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ストイックで確信に満ち溢れたサード・アルバム『EVERYTHING IS MY FAULT』!!


 「“TOKIO LV”は……まぁ、あの曲で得たものもあったし、誤解を受けることにもなったとは思います……」(SHIGEO)。

 必ずしも甘美な瞬間だけが詰め込まれたアルバムというわけではなかった前作『KILLING FIELD』を経て、SBKがリリースするニュー・アルバムのタイトル『EVERYTHING IS MY FAULT』(すべてはおれのせいなんだ、の意)は、もしかすると上記の発言を読んだだけでは自虐的に響くかもしれない。しかし、ちょっと待って欲しい。彼の言葉には続きがあるのだ。

「でも、自分たちとしては、あの時点から何を始めるかっていうのが重要で、その始まりがこのアルバムなんです。やっぱり、何かを失うことや誤解のすべては自分たちの音源によって生じることなんですよね。そのことにようやく気付いたんですよ。だから、自分たちの中からそれを変えていこうっていう意味で、このタイトルにしたんです」(SHIGEO)。

 つまり、自虐ではなく、責任の所在を明確にすることから始めようと、彼らは言いたいのだ。そう解釈しなければ、ストイックで確信に満ち溢れた音作りが首尾一貫している本作はどうにも説明がつけられない。

「今回は1曲1曲の音数を抑えることで、聴かせたい部分にきちんとフォーカスを当てることができたんじゃないかとは思います。ただ、説明的な要素を減らすということは、逆に、音で納得させる責任が増すってことでもあるのもわかってるつもりです」(MAC)。

「いまは基本的にデータでやり取りしていて、スタジオには入らないし、生音もいらないものは入れないし。そもそも、それぞれの曲で誰が何をやったか覚えてなかったり、生だったか打ち込みだったかもわからない。ヴォーカルも楽器同様、置き換えられるものは置き換えるし、いらないなら取るし。だから、そこにあるのは曲のクォリティーに対する責任と、やるやらないっていう判断に対する責任だけなんですよね。そういう意味で僕らはもうバンドではないんでしょうね」(SHIGEO)。

 バンドという形態を解体し、“Thrown A Bone”においてはコールドフィートのローリー・ファインにヴォーカルを委ねてしまうほど、グループとしてのヴォーカル表現に対する執着を捨て去った本作は、彼らの心境を言葉の形で伝えることはない。むしろ、託すようにスーパーバタードッグ“サヨナラCOLOR”のサンプルを用いた“Forget your dream”など、さまざまなパターンを描きながら心の奥を深く打つ本作のソリッドなビートこそが、インタヴュー中に〈責任〉という言葉を何度も繰り返す彼らの心模様を代弁していると言っていい。

「僕らは〈踊れるもの〉っていうところで最初はビースティー・ボーイズから始まって、それがヒップホップ、ドラムンベース、ブレイクビーツ、4つ打ちっていう感じで、好きなものは変わってきてるんですけど、最終的にこれまでの作品やこのメンバーの接点ってどこなんだろう?って考えたとき、ブレイクビーツだなって思ったんです。しかも、ブレイクビーツって言っても、すべてのダンス・ミュージックに入っているダンサブルなビート、っていう意味でのブレイクビーツです。それこそが僕らの存在意義だし、そこをめざすしかないなって思ったんです」(SHIGEO)。 

 重さより落ち着きを、さらには解放感すら与える彼らの音楽は、本作にあってはミクスチャーなる混沌ではなく、むしろ、ビート・ミュージックと呼ぶべき明確なものである。

「このアルバムはみんなで集まって聴くような、パーティー・ミュージックではないですね。ここには歌が入ってなかったり、メッセージ性もないし……ひとりで聴いて、五感で感じ取って欲しいですね」(SHUYA)。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年08月29日 19:00

更新: 2003年02月13日 12:13

ソース: 『bounce』 235号(2002/8/25)

文/小野田 雄