ジュリア・ヌーティによるイタリア16世紀のオリジナル・ヴァージナルを用いた、英国後期ルネサンスの鍵盤音楽作品集
芳醇な美音!イタリア音楽の影響を受けつつあったルネサンス末期の英国音楽を、当時の響きのままに
『フィッツウィリアム・ヴァージナル・ブック』や『パーシニア』など重要な曲集の存在もあり、イギリスは16世紀エリザベス朝時代から17世紀初頭にかけて鍵盤音楽発展の重要な拠点だったことが知られています。同時代のイタリアやドイツ語圏の一部とは違い、バロックの作法にあまり影響を受けないまま、ルネサンス様式が17世紀もかなり遅くまで保たれていたのがこの時期の英国音楽の特徴ですが、やがて音楽史研究が進むにつれ、ダウランドの交流やフェラボスコ1世の渡英など、この時期の英国音楽にもさまざまなかたちでイタリア音楽からの影響が見て取れることも分かってきました。
このアルバムではArcanaですでに何作かのアルバムをリリースしているイタリア古楽新世代の名手ジュリア・ヌーティが、フィレンツェのルチェッライ宮の天井裏から見つかった16世紀末イタリア製のヴァージナル(卓上に置く小さなチェンバロの一種で、イタリアではスピネットともアルピコルドとも呼ばれていました)という貴重なオリジナル楽器で演奏。当時エリザベス1世もイタリア製の鍵盤楽器を所有していたことが判っており、英国人たちが南国の銘器で心ゆくまで愉しんだであろう響きを当時のままに味わえます。イタリア式のチェンバロから聴こえてくることの多い鋭角な響きよりも、むしろ一音一音に豊かさが宿る芳醇な音色が特徴的で、これら英国人作曲家たちの小品群のイメージの知られざる一面に触れることができるでしょう。400年以上の年月を越え、昔日の南北交流に思いを馳せたい一枚です。
(ナクソス・ジャパン)
『落葉の頃』~英国ルネサンス末期の鍵盤楽曲を、16世紀イタリアのオリジナル・ヴァージナルで
【曲目】
1. 作曲者不詳: プレリュード Prelude
2. ジョン・ダウランド(1563-1626)/編曲者不詳:パヴァーン「男はただ一人、ただ一人の女と」 Solus cum sola - Pavan
3. ダウランド/ジョン・ウィルビー(1574-1638)編: 蛙のガリアード The Frog - Galliard
4. マーティン・ピアソン(1571頃-1651): サクラソウ The Primrose
5. ジョン・トムキンズ(1589-1638): ジョン、さあキスして John come kiss me now
6. ダウランド/ピアソン編: 笛吹きのパヴァーン Piper’s Pavan
7. ダウランド/ウィリアム・バード(1539/40-1623)編:笛吹きのガリアード(もし、わたしの嘆きが) Piper’s Galliard (if my complaints)
8. ピアソン: 落葉 The fall of the leaf
9. バード: 鐘 The Bells
10. ダウランド: 彼女は許してくれるだろうか Can she excuse
11. ウィリアム・ティスドール(1570-歿年不詳): アルメイン Alman
12. ティスドール: コラント Coranto
13. ジョン・アムナー(1579-1641):おお主よ、わたしはあなたに全てを託します O Lord, in thee is all my trust
14. トマス・キャンピオン(1567-1620): そちらへ行ってもよいだろうか Shall I come ?15. トーマス・モーリー(1557/58-1602): パッサメッツォ=パヴァーン Passamezzo Pavan
16. ジュリオ・カッチーニ(1551-1618)/ピーター・フィリップス(1560-1628)編:麗しのアマリッリ Amarilli mia bella
17. 作曲者不詳/ブリアント・ラドロウ(生歿年不詳、16世紀後半に活躍)編:悲しみに溺れながら In sorrows drown’d
18. ダウランド/フェルナンド・リチャードソン(1558頃-1618)編:涙のパヴァーン Lachrymae Pavan
19. ジェイムズ・ハーディング(1550頃-1626)/ジョン・ブル(1562頃-1626)編:ガリアード Galliard
【演奏】
ジュリア・ヌーティ(ヴァージナル)
使用楽器: ルチェッライ宮(フィレンツェ)で発見された1590年頃製作のオリジナル楽器、製作者不詳
1/4コンマ・ミーントーン A=392 Hz
【録音】
2019年5月26-28日 コルセル教会、コルセル=コルモンドレーシュ (スイス西部ヌーシャテル州)
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2022年07月15日 00:00