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インタビュー

SOFTBALL

SOFTBALLのニュー・アルバム『Lamp』が届けてくれた、現代へのメッセージと真摯な姿勢

 「世の中に対して、言いたいこととか伝えたいメッセージは自分のなかにすごくあったんだけど、私は話すのがほんっとに苦手で。そんなとき、パンクというメッセージ性の強い音楽を聴いて、こういう風にしたらうまく伝わるんじゃないかなって思ったのがバンドを始めたきっかけです」(MOE)。

98年に高校の同級生だったMOEとRIEが中心となって結成されたパンク・ロック・バンド、SOFTBALL。翌年には、早くもミニ・アルバム『水母』とアメリカでレコーディングされたファースト・アルバム『天空』をリリース。そのメッセージ性の強い彼女たちのサウンドは、あっという間に各インディー・チャートで上位を独占、海外からも高い評価を得てきた。その後、新メンバーに現在高校3年生のHARUNAを迎え、オーストラリア最強のパンク・バンド、フレンザル・ロムとのツアーや三度に渡る台湾でのライヴなど、国内外での精力的な活動が続いている。そんな彼女たちが約2年ぶりとなるフル・アルバム『Lamp』をリリースする。〈守るべき風景と戦争〉という明確なテーマのもとで完成した本作には、無計画な都市の開発によってなくしてしまった古き良き故郷の風景を歌った“REVIVE”や、特攻隊として飛び立った少年の気持ちを軸に戦争を考えた“REMEMBER THE HILL”など、言葉少ない彼女たちの胸の奥で日々暴れている怒りや疑問をストレートにぶつけた全11曲が収録されている。

「戦争については台湾でのライヴをやり始めて、あらためて考えたりしたこともあって。テーマとして前々からあったんですけど、昔の戦争に限らず、いまニュースになってることとか、私たちに伝えられてることってなんかおかしいんじゃないかなっていうのがすごくあって」(MOE)。

「戦争ってすごく酷いことかもしれないし、悪い部分っていうか、辛かったり残酷だったりっていうのもある。と同時に、自分にとってなにが大切かとか、そういうことを教えてくれるものでもあったんじゃないかと思って。そういうことに気付いて欲しいし、いろんなことに疑問をもって考えるきっかけになればなって」(RIE)。

「でもこれは、いまだけ聴いて考えるっていうんじゃなくて、次の世代の人がこれを聴いてなにか感じて考えてもらえるような、考えが広がっていくような、そういう音楽だと思ってます」(HARUNA)。

ストレートなパンク・サウンドを基調に、キーボードやパーカッションを採り入れたレゲエ調のナンバーや弾き語りなど、これまでよりはるかに豊かな表情を見せる楽曲から、彼女たちの言葉と思いがイキイキと伝わってくる。

「レコーディングの前に台湾でライヴがあったんですけど、今回は二・二八事件の記念碑があるピースパークにも行きました。石碑の文字のなかに〈日本〉っていう漢字がいっぱいあって、あらためて戦争と日本と台湾っていうものを再確認しました。〈伝えたい〉って気持ちがさらに強くなった」(MOE)。
「最初台湾に行ったとき、ラジオで〈台湾の政治を変える!〉って言ったんです。当然、政治自体を私は変えられないけど、でもその大きなものを動かしていい方向に向ける手助けはできるよって意味で。これからもそれぐらいの勢いで世の中にメッセージを残していけたらいいなって思ってます」(HARUNA)。

周囲を暖かく照らす〈ランプ〉。その、小さいけど力強い灯火は、愛、美、そして自己犠牲の象徴でもあるという。奥深い意味をもち、静かに主張するこの言葉を掲げた渾身の新作とともに、SOFTBALLは2002年も真摯な姿勢で世の中に立ち向かっていく。


PROFILE

98年、高校の同級生だったMOE(ヴォーカル、ギター)とRIE(ドラムス)を中心に結成、後にHARUNA(ベース)が加入する。99年、ミニ・アルバム『水母』でデビュー。同年、アメリカでレコーディングをおこないリリースしたファースト・フル・アルバム『天空』は、翌年までインディー・チャートにランクインされるほどのロングセラー・アルバムとなった。精力的にライヴ活動を続けるなか、とくに台湾での人気は絶大で、2001年の夏までに3度のツアーをおこなっている。2002年1月17日に2年ぶりとなるアルバム『Lamp』がリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年05月09日 17:00

更新: 2003年03月07日 17:03

ソース: 『bounce』 228号(2001/12/25)

文/山田邦子