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インタビュー

Hundred Reasons


 アメリカに負けじとばかりに、かつてロックの宝庫だったイギリスからも活きのいいバンドが続々と出てきている。そのひとつがロンドン郊外出身の5人組、ハンドレッド・リーズンズだ。リリースされたばかりのファースト・アルバム『Ideas Above Our Station』のプロデューサーが、デイヴ・サーディー(バークマーケット)ってことで、いいセンスをしてるなとまず思った。エッジが効いていても無機的ではなく、温かみのある音に仕上げる人なのだ。

「彼はマリリン・マンソンとかブッシュのアルバムを手掛けているけど、サウンド作りがとても上手いんだ。でも、上手く作ってはいるけど洗練されすぎてないっていうか、荒削りな部分を残し、パワフルなところを重視したサウンドになったと思うよ」(コリン・ドラン:以下同)。

ハンドレッド・リーズンズの音は、アメリカのインディー・ロックやオルタナティヴ・ロック全般からの影響を強く感じさせる。例えばフガジ、アット・ザ・ドライヴイン、そして最近のケイヴ・インあたりまで。また日本のNAHTをも思い出させる。高めの声で歌い上げるヴォーカル、2本のギター、堅実なベース&ドラムスで、ゆったりしたミッドテンポ中心にアルバムは展開していく。感情の起伏を表現するかのようにいろいろな曲があり、ハードコア/パンクばりに荒々しくダーティーな曲から、突然静かで美しい曲へと流れていったりもするのだ。

「ジャンルに関係なく、〈良い音楽〉は何でも聴くよ。僕はけっこう幅広くいろいろなバンドを聴いている。でも、どこの国のバンドかってことはあんまり意識していないんだ。良いバンドなら出身地は関係ないよ。オルタナティヴ・ロックも聴くし、マッシヴ・アタックとかトーリー・エイモスも大好きだしね。いろんなスタイルの音楽を聴くってことで引き出しがたくさんできて、ソングライティングの時にすごく役立つんだ」。

全員が曲を書き、それを持ち寄ってみんなでアレンジしながら作り上げていく彼ら。むろん散漫さはなく、一本筋の通ったメロディアスなポスト・パンク/ハードコア・サウンドといえそうだ。イギリスはもちろん、世界的に見ても他にはいないタイプだと思う。

それは嬉しい意見だね(笑)。あえて人と違うことをやろうというようなことは意識していないけど、僕らはただ自分たちがいいと感じるものをやっているだけさ」。

とはいえ、サウンド全体から感じられるしっとりした湿り気は、やはりイギリスのバンドならではのもの。彼らは現在のイギリスのシーンについては、すごく肯定的な意見を持っている。

「いまイギリスからはたくさん新しいバンドが出てきていて、それぞれ違うことをやっている。みんな友達だし、違うことをやっているからこそ他のバンドと張り合うこともない。みんな自分が信じることを貫いて、それが認められているんだ。素晴らしい状況だよ」。

そしてファースト・アルバムのタイトルには、今の状況に置かれた彼ら自身の気持ちがこめられているのだ。

「僕らには、どんなにたくさんの観客の前で演奏しても〈それが何なんだ〉みたいな気持ちがある。そういう気持ちを持ち続けることって大事だと思うんだ。いつでも謙虚で初心を忘れずにいられる。よく〈俺たちは世界一のバンドだ〉みたいなことを言うミュージシャンがいるけどあれは最悪の発言だね。そういう思い込みは危険だよ。音楽を続けていくうえで大事なのは、傲慢にならないってことなのさ」。

マスメディアが大きく採り上げるUKバンドのほとんどはハイプだと思うが、彼らは違う。彼らは地に足の着いたバンドなのだ。

PROFILE
ロンドン郊外サレーで活動していたジェットパック、フルーアという2つのバンドが解散後、同じマネージャーが担当していたという縁で合体。コリン・ドラン(ヴォーカル)、ポール・タウンゼント(ギター/ヴォーカル)、アンディ・ギルモア(ベース)、ラリー・ヒビット(ギター)、アンディ・ヒューズ(ドラムス)によって、2000年1月に結成される。7月にはデビュー・シングル“Cerebra”をインディーよりリリース。各音楽誌でその存在が注目され、8月には「KERRANG!」誌において〈Best New British Band〉に選ばれる。2001年には早くもメジャー契約。このたび待望のファースト・アルバム『Ideas Above Our Station』(Columbia/ソニー)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年07月04日 12:00

更新: 2003年02月12日 14:07

ソース: 『bounce』 233号(2002/6/25)

文/行川 和彦