第70回青少年読書感想文全国コンクール 課題図書
小学校 低学年の部
『アザラシのアニュー』
あずみ虫 作
さむい冬のある日。地球の北のほうにある海の氷の上で、タテゴトアザラシのあかちゃんがうまれました。おかあさんはあかちゃんに、アニューとなまえをつけました。アニューは、おかあさんのおちちをのんですくすくそだちます。ある日、おかあさんがうみにでかけると……。
【選定理由】
北極圏から南下して出産するアザラシの生態が絵本になっており、小学校低学年が共感しながら読め、自然の営みについて理解できる。アザラシの成長について解説が書かれている点も評価した。
『ごめんねでてこい』
ささきみお 作・絵
【選定理由】
日常生活でありがちな、主人公の素直になれない気持ちに共感できそう。「ごめんね」という気持ちが、いろいろな生活場面に発展して考えられる。1年生でも2年生でも読める文章量も選定理由。
『おちびさんじゃないよ』
マヤ・マイヤーズ ぶん、ヘウォン・ユン え、まえざわあきえ やく
テンちゃんは身体の小さな女の子。周りの皆んなが子ども扱いするけど、いろんなことができるし、知っているのです。ある日、学校にマルくんという身体の小さな男の子が転校してきました。小さなマルくんにいじめっ子が近づきます。どうしよう…小さなテンちゃんはマルくんを助けようと……..
【選定理由】
体が小さいということを前向きにとらえている。主人公の行動力や勇気、大切なことが言えるところに共感してほしい。ストーリーに沿って主人公の成長と実体験を重ね合わせて読むことができる。
『どうやってできるの? チョコレート』
田村孝介ほか 写真
原料のカカオから板チョコレートができるまでを、豊富な写真としかけ画面を使いながら、順を追ってみていきます。原料が変化して食べ物になるふしぎ、そして社会の仕事にも目が向く絵本です。
【選定理由】
普段食べているチョコレートがどのように作られていくのかが、写真と説明で小学校低学年でもわかりやすい内容になっている。驚きのある写真も見事で、情報量が小学校低学年にちょうどよい。
小学校 中学年の部
『いつかの約束1945』
山本悦子 作、平澤朋子 絵
【選定理由】
2人の女の子とおばあさんとの会話から、過去と現在の対比が描かれ、戦争や平和について自然と考えることができる。戦争の悲惨さと現在の平和を作った多くの人々の努力を伝えている。
『じゅげむの夏』
最上一平 作、マメイケダ 絵
夏の匂いが濃く立ちこめる山あいの村で、死という確かで曖昧なものを共有しながら、めいっぱいいのちを謳歌する少年たちの夏の日をみずみずしく描いたさわやかな作品。
【選定理由】
友情と夏休みの冒険がテーマで、同世代の子どもたちが、男女問わずに楽しんで読むことができる。エピソードそれぞれに、ダイナミックな展開があり、読んでいて爽快である。
『さようならプラスチック・ストロー』
ディー・ロミート 文、ズユェ・チェン 絵、千葉茂樹 訳
【選定理由】
子どもたちにも身近な、プラスチックと地球環境の問題を、ストローの歴史から紹介することが新鮮。生活を便利に豊かにするはずの発明が新たな問題を生む事実もわかりやすく語られている。
『聞いて聞いて!音と耳のはなし』
髙津修、 遠藤義人 文、長崎訓子 絵
【選定理由】
「音」や「聞く」を、科学的視点で見ることの面白さを教えてくれる。小学校中学年が理解するのに適しており、知的好奇心が大いに刺激される。身近なことを立ち止まって考えるきっかけとなる。
小学校 高学年の部
『ぼくはうそをついた』
西村すぐり 作、中島花野 絵
平和のために、今、私たちは何ができるのだろう――すべての人が幸せに生きられる世界へ、祈りをこめた物語。
【選定理由】
タイトルから、読者は「なぜ」と思いを巡らせて読み進めていく中で、一人ひとりの判断や行動には理由があることなどを感じ取ったり、自分の日常と生活を関連付けて考えたりすることができる。
『ドアのむこうの国へのパスポート』
トンケ・ドラフト、 リンデルト・クロムハウト 作、リンデ・ファース 絵、西村由美 訳
作家の家には、なぞめいたドアがある。ドアのむこうには、特別なパスポートを持った人しか入れないという。クラスの子どもたちは作家と手紙をかわしながら、パスポートやビザの申請といった課題にむきあううちに、仲間や自分をより深く知っていく。オランダの人気児童文学作家二人による、子どもたちへのエールに満ちた物語。
【選定理由】
作中の架空の国に入るための活動をとおして、登場人物たちは自分自身を見つめ、友だちのことを理解し、受け入れ合う。こうした展開が読者の興味・関心を高め、読みを深めることができる。
『図書館がくれた宝物』
ケイト・アルバス 作、櫛田理絵 訳
【選定理由】
イギリスと日本の戦時下の市民のくらしの違いに気づかせてくれ、困難な生活の中を、必死に生きていく姿に心を動かされる。登場人物たちに、家族のありようの一つを見ることができる。
『海よ光れ! 3・11被災者を励ました学校新聞』
田沢五月 作
【選定理由】
読みやすい文章で、新聞の役割と紙面構成、記事の書き方がわかる構成で、ノンフィクションとして優れている。震災当時の子どもたちの活動や地域の絆の大切さが描かれている。
中学校の部
『ノクツドウライオウ 靴ノ往来堂』
佐藤まどか 著
シューズデザイナーを夢見る中学生をさわやかに描いた青春ドラマ!
【選定理由】
靴づくりの細かなところまで描かれており、物作りの魅力にどんどん引き込まれていく作品。大切に扱えば長く使えるものとの出会いは、気づかないだけで身近にあることがわかる。
『希望のひとしずく』
キース・カラブレーゼ 作、代田亜香子 訳
【選定理由】
登場人物が多く、連続ドラマになりそうな多彩なエピソードで構成され、飽きずにぐいぐい読める。ちょっとした気づきや優しさが、人の助けになるかもしれないと思わせてくれる。
『アフリカで、バッグの会社はじめました 寄り道多め仲本千津の進んできた道』
江口絵理 著
【選定理由】
大変わかりやすく書かれ、言葉の選び方、ページ数など伝わることを大切にしている編集、読後に明るい未来を思い描ける内容。表紙に描かれたバッグの写真も印象的。
高等学校の部
『宙わたる教室』
伊与原新 著
定時制高校の教室に「火星」を作り出す――胸が熱くなる青春科学小説
【選定理由】
定時制高校の実話が、高校生には意外性をもって受け止められる。主人公が学びに目覚めるプロセス、かつ科学分野に目を向けていく点に多様な読書感想文が期待できる。
『優等生サバイバル 青春を生き抜く13の法則
』
ファン・ヨンミ 作、キム・イネ 訳
【選定理由】
日本よりも厳しいといわれる韓国の受験戦争真っただ中の高校生を描き、日本の高校生にも共感をもって、さまざまな読書感想文が寄せられることが考えられる。物語のテンポの良さを評価。
『私の職場はサバンナです! 』
太田ゆか 著
大好きな動物を守りたい――南アフリカ政府公認・唯一の日本人女性サファリガイドが伝えたい知られざるサバンナの動物たちの生態、環境保護の最前線、人と自然が共生するために大切なこと。
【選定理由】
南アフリカでサファリガイドになる、主人公のアクティブな生き方は高校生には新鮮で、文系・理系問わず読める、楽しく魅力ある作品。生物多様性を考えるきっかけにもなる。
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読書感想文がスラスラ書ける本
ドラえもんの国語おもしろ攻略 読書感想文が書ける