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TOWER RECORDS LOVES...山下達郎『ナイアガラ トライアングルVol.1』

ナイアガラ トライアングルVol.1

76年、山下達郎のソロデビュー前夜に残されたジャパニーズポップスのミッシングリンク。


楽しそうなのである。

何がって、タツローも銀次も、ふたりのお師匠さんである大滝さんも、皆さんとにかく楽しそうに、ワイワイあーだこーだ言い合いながら録音したであろう雰囲気が伝わる"名盤"なのである。タツローが4曲、銀次が4曲、そして大滝さんが3曲、それぞれが持ち寄っての全11曲(CDはボートラ5曲が追加収録の16曲)。このアルバムが"名盤"とされる所為は他にもある。

なにしろ山下達郎が手掛けた4曲、とくに冒頭(1)"ドリーミング・デイ"、そしてポンキッキーズのEDテーマとして平成のちびっ子たちにも知られる名曲(2)"パレード"の2曲は大貫妙子、上原ユカリ、寺尾次郎が揃った、つまるところ「シュガーベイブ」最晩年の録音なのである。さらにキングトーンズのために書いたスウィートソウルごっこな(3)"遅すぎた別れ"は、銀次のハードボイルドな語りと、一聴して吉田美奈子とわかるバックコーラスが最高。また(8)"フライング・キッド"はその美奈子作詞による、後の山下達郎ソロ作品の青写真といえる重要な一曲。

続く伊藤銀次による4曲は、サーフロックやラテンロック、ファンキーなスワンプロックなど、彼の音楽趣味が伺えるノベルティ色の強い楽曲を披露。なかでもシュガーベイブにおける伊藤銀次の貢献度がわかる(6)"幸せにさよなら"は、彼のキャリアの中でも屈指の名曲。

そしてお師匠さん=大滝詠一が手掛けた3曲がこれまた別格の出来。まずは国産ドラムブレイク屈指の一曲(9)"FUSSA STRUT Part-I"のカッコ良さったら!ベースに細野晴臣を配し、ガヤも入ったニューオリンズと福生タウンをつなぐファンキーな一曲(ちなみにPart-Ⅱは『ナイアガラムーン』に収録)。さらに林立夫、細野晴臣、松任谷正隆、鈴木茂、つまり「ティン・パン・アレー」を従えたハチロクリズムの箱庭エキゾチカ歌謡(10)"夜明け前の浜辺"、そして元ブルース・クリエイションの布谷文夫を"新・民謡歌手"に仕立て、音頭とファンクをガンボしたかのような(11)"ナイアガラ音頭"のぶっ飛び具合は、大滝さんのノベルティ趣味が炸裂した早すぎた民謡クルセイダーズ、これぞジャパニーズ・レアグルーヴな一曲。

さて、今回のお題は『山下達郎』である。"売れないインディーズバンド"、シュガーベイブを解散させ、76年に渡米。その年の12月に『サーカス・タウン』でソロデビューを飾ったタツローのキャリアにおいて、本作は類するものがないレアな作品である。とくにミュージシャン同士の緊張感が高い音楽性を生んだ彼の初期作品において、それゆえに排除されていた身内同士の和気あいあいとした雰囲気、それが『NIAGARA TRIANGLE Vol.1』の主軸である。
本作は山下達郎という日本を代表するポップミュージシャンが、バンドでの挫折を経てソロ歌手としてデビューするごく僅かな時期をうかがい知る事のできる、日本のポップミュージックにおけるミッシング・リンクなのである。

(※敬称略、ひとつよしなに)

<週刊ライドオンタイム編集部 タナタツ>

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掲載: 2022年07月19日 19:17