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インタビュー

BAZRA

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 BAZRAというバンドがすごいらしいゾ!というまことしやかな噂が、彼らの地元・札幌以外のあちこちでも流れているようで。とまあ、その手の噂話は珍しいものじゃないが、BAZRAに至っては少々ワケが違うよう。もちろん、オトナたちが仕掛けたものではないようだし、とんでもない本数のライヴをこなしているとかってわけでもない。BAZRAはすごい!と言わしめるきっかけを作ったのは、今年の4月にリリースされた、たった5曲入りのCD『ひょうろくだま』だけ。BAZRAは、そのCDに収められた〈歌〉だけという、いたって純粋な形でバンドの魅力をアピールしていったのだ。さて、そんなBAZRAを聴いて(誰しもが間違いなく)すぐさま感じとれるのは、その〈言葉〉の強さ。言葉に込められた尋常ならぬ情念は、恐るべき即効性でもって、聴く者のハートにビシバシ伝わってくるのである。

「僕らがやってるような音楽――ロックとかって、本来だと言葉(日本語)を届けにくいはずなんですよ。外から来た音楽だから、最初はなんとか日本語を乗せるところから始まってたりして……難しいと思うんですよね。それなのに言葉が聞こえてくるとか感じられるっていうのは、なんかすごい……って、BAZRAはそれを計算のうえでやってるんですけど。ライヴとかでは歌詞ってほとんど聴き取れないじゃないですか。でも、ほんの一節で〈おおーっ!〉て言わせるというか、そういうところは、すごく狙ってたり。念を込めるというか」(井上鉄平:以下同)。

 たしかにBAZRAの楽曲には、ほんの一節でグッと聴き手の心をつかまえ、そこから歌全体の世界へと引きずり込んでいくという(からくりは単純なのだが、ハマると抜けられなくなる)トラップが仕掛けられている。

「心をつかまれる一節は、聴き手個人個人で場所が違うわけじゃないですか。その一節がみんないっしょだったらいいんですけど、みんな違う一節をもっているから、そこは手を抜けないというか、全部いい言葉を書かなければいけない……って、あまり意識はしないですけど。なぜかって、書いてるときはものすごい衝動で書いてるから、必ずつかまれるはずなんですよ」。

 さて、BAZRAはこのたびファースト・フル・アルバム『アホォリズム』をリリースする。前作『ひょうろくだま』からさらに深化したサウンド・アプローチが随所にみられる作品となっているわけだが、基本的には井上鉄平の歌、言葉というものをド真ん中に据えた、相も変わらずのBAZRA節が展開されている。

「〈相も変わらず〉っていうのは、僕らの根底のところを見てもらってるからだと思うんで、うれしい意見ですね。実際のところ、僕らのなかで流れているもの――歌を大切にするっていう意識――っていうのはぜんぜん変わってなくて、ただその、ニュアンスだとか音の配置だとかが変わっていってるだけで」。

 唐突ではあるが、そんなBAZRAの歌の良し悪しは、たとえば音楽の予備知識などほとんどない子供でもわかるもののような気がする。いや、別に幼稚な言葉が並んでいるというわけではなく……いやいや、グッド・メロディーに乗せて言葉を発する感覚は、子供が童謡を口ずさみ親しむ感覚に似ているような?

「僕が初めてグッときた音楽というのは“とおりゃんせ”なんですね。メロのラインとかが幼心にグッときて。その〈グッとくる〉一点というのは、大人になっても変わってないので、そこに照準を合わせていれば子供もグッとくるんだろうし、上の世代の人でもグッとくるんじゃないかなと思います。でも、他の人に合わせて〈ここらへんだろ〉っていうのは、僕はできないと思う。そうやって意図的にやっちゃうと、その一点というものが本当じゃなくなっちゃうんで、曲を書くときは純粋にグッとくるところを求めて書いてます。自分自身が納得できる一点を、自信をもって出せば、みんなもわかるだろうって感じです」。

PROFILE

99年、井上鉄平(ヴォーカル/ギター)、三枝拓也(ドラムス)で前身となるバンドを結成。2000年に三浦謙太郎(ベース)が加入し、現在のメンバーとなる。同年には自主制作によるシングル“体温”を地元・札幌のタワーレコードとライヴ会場のみで販売。作品が好評を得るとともに、ライヴの動員数も飛躍的に増加していく。2002年4月に、初の全国リリースとなるミニ・アルバム『ひょうろくだま』を発表。同作品をきっかけに、札幌以外の土地でも話題を呼びはじめ、首都圏を中心としたライヴ・イヴェントに多数出演。そんななか、待望のファースト・フル・アルバム『アホォリズム』(DAIZAWA/UKプロジェクト)が9月6日にリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年09月05日 16:00

更新: 2003年02月13日 12:10

ソース: 『bounce』 235号(2002/8/25)

文/久保田泰平