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インタビュー

立花ハジメ

携帯電話から前代未聞のエレクトロニック・ミュージック(!?)を生み出した、立花ハジメが配信する新提案にズーム!


 立花ハジメがまたやってくれた! ナント、みずからが2000年8月より運営している携帯ウェブサイトで配信されてきた数多くの着メロを、リスニング用としてリアレンジ、CD(&アナログ盤)としてリリースすることになったのだ。しかもレコーディングは携帯端末をそのまま使用。前代未聞のエレクトロニック・ミュージック『The END』の誕生です!!



携帯を耳元に持ってきて聴くと……

――まずは、着メロをアレンジしてCDにしようと思った経緯を教えてください。

「2年間くらい携帯サイトで着メロを配信してきたわけなんだけど、それを聴くためのものとしてレコーディングし直してみたらどうなんだろうってことで、いろんなアレンジとか音色とかを試してみたんだよ。もしかしたら、携帯で配信してる時点でもう使命は終えてて〈あっ、これはもうCDにする意味はないや〉って、レコーディングする話にはならなかったかもしれないんだけど、試してみたらサイトで配信しているものとはまたね、見え方というか聴こえ方が全然違ったから、聴くための楽曲として成り立つかなっていうことで」

――具体的に聴こえ方の違いというと?

「(実際に着メロを鳴らしながら)こうやってさ、普通に聴いてるとノイズ成分とかって聴こえないでしょ。でも、携帯を耳元に持ってきて聴くと……(と、言いながら携帯を僕の耳に)」

――あっ、なんかチリチリいってますね。

「そうそう、そのチリチリ、ジワジワっていうのはさ、例えば新聞を何気なく見てると普通の写真なんだけど、拡大するとこう網点がバーンって見えて、また違う意味を持ったりするっていうのとニュアンス的には近いものがあるんだよね。だからこそ作品にする意味があった」

全32曲で1曲のような感じ

――CD用にはどのようなアレンジをされたんですか?

「音源を矩形波(携帯の中の音の一種)に統一して、全体的に長い短いっていうパルス信号を意識したアレンジに直して。何曲かは、よっちゃん(シュガー吉永/バッファロー・ドーター)にギター弾いてもらったりとかっていうのもあるけど」

――矩形波に統一した理由は?

「矩形波じゃない音源だと、すごくクリアな音になっちゃうから。いろいろ試したら矩形波がいちばん、ミニ・ムーグっていうか、アナログ・シンセに近かったっていうのも理由だね。もう矩形波が鳴る携帯端末もないから、そういう意味でちょうどいい区切りにもなったかな」

――〈ピー〉っていってるだけの曲もあったりするんですけど、トータル的にすごく楽しめる内容ですよね。

「まぁ一応、曲間をゼロにしてあるから、全32曲で1曲みたいな。2年間、毎週配信してきたから200曲とかあったんだけど、そのなかから、楽曲としても聴けるようなものを選びつつ。(藤原)ヒロシの作った“puls No.1”とかは、つなぎのジングルとしてじゃなくて、ちゃんと楽曲として聴けるけど、10曲しか入ってないアルバムのうちの1曲がこれだったら、かなりキツイものがあるよね(笑)。やっぱりこの曲順で、この流れのなかで出てくるっていうのに意味があるからさ」

――収録時間は約47分ですけど、なんかものすごく気持ち良くて、時間の流れが異様に遅く感じられたというか、CDが終了してもずっとそれが持続する感じがあるんです。

「退屈だったんじゃねーの(笑)? 楽しいと早く過ぎるって言うからね」

万人に押しつける気は全然ない

――それにしても、今回の作品はかなりおもしろいものになりましたよね。

「おもしろいっていうかキワドイよね(笑)。まぁ、ただのオタクっちゃオタクだし、企画ものっちゃ企画ものだし。けど、今回は以前に携帯のJavaプログラミングのグループ展で作ったものをスクリーンセイバーとしてCDエクストラに入れたり、タワーレコードとコラボして〈NO MUSIC,NO LIFE.〉のポスターを僕が作ったり、単にCDをリリースしましたっていうだけじゃなくて、全部がリンクしてるからね。そういうのひっくるめて見てもらえればいいなと。だいたいアーティストとCDショップのコラボなんてあんまりないじゃない? いやもう、それこそ今回CDと一緒に出るピクチャー・レコードだってそうだし。21世紀のいま、このピクチャー・レコードから、こういう音が聴えてくるっていうのも新しいんだか古いんだかっていうさ、そういうとこがおもしろいと思うし」

――そういう考え方ってすごく立花さんらしいし、新しい部分ですよね。

「そうだね。聴こえてくる音が新しいんじゃなくて、全体のプレゼンテーションだったりとか考え方が新しいもんなんだよね。まぁ、そういう考え方はプラスチックスの頃から変わってはいないんだけど。今回は、作品自体に許容量があるわけじゃないから、〈今、これ聴かねぇと遅れるぞ〉みたいに万人に押しつける気は全然ないわけよ。だから、聴きたい人だけ、好きな人だけ聴けばいいんじゃないのっていう感じかな。ダメな人は一切ダメだとも思うしね(笑)」

――なるほど。では最後に月並みですが、アルバム・タイトルの意味を教えてください。

「僕がハジメだから『The END』なわけで……単にそれだけなんだけど(笑)」

立花ハジメの一部ディスコグラフィーを紹介。左から、彼が在籍したプラスチックスの80年のファースト・アルバム『WELCOME PLASTICS』(ビクター)、前作にあたる97年のアルバム『Low Power』(フォーライフ)

『The END』に参加しているアーティストの作品を紹介。左から、藤原ヒロシのベスト・アルバム『Best』(ビクター)、中西俊夫が在籍するWater Melonの99年のライヴ・アルバム『RUTA DE EVACUACION』(メジャー・フォース)、バッファロー・ドーターの2001年のアルバム『I』(東芝EMI)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年06月27日 17:00

更新: 2003年02月13日 12:23

ソース: 『bounce』 233号(2002/6/25)

文/もりひでゆき