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インタビュー

Dry & Heavy

DRY&HEAVYが通算4作目となるアルバム『FROM CREATION』をリリースする。意味合いを変えた彼らのコネクションは7つの才能をひとつに集め、レゲエ・ミュージックを更新させるほどのタフさをまとっていた!!


「昔はけっこう一曲一曲で燃えたいって気持ちがあって、もちろんいまでもそういう気持ちはあるんですけど、もっと自分自身いろいろな楽しみ方がひとつの曲のなかでできたらいいなっていう感じはありますね。違う自分の側面をもっと見てみたいし、バンドの音とももっとキャッチボールしてみたい」(Likkle Mai、ヴォーカル)。

「お互いのコミュニケーションにしてもプレイにしても、〈バンドでやるってこういうことだったのか!!〉っていう発見。なにかにつけ、みんなで作ってるっていう実感がありました」(井上青、ヴォーカル)。

 去年の〈フジロック〉でのステージで発表されたHEAVYこと秋本武士の脱退を受け、リズム・セクションを囲むコネクションからバンドへと生まれ変わった彼ら。新たなギタリストであるThe Kと、ベーシストであるPata(元AUDIO ACTIVEのサポート・ベーシストを務めていた)を含むニュー・ラインナップとともに届けられた新作『FROM CREATION』には、その彼ら自身の在り方の変化がストレートに表れている。ギターとキーボードがバンドを引っ張り、力強くうねる“Reverse Again”。あらゆる感情を沈静化させるようなサウンドと井上の歌が楽曲を包み込む、先行シングル曲“Strictly Baby”。Maiの突き抜ける歌唱が快活なバンドのサウンドと合わさって、これまでのどの楽曲よりもストレートに響いてくるセカンド・シングル曲“Show A Fine Smile”。さらには違和感など感じさせず、まるでオリジナル曲であるかのようにアルバムに溶けこんでいるドアーズのカヴァー“Riders on the Storm”……。彼らの表現している音楽そのものがこれまでと変わったとは決して思わない。しかし、スタジオでのセッションから作品へと落としこまれるプロセスをそのままに、より濃密なコミュニケーションでバンドとしてのアンサンブルやグルーヴを拡大させた音楽は、結果として彼ら自身を〈ダブ〉から解き放つことにもなったようだ。その意味では、彼らの音楽は確実に変わった。

「レコーディング作業のなかで、〈今回は聴き方を限定させるようなことは避けたい、広がりがあるものにしたいな〉って気持ちがあって、音も自然とそうなっていった。歌詞の内容も歌い方もかなり考えました」(井上)。

「ルールに縛られることなく弾きたい旋律をそのまま弾こうと思ったし、いろんなことをやりたいなって。それぞれが同じようなことを考えてるんだってことが、みんなのプレイからも感じられて、これまでにない力が引き出されたんだと思います。それがジャンルを超えたいい曲を作る結果に通じたんです。自画自賛になってますね(笑)」(The K)。

 彼らがこのアルバムで、いままで以上に幅広く訴えかける音楽を手に入れることができたのは、それは彼らが自分たちの姿をより忠実に音楽へと反映させたことの証明なのだろう。

「等身大、平常心が反映されてると思うし、そういうものを強く出したいなっていうのもあった。このアルバムからリアリティーとかパワーとかエネルギーを感じることができるのはその結果だから」(井上)。

「バンドとしてはスタートの作品だし、いろいろな経験を通して、手放しのポジティヴとか手放しの楽しさじゃなくて、表裏一体ですべてのものを素直に表現したかったんです」(Mai)。

「当初は〈7人の創造性から発したもの〉っていう意味だったんですけど、聴いてくれたみんなが自分なりになにかを発してくれるといいな。そういう意味の『FROM CREATION』になったらいいですね」(The K)。

 アルバム『FROM CREATION』は、世界中を股に掛けて始まるツアーのイントロダクションでもある。彼らがライヴでどんなふうにアルバムを育てていくのかが楽しみ。そして、このアルバムと同時に制作されていたというダブ・アルバムもリリースを待機しているとのことで、そちらのほうも見逃せないだろう。

DRY&HEAVYのアルバムを紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年07月04日 18:00

更新: 2003年02月12日 14:09

ソース: 『bounce』 233号(2002/6/25)

文/一之木 裕之