『国宝』が実写邦画歴代興行収入1位に!デビューから評価され続ける李相日監督の歩み

社会現象的大ヒットとなり、今年の映画界を席巻した『国宝』。実写邦画の興行収入記録を塗り替え、大きな話題を呼んでいる。 米アカデミー賞受賞への期待も高まる中、その手腕に注目が集まっているのが、本作を手がけた李相日(リ・サンイル)監督。数々の名作を世に送り出してきた彼の、創作の歩みを改めてたどってみたい。
●映画学校時代から才能を発揮した李相日監督
大学卒業後、日本映画学校(現・日本映画大学)に進学した李相日は、卒業制作作品『青~chong~』で早くも才能を示した。 2000年の「ぴあフィルムフェスティバル」ではグランプリをはじめ4部門を独占受賞する快挙を達成。その手腕は早くから評価されていた。
そんな李相日の名を一躍広めたのが、2006年公開の映画『フラガール』だ。 松雪泰子を主演に、蒼井優、豊川悦司、山崎静代ら豪華キャストが共演した本作は、常磐ハワイアンセンターの誕生を支えた人々の実話をもとにしている。 観る者の心を揺さぶる人間ドラマと、躍動感あふれるフラダンスの描写で日本中にフラブームを巻き起こした。
日本アカデミー賞でも最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞を受賞するなど高い評価を得た『フラガール』は、李相日のキャリアにおける大きな転機となった。
李相日の作品には、原作者とのタッグによるものもある。 2010年公開の映画『悪人』では、のちに2016年の『怒り』や今回の『国宝』でも組むことになる、吉田修一の原作を映画化した。 「人間の本質は善と悪」というテーマを描いた本作は、妻夫木聡と深津絵里が主演を務め、日本アカデミー賞では13部門15賞を受賞。最優秀賞の主要5部門も制し、大きな話題を呼んだ。
広瀬すずと松坂桃李が主演を務めた2022年公開の映画『流浪の月』も、原作をもとにした作品のひとつだ。 原作は2020年の「本屋大賞」を受賞した凪良ゆうの同名ベストセラー小説。 事情を抱えた少女・更紗を家に招き入れたことで「誘拐犯」となった男と、15年後に再会した更紗の関係を軸に、切なくも深い人間ドラマが描かれている。
原作の繊細な世界観を尊重しつつ、李相日は映画ならではの表現で物語を追及 観る者の心に強く残る演出で評価を集めた。実は『流浪の月』は、原作と映画では一部描写が異なっている。 原作小説でじっくり人物の心情に触れたり、映画で李相日による映像表現の違いを体感したりと、どちらからでも作品の世界観に浸ることができるだろう。 映画と原作、それぞれの視点から『流浪の月』の物語の深みを味わってみてほしい。
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掲載: 2025年12月23日 20:35

