インタビュー

STANCE PUNKS


 ビートルズ登場後に起きたもっとも重要なムーヴメントのひとつ、〈パンク・ロック〉。社会、あるいは商業音楽に対する怒りや批判といったものをスリーコードの魔法に乗せてストレートに表現するそのスタイルは、〈精神そのもの〉としても語り継がれ、時代・国境を越えて今なお多くの若者たちを虜にしている。そんなパンク・ロックをここ日本で真正面から〈好きだ〉と歌い、さらにはそこに〈優しさ〉まで見い出したのが、ご存知、ブルーハーツ。彼らが残した歌のなかには、溢れんばかりの人間への愛情と〈クソッタレ〉の美学とも言うべきモノが込められていたが、そんな美学を純度高くいまに受け継ぐバンドが登場した。このたびファースト・フル・アルバム『STANCE PUNKS』をリリースした平均年齢24歳のSTANCE PUNKSである。

 彼らは、いわゆる同級生や友達といったラインから出発しているバンドではない。大学進学を機に上京してきたTSURUとバンドをやるために上京してきた勝田欣也、その2人が雑誌のメンバー募集欄を通じて知り合い、そこに小菅淳、しばらくして川崎テツシが加わり現在の形が出来上がった。当然、年齢も影響を受けたバンドもバラバラなのだが、ひとつだけ彼らには共通言語としてのルーツがあった。それが〈ブルーハーツ〉だ。世間的にはここ数年幾度目かのブルーハーツ・ブーム(?)を迎えているとも言われているが、そんなブームのなかで彼らはひと際、パンク・ロックとしての美学、クソッタレの美学を、きちんとこだわりを持って鳴らしているように思える。それもわかりやすい日本語で。そしてちゃんと怒ることを忘れずに。

「もちろん、伝えたいから日本語で歌ってるっていうのもあるんですけど、でも……それよりも、そういうふうにやるのが自分らにとっては普通っていうか。〈日本語〉にこだわってるわけじゃなくて、〈普通〉にこだわってるからそうなるのかもしれないですね。それに、昔からそういうのばっかり聴いてきたから、そういう思考になっちゃうっていうか……。基本的には俺、のらりくらりしてるほうなんですよ。だから政治とか不景気とか、そういうのってあんまりよくわかんないし、とくに興味もない。けど、人にはやっぱり〈触れちゃいけないところ〉っていうのがあるじゃないですか?そこに触れられたらもう全力で怒る」(TSURU:以下同)。

 つまり、〈自分が守るべきもの〉に対する愛から、きちんと〈怒る〉という行為につなげられる健全さ。いまの日本にもっとも欠けている部分なのでは?……それにしても、そういう当たり前のことを当たり前に、しかも歌として成り立つ言葉で表現するにはそれ相当のセンスが必要なわけで。そういう部分をあざとさ抜きでやってのけるところは、まさにブルーハーツ直系。もちろん〈クソッタレ〉という言葉の意味も……?

「ホントに〈クソッタレ! お前、こんちきしょう!〉と思うときもあるし、〈なんて愛すべきクソッタレなんだ〉と思うときもある。だから、どっちでもいいと思うんですね。なんか人のヤなところとか見えてウザイとか思っても、後々考えてみると、そいつにも良いところがあったりして、〈まぁ、いいんじゃねぇか?〉とか(笑)。その人を思うことによって、良い言葉にも悪い言葉にもなるのが多分、〈クソッタレ〉。だから、俺が〈こうだ!〉って歌ってても、それは俺が思うことであって、それで人を変えようとかは思ってない。結局、何かをやるにしても最終的に、自分がホントにそうやりたいと思って動かなければ何にも始まらないと思うし、そのための間接的なスパイスに俺らの歌がなれたらいいなとは思いますけど」。

 優しさだけじゃ人は愛せない。そういうことをちゃんとわかって歌う〈クソッタレ〉は、とても心に響いてくるのだ。

PROFILE

98年下北沢にて結成。メンバーチェンジを経て2001年にTSURU(ヴォーカル)、勝田欣也(ギター)、川崎テツシ(ベース)、小菅淳(ドラムス)という現在のラインナップになる。99年4月、移転した新宿LOFTでのこけら落としライヴに加え、8月には初の自主企画〈火の玉宣言〉を行う。以降、下北沢屋根裏を拠点に精力的なライヴ活動をこなし、その強烈なパフォーマンスと熱いメッセージが、10代を中心に若いリスナーを着実に魅了していく。2001年10月にはミニ・アルバム『STANCE PUNKS』、今年4月にはシングル“クソッタレ解放区”をリリース。このたび待望のファースト・フル・アルバム『STANCE PUNKS』(dynamord)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年09月05日 15:00

更新: 2003年02月13日 12:10

ソース: 『bounce』 235号(2002/8/25)

文/なかしまさおり