シゲティ、フェラス、カルミレッリ、シャフラン…MELOCLASSIC新譜弦楽器9タイトル!
ヒストリカル・ファン待望のMELOCLASSIC新譜がようやく発売になります。新型コロナ・ウィルスの影響で大幅に制作が遅れておりました。ピアノ編が全9タイトル、ヴァイオリン編が8タイトル、チェロ編が1タイトルの計18タイトルが一挙発売です!
ここではヴァイオリン&チェロ編全9タイトルをご紹介いたします。全てモノラル録音。簡易収納紙ケースを使用しています。
(タワーレコード)
「ヨーゼフ・シゲティ フランスでのリサイタル 1956-1958」
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.378/ヴァイオリン・ソナタ ホ短調 K.304/ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K.379
ミェチスワフ・ホルショフスキ(ピアノ)
1956年7月17日 フランス,プラド ライヴ録音
ジェイムズ・ファセットとのインタビュー 1954年12月26日 ニューヨーク
ハワード・ネルソンとのインタビュー 1955年11月11日 ケンブリッジ
シューベルト:ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 D384/
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 Op.78/ヒンデミット:ヴァイオリン・ソナタ ホ長調/
ストラヴィンスキー:協奏二重奏曲/ウェーベルン:4つの小品 Op7
ナウム・スルスニ(ピアノ)
1958年4月27日 フランス,アニエール・シュル・オワーズ ライヴ録音
ヨーゼフ・シゲティ(148'09)
※大ヴァイオリニスト、ヨーゼフ・シゲティ(1892―1973)の2種のライヴ録音を収録。1956年のプラドでの演奏会の会場はサン・ピエール教会で、夏のプラド音楽祭での演奏会と思われる。モーツァルトのヴァイオリン・ソナタが3曲、しかも伴奏はミェチスワフ・ホルショフスキ。まさにシゲティらしい味わいの気迫の篭った演奏。拍手は収録されていないが楽章間では聴衆の物音が聞こえ、またK.304の前にシゲティが調弦する様子も収録されている。1958年のアニエール・シュル・オワーズ(パリから北へ40Kmほど)の有名なロワイモヨン修道院でのライヴ録音は、シューベルトとブラームスというドイツ・ロマン派のヴァイオリン・ソナタに加え、後半はヒンデミット、ストラヴィンスキー、ウェーベルンという意欲的な曲目。シゲティはこれらの商業録音を残しているが、ライヴ録音というのが貴重。日本ではシゲティというとついバッハ、ベートーヴェン、ブラームスの印象が強いだろうが、彼はモダニストの顔もあり、それを実感できる。シューベルトの後に拍手が収められている。
放送アナウンスメントに加え、シゲティの長めのインタビューが2種収録されている。日本人にとって嬉しいことに、シゲティはどちらのインタビューでも1953年3月の来日に言及しており、特に1955年のインタビューでは日本での活動について詳しく述べている。
「ロマン・トーテンベルク ドイツでのヴァイオリン・リサイタル 1958―1970」
バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト短調 BWV.1001
1958年3月5日 ハンブルク 放送用スタジオ録音
バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ短調 BWV.1003
1963年2月23日 シュトゥットガルト 放送用スタジオ録音
シューベルト:ヴァイオリン・ソナタ イ長調 D574/シマノフスキ:アレトゥーザの泉 Op.30
コンラート・リヒター(ピアノ) 1970年1月26日 ハンブルク 放送用スタジオ録音(ステレオ)
ファリャ(コハンスキ編):スペイン民謡組曲
リヒャルト・ベックマン(ピアノ) 1958年3月5日 ハンブルク 放送用スタジオ録音
ドヴォルザーク:ヴァイオリン・ソナティーナ ト長調 Op.100
ノラ・クレンク(ピアノ) 1964年1月8日 シュトゥットガルト 放送用スタジオ録音
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 Op.108
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調/バルトーク(セーケイ編):ルーマニア民俗舞曲
コンラート・リヒター(ピアノ) 1968年5月31日 エットリンゲン ライヴ録音
ヴィエニャフスキ:華麗なるポロネーズ第1番 ニ長調 Op.4
マリア・ベルクマン(ピアノ) 1963年2月22日 バーデン=バーデン 放送用スタジオ録音
ロマン・トーテンベルク(ヴァイオリン) 151'20
※伝説的な名ヴァイオリニスト、ロマン・トーテンベルク(1911-2012)の貴重な録音集。ロマン・トーテンバーグはポーランド中部のウッチ生まれのヴァイオリニスト。モスクワとワルシャワで育ち、ベルリンで高名なカール・フレッシュにヴァイオリンを学んだ。1938年に米国に移住、市民権を得て亡くなるまで70年以上を過ごした。彼は欧州でも米国でも同時代の作曲家の作品を積極的に紹介したことで知られる。また米国ではヴァイオリン教師としても高名だった。
不思議なことにトーテンベルクは、商業録音を残しているにもかかわらず、長く録音が顧みられることがなく、フレッシュ門下の極めて優秀なヴァイオリニストにもかかわらず幻のヴァイオリニストになってしまっていた。トーテンベルクの素晴らしさは1958年のバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番の一つだけでもはっきり理解できる。音そのものに気が漲っており、しかも演奏に崩しがなく、圧倒的に立派なバッハが鳴り響く。一方シューベルトでは洒落た柔らかい歌いまわしが魅力的。若い頃に共演したことのあるシマノフスキでは、透明かつ温かみのある音色でじっくり聞かせる。ブラームスの第3番はロマン色の重みを脱ぎ捨てた近代感覚の演奏で新鮮な印象を与える。これらの録音を聞けば、なぜこれほどの立派なヴァイオリニストが長年録音で聞けずにいたのか不思議に思わざるを得ないだろう。
ちなみにトーテンベルクの愛用のストラディヴァリウス(6億円の価値があるという)は1980年に盗難に遭い、彼の死後2015年になって発見されて遺族の元に戻り、ニュースで広く報道された。1970年のシューベルトとシマノフスキはステレオ録音。
「クリスティアン・フェラス ドイツでの楽旅 1954-1961」
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61
ハンス・ミュラー=クライ(指揮)南ドイツ放送交響楽団
1954年3月22日 シュトゥットガルト 放送用スタジオ録音
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35
ハンス・ミュラー=クライ(指揮)南ドイツ放送交響楽団
1957年3月28日 シュトゥットガルト 放送用スタジオ録音
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77
ハンス・シュミット=イッセルシュテット(指揮)NDR交響楽団
1959年2月9日 ハンブルク ライヴ録音
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 Op.19
ディーン・ディクソン(指揮)ヘッセン放送交響楽団
1961年3月10日 フランクフルト・アム・マイン 放送用スタジオ録音
クリスティアン・フェラス(ヴァイオリン) 139'04
※クリスティアン・フェラス(1933-1982)の20代の頃のヴァイオリン協奏曲が4曲。いずれも若きフェラスならではの瑞々しい美音と勢いのある弾きっぷりが堪能できる。カール・ベームやヘルベルト・フォン・カラヤンといった大御所からも重用されたフェラスたが、シュトゥットガルトの名匠ミュラー=クライとの相性がとても良い。1954年のベートーヴェンでも1957年でのチャイコフスキーでもフェラスは気持ちよく伸び伸びと演奏して本領を発揮している。ことにチャイコフスキーの第3楽章ではフェラスの自由自在なヴァイオリンをミュラー=クライが絶妙に受け止めスリリングにまとめている。一方1959年のハンブルクでのブラームスは、ハンブルクの巨匠シュミット=イッセルシュテットの指揮する端正なオーケストラに乗ってフェラスもじっくりとスケールの大きな演奏を繰り広げている。第2楽章でのフェラスの美音は絶品だ。フェラスはプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番は商業録音を残していないだろう。このフランクフルトでの演奏は海賊CDで1度出たことがあるだけで、フェラス・マニアにはお宝的録音である。パリ時代のプロコフィエフのモダニズムを鮮やかに引き立てつつ、フェラスの瑞々しい音色が作品に潤いを与えている。
「クリスティアン・フェラス ハンブルクでのリサイタル1951-1964」
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
クライスラー:ベートーヴェンの主題によるロンディーノ,ウィーン奇想曲
1951年11月26日 ハンブルク 放送用スタジオ録音
フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調 Op.13
1953年11月6日 ハンブルク 放送用スタジオ録音
ミヨー:屋根の上の牛/ディニク(ハイフェッツ編):ホラ・スタッカート
クライスラー:ボッケリーニの様式によるアレグレット
シャミナード(クライスラー編):スペインのセレナーデ
1952年11月23日 ハンブルク 放送用スタジオ録音
クライスラー:美しいロスマリン,愛の喜び
サン=サーンス:導入とロンド・カプリチョーソ Op.28
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.454
1955年3月16日 ハンブルク 放送用スタジオ録音
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ イ長調K.305/293d/サン=サーンス:ハバネラOp.83/
ラヴェル:ツィガーヌ/サラサーテ:アンダルシアのロマンス Op 22-1/
ヴィエニャフスキ:華麗なるポロネーズ第1番 ニ長調 Op.4
1964年10月26日 ハンブルク 放送用スタジオ録音
クリスティアン・フェラス(ヴァイオリン)、ピエール・バルビゼ(ピアノ) 155'48
※クリスティアン・フェラス(1933―1982)が10代末から30代初頭にかけてハンブルクで放送のために録音したヴァイオリン演奏集。いずれも伴奏はピエール・バルビゼ(1922―1990)。1950年代の彼らの演奏は、フェラスの青年らしい溌溂とした生命力と向こう見ずなまでの自信を11歳年上のバルビゼがしっかり支えた名演ばかり、特に1951年、フェラスがまだ18歳のドビュッシーとフランクではフェラスの若く優秀だからこそ可能な飛び切りの新鮮さに聞き惚れるほかない。フェラスが弾いたモーツァルトのヴァイオリン・ソナタは商業録音ではなかったかもしれない。美音を自在に繰り広げるフェラスはもちろんのこと、ピアノの比重が高いだけにバルビゼが一流のモーツァルト弾きであったこともよく分かる。1964年になるとフェラスの成熟が顕著で、落ち着いた風格が増している。もっともラヴェルのツィガーヌではバルビゼともども最後に猛烈な追い込みをしているが。
ドイツの放送局でも録音の優秀さには定評あるNDRの録音だけにいずれもモノラルながら年代としては上々の音質を保っている。
「ピーナ・カルミレッリ 協奏曲録音 1963-1967」
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77
エーリヒ・シュミット(指揮)ベロミュンスター放送管弦楽団
1963年1月27日 チューリヒ 放送用スタジオ録音
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 Op.19
エルネスト・ブール(指揮)バーデン=バーデン南西ドイツ放送交響楽団
1967年1月17―18日 バーデン=バーデン 放送用スタジオ録音(ステレオ)
ピーナ・カルミレッリ(ヴァイオリン) 62'45
※イ・ムジチのトップだったことで知られるピーナ・カルミレッリ(1914-1993)のブラームスとプロコフィエフの協奏曲。2016年にMeloclasscが発売した2枚組CD(MC 2031)が、イ・ムジチのカルミレッリとは異なる彼女の素晴らしい魅力を明らかにしてヴァイオリン・マニアの話題になった。今回のCDでは彼女の協奏曲を聞くことができる。ブラームスでは細めながらニュアンス豊かなヴァイオリンが魅力的。そしてまさかのカルミレッリの弾くプロコフィエフの第1番。何と柔らかく温かいプロコフィエフだろうか。近現代音楽を得意にしたエルネスト・ブールの色彩豊かな伴奏も見事。しかもプロコフィエフはステレオ録音というのが嬉しい。
「ミリアム・ソロヴィエフ フランスでのヴァイオリン・リサイタル 1959-1966」
シューベルト:幻想曲 ハ長調 D.934
ジュリアス・カッチェン(ピアノ)
1959年9月27日 フランス,アニエール・シュール=オワーズ ライヴ録音
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 Op.100
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 Op.27-3 「バラード」
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン・ソナタ イ長調 RV31
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.454
クリスティアン・イヴァルディ(ピアノ)
1966年10月20日 パリ ライヴ録音
ミリアム・ソロヴィエフ(ヴァイオリン) 75'05
※Meloclassicは過去2回ミリアム・ソロヴィエフ(1921-2004)のCDを発売し(MC 2007,MC 2030)、生前から忘れ去られてしまったこの名ヴァイオリニストを改めて世に知らしめた。ミリアム・ソロヴィエフはサンフランシスコ生まれのヴァイオリニスト。ニューヨークでルイス・パーシンガーに学び、さらにベルギーでカール・フレッシュにも学んでいる。順調に思えた彼女の人生だったが、1939年暮れ、妻と不仲になった彼女の父親が彼女を含めた家族を銃撃した末自殺、彼女の母と妹が死亡するという悲惨な事件に襲われた。それでも彼女は立ち直り、第二次世界大戦後は活動拠点を欧州に移し、ウィーン・フィルやベルリン・フィルなどの演奏会にも出演。だが1970年代に入ると早々に第一線を退き後進の育成に取り組んだ。ソロヴィエフのヴァイオリンは気品ある美音が魅力的で、歌い回しも洒落ている。シューベルトの幻想曲ではしばしば共演したジュリアス・カッチェンがピアノ。1966年のパリでの演奏会は彼女の本領がよく表れており、溌溂としたモーツァルト、ズバッとしたボーイングが清々しいヴィヴァルディ(有名な終楽章が素晴らしい)、抑えた情感で美しさが映えるブラームス、そして気合の入ったイザイと、どれも見事。
「リリア・ダルボーレ ドイツでのヴァイオリン・リサイタル 1939-1955」
シューベルト:ヴァイオリン・ソナタニ長調D384/コレッリ:ヴァイオリン・ソナタ ニ長調Op.5-1
1955年3月26日 シュトゥットガルト 放送用スタジオ録音
シベリウス:ヴァイオリン・ソナティーナ ホ長調 Op.80/
マデトーヤ:ヴァイオリン・ソナティーナ Op.19/パルムグレン:ロマンス
1953年11月20日 シュトゥットガルト 放送用スタジオ録音
タルティーニ:アダージョ/タルティーニ(ギーゼン編):コレッリの主題による7つの変奏曲
1951年4月10日 シュトゥットガルト 放送用スタジオ録音
ヴィヴァルディ(レスピーギ編):ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 RV10/パガニーニ:無窮動/
フィオッコ:アレグロ ト長調/パラディス:シシリエンヌ/ラヴェル:ハバネラ形式の小品
1939年4月1日 シュトゥットガルト 放送用スタジオ録音
リリア・ダルボーレ(ヴァイオリン)、フーベルト・ギーゼン(ピアノ)(68'35)
※リリア・ダルボーレ(1911-1988)の貴重な録音集。リリア・ダルボーレ(リリアはエミーリアの愛称)はイタリア、ナポリの北に位置するサンタ・マリーア・カープア・ヴェーテの生まれ。ローマとペーザロで学んだ後、1929年から1932年までカール・フレッシュに学ぶ。以降彼女は祖国イタリアとドイツを中心に活動。第二次世界大戦直後が彼女が最も活発に演奏活動をした時期で、若き日のセルジウ・チェリビダッケとウィーン、ベルリン、ローマで共演した。また1959年にはローマ三重奏団を結成、室内楽でも高い評価を得た。彼女はローマのサンタ・チェチーリア音楽院で長く教職を務め、1982年にはイタリア政府から勲章を授与されている。
ダルボーレのヴァイオリンはいかにもフレッシュ門下生らしい華美を戒めて作品の内側に踏み込もうとするもの。その美質はたとえばシベリウスと彼の弟子であるマデトーヤの二つのソナティーナやのようなしみじみした作品で顕著である。一方で1939年の若い頃の録音では難曲パガニーニの無窮動を鮮やかに弾き切っている。名伴奏者として知られるフーベルト・ギーゼンの伴奏も見事。
「伝説のヴァイオリニストたち 演奏会ライヴ録音」
パガニーニ(ヴィルヘルミ編):ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 Op.6
グィラ・ブスターボ(ヴァイオリン)
オトマール・ヌッショ(指揮)ORTF室内管弦楽団
1966年5月19日 パリ ライヴ録音
サン=サーンス:導入とロンド・カプリチオーソ Op.28/ラヴェル:ツィガーヌ
ミシェル・オークレール(ヴァイオリン)
ハインツ・レーグナー(指揮)ライプツィヒ放送交響楽団
1960年1月31日 ライプツィヒ ライヴ録音
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番 イ長調 K.219
ローラ・ボベスコ(ヴァイオリン)
ハンス・シュミット=イッセルシュテット(指揮)NDR交響楽団
1965年5月2日 ハンブルク ライヴ録音
(68'35)
※伝説的女性ヴァイオリニスト3人のライヴ録音を収録。いずれもお宝録音である。
このCDで一番注目すべきはミシェル・オークレール(1924-2005)。パリ生まれのオークレールのズバッとした気っ風のいいボーイングと妖しいまでに艶やかな音色の絡み合った音楽にはカリスマがあり、ことに日本では今でも根強い人気がある。彼女が弾いたサン=サーンスとラヴェルは、どちらの曲も録音は初めてではないだろうか。この1960年のライプツィヒでのライヴ録音は音がやや遠めなものの2曲とも素晴らしい演奏。導入とロンド・カプリチオーソは自信に漲り溢れた快演。しばしば技巧的にバリバリ弾かれるツィガーヌも彼女の手にかかるとクラクラするような香り高さに包まれる。指揮者は31歳になったばかりのハインツ・レークナーである。
やはり日本で根強い人気があるローラ・ボベスコ(1921―2003)はモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番を得意にして録音も数種残しているが、ここではモーツァルトで高い評価を得たハンブルクの巨匠シュミット=イッセルシュテットとの共演というのが嬉しい。ボベスコの優雅で気品のあるヴァイオリンと、シュミット=イッセルシュテットの指揮する折り目正しく格調高いオーケストラがピタリと合い、この上ない調和が生まれている。
ブスターボ(1919-2002)は米国、ウィスコンシン州のマニトワックに生まれ。天才ヴァイオリン少女と注目を浴び、ニューヨークでも成功、欧州ではヴィレム・メンゲルベルクをはじめとする大指揮者たちと共演、さらにヴォルフ=フェラーリからはヴァイオリン協奏曲を献呈された。しかし第二次世界大戦後はナチへの協力の嫌疑で米国で活動できなくなり、欧州で活動を続けたものの、比較的早期に第一線を退いた。パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番はブスターボの十八番で、Meloclasscからは1959年ミュンヘンでの録音がCDになっていた(MC 2029)。この1966年パリでのライヴ録音も絶好調、彼女の可憐で繊細な魅力が楽しめる。
「ダニール・シャフラン ドイツでの楽旅 1957-1973」
フランク(デルサール編):ソナタ イ長調(原曲 ヴァイオリン・ソナタ イ長調)
プロコフィエフ:チェロ・ソナタ ハ長調 Op.119
ストラヴィンスキー(ピアティゴルスキー編):イタリア組曲/ブリテン:チェロ・ソナタOp.65
アントン・ギンスブルグ(ピアノ)
1973年5月24日ドイツ,シュヴェツィンゲン ライヴ録音
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104
カール・フォン・ガラグリ(指揮)ベルリン放送交響楽団
1957年11月10日 (東)ベルリン 放送用スタジオ録音
カバレフスキー:チェロ協奏曲第1番 ト短調 Op.49
ディミトリ・カバレフスキー(指揮)ベルリン放送交響楽団
1963年3月16日 (東)ベルリン 放送用スタジオ録音
ダニール・シャフラン(チェロ) (138'54)
※繊細で洗練された美しさと高度な技術で今なお人気の高いソ連の名チェリスト、ダニール・シャフラン(1923―1997)のドイツでの録音。目玉はブリテンのチェロ・ソナタ。この作品はブリテンと交流の深いムスティスラフ・ロストロポーヴィチのために書かれ彼が初演したもので、シャフランの演奏した録音は今回初めて世に出るだろう。シャフランの美学に貫かれたブリテンはこれまた絶品。その他はシャフランの得意とする作品ばかりで、いずれもロシアでの録音もあるが、ドイツの放送局の優秀な録音で聞くシャフランは彼の美質がより明瞭に聞いてとれる。協奏曲2曲は東ベルリンでの放送用録音。シャフランの弾くドヴォルザークのチェロ協奏曲は1978年の録音が出ているが、ここでの30代のシャフランの演奏は颯爽とスマートで気品に満ちている。ハンガリー生まれの指揮者カール・フォン・ガラグリの伴奏とも相性が良く、名盤あまたのドヴォルザークのチェロ協奏曲の中でも傑出した演奏だろう。カバレフスキーのチェロ協奏曲第1番は作曲者自身の指揮。シャフランとカバレフスキーは1954年にこの曲を録音(最初の録音だった)しており、後にカバレフスキーは協奏曲第2番をシャフランのために書き、彼が初演した。
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2020年11月12日 15:00