Andrew W.K.
おいおい鼻血流してんじゃんかよ。破壊王・橋本真也じゃないんだからさ。しかも 、『I Get Wet』って、いきなりアルバム・タイトルから汗だくだ――そう、この男こそ〈ロックンロール・パーティー野郎〉アンドリューW.K.。デビュー・アルバム『 I Get Wet』がいきなりイギリスのNME紙で大絶賛され、2001年の年間アルバム・チャ ートでは第9位、年間シングル・チャートでは“Party Hard”(邦題:パーティー・ 一直線)が第4位にランクインされるほどの人気ぶり。その勢いでついに日本初見参。
「オレが大人気だって!? アンビリーバブル! ほんと素晴らしい。自分がどれくらいウケてるかなんて、なかなか把握できないよ。嬉しいけど、でもそれはオレのコントロール外のこと。だからオレは自分でコントロールできる音楽に集中するだけさ。それ以外はすべてボーナスみたいなもの。大事なことだから今日も言っておきたい。 食い物、寝床があるだけでも、それはオレにとっては十分、ボーナス。いまこの地球上のいたるところで苦しんでる人々がいる。それを忘れてはならない。人類皆兄弟。豊かだろうと貧乏だろうと、同じ大きな群れの一員なんだよ。その思想がオレの音楽の基礎になっている。みんなでひとつになろう、楽しもう!ってね」
なんと素晴しい。いきなり人類愛にまで話がいってしまったけど、まずサウンドのほうの紹介を。まるでスウィートの『Action』などのグリッター・サウンドにも通じる、パワフルでキャッチーな楽曲と、とにかくアガりっぱなしの重厚でポップなロック・ナンバーまみれのこのアルバム。ヘヴィーなギターと、誰もが口ずさめるようなポップさとの合体は、これまでありそうでなかった音だ。
「この音楽は1000台のピアノが奏でる音の集合体。すべてはピアノで成り立っている。ギター・パートだってピアノで書かれたものなんだ。つまり、オレが子供のころから触れてきたものすべての反映さ。それがビッグで、ラウドで、アグレッシヴで、オープンで、ブライトな理由は、すべてオレが生きてるうえで感じているものだから 。とくに、いまのこの不安定な世の中において、〈この音楽は信じてもいいから〉って言えるようなものをオレは作りたい。シンプルな職人技で、裏も表もない、聴いたとおりのストレート・パンチみたいな音楽さ」
まさに一撃必殺の音楽だ!そんな彼にとって、アルバムのテーマでもある〈パー ティー〉の定義とはどんなものなのだろう。
「パーティーという言葉は、短くて語感が良くてスウィートな感じだけど、実に奥深い言葉なんだ。なぜならパーティーとは〈解放〉を意味する。つまり、人生のセレ ブレーションさ。オレはみんなを音楽で包みこみたい。そして、その時だけでも嫌なことはすべて忘れて欲しいんだ。オレの人生は、いま信じられないぐらい素晴らしい 。それをみんなとシェアしたい。それってパーティーそのものだろ」
あくまでユニティーな男だ。ところでジャケの流血写真は本物らしいけど、それは アルバムの内容にどう関係してくるの?
「ビューティフルでエキサイティングな音楽を、もっともバイオレントでアグレッシヴに表現するのがオレたちミュージシャンの役目。その象徴があの写真だ。オレは好きなことをやりたいからここにいて、なにひとつ隠しごとも嘘もない。その基本姿勢を守ることがオレの使命だと思ってるし、もしそのためにダーティーなことをしなければならないとしたら、オレは喜んでそれを引き受けるよ」
とにかく〈HAVE FUN!〉のためなら命懸けの彼なのだ。身体を張ってエンターテイメントを表現していく。その姿勢は、ある意味、ミュージシャン、エンターテイナーとしての鏡だ。この潔さこそ、いまのロックが求めていたものなのかもしれない。
「〈トップ・オブ・ザ・ポップス〉に出演した時も、いつの間にか額がでっかく切れてて驚いたよ。だってぜんぜん気付かなかったから。実はその2日前にもコンサートでケガしてさ。けど、そんなちんけなケガなんかいちいち気にしちゃいらんないよ 。みんな、ハメ外せよ!
PROFILE
79年、カリフォルニア州生まれ。幼いころからクラシック・ピアノを習い、17歳で本格的に音楽活動を開始。99年にはインディーより、シングル“GIirls Own Juice”でデビューを果たす。2000年にはセカンド・シングル“Party Till You Puke”をリリース。アンドリューW.K.(ヴォーカル)、ジミー・クープ(ギター)、E・ペイン( ギター)、サージェント・フランク(ギター)、ドナルド・ターディー(ドラムス)、グレッグ(ベース)というメンバーでバンド編成となる。やがて、その過激なステージが注目を集め、2001年にアイランドと契約。同年イギリスで先行リリースされ話題を呼んだデビュー・アルバム 『I Get Wet』(Island/ユニバーサル)の日本盤がこのたびリリースされたばかり