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インタビュー

ROSSO


 元ブランキー・ジェット・シティの照井利幸と、ミッシェル・ガン・エレファントのチバユウスケいっしょにバンドをやるらしい、と噂を聞いたのは1月の中旬だったと思う。2月に入って、ドラムスはハードコア・バンド、ASSFORTのMASATOだと聞いた。そして2月15日、ストロークスを見終えて駆けつけた新宿のリキッドルームで、ROSSOを初めて見た。東京スカパラダイスオーケストラの冷牟田竜之が主催するイヴェント、TABOO。たくさんのバンドやDJが出演するオールナイト・イヴェントということもあって、フロアもロビーも身動きできないほど人が集まり、異様な熱気が高まるなか、3人は登場した。お互いに手探りしながら呼吸を合わせていくように、ヘヴィーなブルース・テイストの“惑星にエスカレーター”から始まり、全然カリプソじゃないが南国な気分とも受け取れる軽快さを持った“カリプソ・ベイビー”、そしてダークなイメージの“ミッドナイト・コンドル”と次第に体温を上げていき、切なくポップな“シャロン”、タイトルどおりパンキッシュな“I、PUNK”、そしてエンディングのセッションが圧巻だった“モンキー・ラブ・シック”。そんなライヴを振り返って、

 「(ステージは)1年半ぶりぐらいだから、緊張したよ」(照井)、

 「俺は冷静だったと思うんだけどな」(チバ)、

 「楽しくやれたけど、叩いてるうちに、イスが沈んでって焦った」(MASATO)

 奇跡のような、それでいて来るべきものが来たとも思わせるような、スーパー・バンド。いかにしてこのバンドは生まれたのか。以前から交流のあった照井がチバに持ちかけ、チバがMASATOを誘って、3人の足並みが揃ったのは昨年12月だと言う。

「やるんなら、すげぇもんやろうっていうか。すげぇもんしかやりたくないし」(チバ)

「(いままでのソロ作品は)インドアな感じがする。部屋の中で作ってる感じって言うか。ROSSOは、ブランキーと同じ作り方。結局ひとりでいると、ひとりの想像力で終わっちゃう。だけどチバだとかMASATOだとかといっしょにやることによって、自分が思ってたものを、遥かに超えることができる。いまは〈ナマでやる〉っていうのをいちばんやりたいし。自分がいちばん生かされるというか」(照井)

 そこから2か月で、ここまで新しいバンドの形を作り上げるとは、さすがに経験豊かな3人だと舌を巻いた。それでいて練り上がっている感じではなく、初々しい荒っぽさや彼ら自身が新しい出会いを楽しんでいることを、存分に伝えている。あのライヴの直後にレコーディングを開始、アルバム『BIRD』が完成したのは3月半ば。シングルはリリースしないが、リード・トラックとして“シャロン”のプロモ・クリップを制作、そしてふたたび待ちかねたようにライヴを再開した。4月4日には恵比寿・MILKで、6日には渋谷・クラブクアトロで元アット・ザ・ドライヴインのメンバーによる新ユニット、マーズ・ヴォルタのフロント・アクトとして。そして13日には新宿・LOFTのイヴェントに出演。5月には、中村達也率いるLOSALIOSと〈WEEKEND LOVERS〉と銘打ったツアーに出る。この性急な活動ぶりも、『BIRD』がたしかな手応えを与えるものに仕上がったという自信があるからだ。いま、もっとも聴くべき、観るべきバンドである。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年04月25日 12:00

更新: 2003年03月07日 18:26

ソース: 『bounce』 231号(2002/4/25)

文/今井 智子

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