝の中の月』(1982)(音楽 ガブリエル・ヤレド)
『ディーバ』で世界的に注目された鬼才ジャン=ジャック・ベネックスが次作として仕上げたのが、探偵小説を原作としながらも、独自のポップな絵画の中に生きるキャラクターたちのような世界として描いた様式美的ラブ・サスペンス。音楽は『勝手に逃げろ/人生』の衝撃的なエレクトロ・スコアでデビューしたガブリエル・ヤレドが、のちの彼の代表的カラーとなる耽美さ全開のオーケストラと奇妙なエレクトロ・スコアを存分に聞かせ、映画音楽ファンも驚かせた。
『黒衣の花嫁』(1968)スコア新録音盤(音楽 バーナード・ハーマン)
フランソワ・トリュフォーが敬愛するヒッチコック映画のサスペンスにオマージュし、結婚式で夫を射殺され、復讐に燃えるヒロインにジャンヌ・モローを据えての犯罪ドラマ『黒衣の花嫁』。音楽はヒッチコック映画の音楽と言えば、のバーナード・ハーマンが招かれた。サントラのフル音源は未だ音盤化されていないこの名作、この度、フェルナンド・ベラスケスが指揮をとり、ハーマンのスコア新録音に挑んだ。ダイナミックでロマンティックでミステリアス。のちの、ハーマンがデパルマ映画に書いた『愛のメモリー』のロマンティックさも思い出されます。映画音楽スコアの醍醐味を堪能できる一枚。
『カリブの嵐』(音楽 ジョン・アディスン)
70年代サントラ・ファンには忘れられない冒険活劇 サントラの名盤。荒々しさが魅力のロバート・ショウと当時 最高潮のスクリーンの華ビュジョルドを思い出すもよし、 数年の沈黙を破って本作と『遠すぎた橋』(現在廃盤)の両傑作でサントラ・ファンの注目を浴びたベテラン、ジョン・アディスンの、70年代にしてちょっとオールドスタイルなアプローチが、だからいい、そのスタイルの娯楽アクションオーケストラ・サウンドを堪能。愛のテーマの美しさも特筆。 70年代サントラ・ファンには、言わずもがなの愛聴盤のひとつ。
『羊たちの沈黙』(音楽 ハワード・ショア)
シリアルキラーを描くサスペンススリラーの中でも、文学的風格さえ漂う、ジョナサン・デミ監督の『羊たちの沈黙』のスコアは、デヴィッド・クローネンバーグ監督作品のレギュラー・スタッフで、サイコスリラー『戦慄の絆』の仕事を終えたばかりのハワード・ショアが担当に。スリラーとはいえ、異様なクローネンバーグワールドが展開する諸作と異なり、ヒロイン・クラリスの心理に寄り添う、不安感漂い盛り上がるオーケストラ・スコアは、いい意味で70年代低予算サスペンス秀作でマイケル・スモール、ジェリー・フィールディングたちが聴かせてくれていたドライだが、まさしくフィルムスコアな醍醐味に満ちたサウンドの感がある。具体的なメロディを避けるかの展開も、息を継がせない。
『ハッスル』『ロンゲスト・ヤード』(音楽 フランク・デヴォル)
ロバート・アルドリッチ監督とバート・レイノルズのタッグ2本。音楽はともにフランク・デヴォル。『ハッスル』は敏腕刑事レイノルズと、高級娼婦ドヌーヴの恋愛ドラマと売春犯罪を巡るサスペンスを絡ませて展開、軽妙なフュージョン・ファンクなナンバーもあるが、中心は美しいイージーリスニング的テーマ。ムード音楽のアルバムも出しているデヴォルとしては、もうひとつの本職の本領発揮か。『ロンゲスト・ヤード』は、カントリー感が漂う人間臭いスコア。
『若者のすべて』(音楽 ニーノ・ロータ)
ドラマティックでユーモラスでクールなロータならではの世界。 『若者のすべて』(1960) サウンドトラック 音楽 ニーノ・ロータ 監督 ルキノ・ヴィスコンティ 主演 アラン・ドロン、レナート・サルバトーリ、 アニー・ジラルド、カティーナ・パクシー ミラノでボクサーの道を目指しながら、悪の道へ 引きずり込まれる青年を若きアラン・ドロンが演じる ヴィスコンティ監督1960年作。ヴィスコンティの青春 映画で、ニーノ・ロータの音楽。サロン・ミュージック的 ワルツなどの穏やかさと、モダンでハードボイルドな ジャズの香り、そしてロータらしいユーモラスなフレーズ の数々が心地良い。エリオ・マウロが情熱的に歌う 悲しげに美しい「PAESE MIO」も収録。ロータ+ドロンの 2年後の名作『太陽がいっぱい』とサウンド的に似た世界。
『シャーロック・ホームズの素敵な挑戦』(音楽 ジョン・アディスン)
パロディ版シャーロック・ホームズの名作『シャーロック・ホームズの素敵な挑戦』のサウンドトラックが、スペインの人気スコア専門レーベル、カルテットから限定リリース。
1976年作品、監督ハーバート・ロス、コナン・ドイルによるキャラクターをもとに、名ライター、ニコラス・メイヤーが原作・脚本を書き上げた。
音楽は、英国の格調高いスコアといえばのジョン・アディスン。『遠すぎた橋』『カリブの嵐』『探偵<スルース>』などの傑作でも知られるアディソンの真骨頂的作品!
『アタメ!』(音楽 エンニオ・モリコーネ)
前作『神経衰弱ぎりぎりの女たち』の世界的ヒットで一躍、国際的監督となったペドロ・アルモドバルが、前作まで組んでいたベルナルド・ボネッツィとかわり、エンニオ・モリコーネに依頼。一方的に愛に突進するアントニオ・バンデラス扮する青年が、結婚相手と決め込んだ娼婦を自宅のベッドに縛り付け、強引に「共同生活」を始めるが。
奇妙で危険でありながら、ハッピーエンドを迎える恋愛コメディに、モリコーネは『ある夕食のテーブル』や『金曜日の別荘で』のような、60年代後半から70年代前半のロマンティック・ドラマのサウンドを思い起こさせるようなメランコリックで愛らしいスコアを書き、ノスタルジーをも感じさせる。
『甘い生活』(音楽 ニーノ・ロータ)
フェリーニ監督、ロータ音楽の名作中の名作。聞きなれた、心地よいメロディ、テンポは軽いダンスステップも踏め、往年の映画音楽たる雰囲気を醸し出すも、このサウンドは、幾重にもの皮肉の壮大で冷静な視線を投げ掛けている。作家志望でローマにやって来たが、夢はどこかへ、ゴシップ記者として刹那的な日々をすごす主人公が見る、一見華やかな世界の裏の悲劇など。挿入曲としてラテンの名曲「パトリシア」も登場し、このラテン・ラウンジ的な一見気楽でキュートなメロディは、そのまま「甘い生活」のそれの源となっていることを感じさせるのだ。
『ある愛の詩』(音楽 フランシス・レイ)
最もオーソドックスな悲しい恋の物語の代表作といっていい、世界的大ヒット作。名門出の青年と、イタリア移民の娘の激しい恋の幸せの日々の後にやってくる、彼女の余命が幾ばくもないという通告……。エリック・シーガルのベストセラーを『美人泥棒』『ふたりの天使』のアーサー・ヒラーが監督、時のヒット・サントラメイカー、フランシス・レイに依頼。メロディメイカーのレイにとってもストレートに悲しくキャッチーな美しさがあふれる、今やスタンダードであるテーマ曲、こちらも有名なヴォカリーズを取り入れたサブテーマ「雪の中のたわむれ」はじめ、ソフトロック・インスト調にアレンジされたナンバーなど、時代を代表するサウンドトラックだ。
『無責任恋愛作戦』(音楽 フランシス・レイ)
フランシス・レイ、世界的大ヒットとなり一躍時の人となる『男と女』の翌年の、ハリウッド・コメディへの仕事。バルセロナを舞台に、欲しいものは何でも手に入れる美女(ブリット・エクランド)と、富豪に雇われ、彼女を落とさんと奮闘するエセ闘牛士(ピーター・セラーズ)。レイ作ではないセラーズ歌2曲以外、知らずに聞くとマンシーニかヘフティかと思うお洒落イージーリスニング。だが、その中にまるで『パリのめぐりあい』の裏メロのようなレイ節をしのばせて、レイのハリウッド・サウンドならではの味を残す。レイ・ファンはもちろん、前述マンシーニ、ヘフティあたりの映画音楽ファンにもお薦め。
『ロミオとジュリエット』(音楽 ニーノ・ロータ)
フランコ・ゼフィレッリがウィリアム・シェイクスピアの名作「ロミオとジュリエット」を映画化、ニーノ・ロータ作曲による音楽も世界的に大ヒット。そのロータのスコアのリマスター盤登場。
若い恋人を演じたレナード・ホワイティングとオリビア・ハッシーは、共に人気爆発、世界的アイドル映画の最高峰のひとつといってもいいかもしれない。
崇高に美しく、誰もが知るスタンダード中のスタンダードとなった「愛のテーマ」を軸に、厳かに奏でられる。
そして、今回の音源の注目点は、かつてより発売されている、セリフを大きくフィーチャーしてミックスされているトラックではなく、純粋にロータのスコアのみを楽しめる音源であるという点。愛の映画音楽、名作中の名作をじっくり味わっていただきます。
『明日に賭ける』(音楽 フランシス・レイ)
当時32歳の若手のマイケル・ウィナー監督が『きんぽうげ』のピーター・トレイバーの脚本を映画化。有能ながらも大手CM会社のコマとして働くしかない人生から脱出すべく行動をとる男の姿を、彼を取り巻く女性たちとの関係を交えて描く。
フランシス・レイが『無責任恋愛作戦』と同年に受けたハリウッド仕事。男の華麗でダイナミックな人生を象徴するゴージャスで、時に落ち着きのあるメロディ。
『ラフ・カット』(音楽 ネルソン・リドル)
バート・レイノルズ、レスリー・アン・ダウン、そしてデヴィッド・ニーヴンと怪しい三人が宝石泥棒について何か企んでいる。60年代でいかにも楽しかった犯罪コメディのテイストを再現、監督は巨匠ドン・シーゲル、そして、音楽が、ポピュラー畑、イージーリスニング畑では大物アレンジャー、バンドリーダーとして名匠のネルソン・リドルが、洒落たソフトなラウンジ風味ポップ&ジャズ・オーケストラ・サウンドを構築。何気ない心地よさでグー。
『ヘザース/ベロニカの熱い日』(音楽 デヴィッド・ニューマン)
破天荒な学園ドラマの様相を持ちつつ、狂気のバイオレンスと化す、異色の青春ブラック・コメディ『ヘザース ベロニカの熱い日』のサントラ、音楽は、確かにフィルモグラフィーにブラックコメディ多いデヴィッド・ニューマン。
予測できないスコアは、80年代青春映画っぽい、ビートと間で楽しませるシンセスコアの乾いて躍動的なサウンド。青春でもホラーでもない、不思議なベクトルを持つスコア。
『巴里を追いかけて』『C階段』(音楽 レイモン・アレッサンドリーニ)
『さよならの微笑』も人気作のジャン=シャルル・タケラ監督の繊細な人間ドラマのサントラ2作品。『巴里を追いかけて』は48年のパリから始まる、映画マニアの男女たちの青春ドラマ。アコーディオンの音色も取り入れ、幸福感と悲しげなアクセントを溶け合わせた、なんとも知れないノスタルジーさが香る名スコア。この作品以前となる『C階段』はひとつのアパルトマンの住人たちの暖かくも密やかなドラマで、幸福感と儚さが漂う、こちらも複雑な感情を美しくまとめた、レイモン・アレッサンドリーニの才気光る傑作。
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