Underworld
新生アンダーワールドが渾身のニュー・アルバム『A Hundred Days Off』をドロップ!! またまた世界を踊らせる!!
「そうだね、その少しばかりは僕たちが作ったかもね」(カール・ハイド)。
アンダーワールドは90年代という時代を文字どおり作ってきたグループだ。彼らは80年代から活動をしてきたが、80年代の終わりから90年代の初めに瞬間のように起こった〈セカンド・サマー・オブ・ラヴ〉の際に注目を浴びるようになった。
〈セカンド・サマー・オブ・ラヴ〉といっても、何のことだか大昔なのでわからないという人も多いに違いない。これはそれまで否定され続けてきたヒッピー的な幻想──人々が愛しあい、笑いあい、肯定的な生を送ることができるのではないか──という一瞬の夢のようなムーヴメントだった。いくつかのダサイ(失礼!)ロック・バンドがこのムーヴメントに乗っかり名声を得て(マイ・ブラディ・ヴァレンタインはダサくないので注意すること)、人々がオルタナティヴであること、インディペンデントであること、みずからアクションを起こすことについて話しはじめた瞬間だった。そして、最初のサイケデリックな愛の時代、67年が瞬間のように終わったと語り継がれるように、この奇跡のようなセカンド・サマー・オブ・ラヴも終わってしまった。その理由をここで語るスペースも資格も僕にはない。そしてその時、アンダーワールドは、90年代最重要なグループ、レフトフィールドや、スポーツと音楽を結び付けた(?)悪名高いパンクな錬金術師、アンディ・ウェザオールと共にプログレッシヴ・ハウスというムーヴメントのひとつの傘の下に現れた。
「そのシーンに15分間だけいたということになるだろうね(笑)。どんなムーヴメントであれ、僕たちはそこにい続けることはしない。いたと思ったら、すぐにどこか他の場所に移るのさ」。
カール・ハイドはこう言ってプログレッシヴ・ハウス・ムーヴメントについてさらっと流す。このコメントは照れもあるだろうが、彼らの本質も僕たちに教えてくれる。それは彼らのクリエイティヴな力の背後に〈移動〉というキーワードがあるからだ。
「移動は僕にとって、とても重要なことだね。ロンドン、ニューヨーク、東京。移動するときの精神状態を反映するメモを僕はいつも付けている」。
ニュー・アルバム『A Hundred Days Off』は、移動から連想されるだろう〈変化〉がもうひとつのキーワードとなっているアルバムだ。トリオのアンダーワールドからダレン・エマーソンが脱退した後、初のアルバムであり、多くの文化から彼らが摂取したエクレクティックなサウンドがダンスと共に聴き手を優しく抱きとめてくれるように成熟している。そして、「よりエクレクティックになった」と言うこの作品は、音楽が国境を越える何かであることを鮮明に証明する。エクレクティックであるということは必然である。もうインフォメーション・スーパー・ハイウェイの時代に他に選択の余地はあるだろうか? アンダーワールドは、そこに音楽とアートの力を僕たちに与えてくれる。それならば、他に何が必要だろうか?