インタビュー

ペペ・カリフォルニア

メロディアスでリリカルなプロダクションを聴かせる、〈Nice Nice〉なダンス・ミュージック!


 前作『LLAMA』からカットされた7インチ・シングルがDJアレックスのコンピレーションに収録されるなど、デビュー以来現場から、そして気持ち良いもの好きから熱いラヴコールを受け続けている3人組、Pepe California。夏休みに描いた水彩画のような、のどかで淡いスケッチ。そうした心地良いインストゥルメンタルのセンスについて彼らはこう分析する。

「『LLAMA』はサンプリング・ミュージックという限られた枠の中で〈これは……みたいだね〉っていう雰囲気のものを、ひねくれてあえて抑えていたところはあるね。今ある音楽とは違うことをやりたいっていう動機が強かったんだと思う」(TOSHIFESSOR)。

 ニュー・アルバム『The Nice Nice』は、彼らの多彩な音楽性がサウンドの骨格をより強く形作っている。メロディカ、カリンバなど生楽器を多用し、メロディアスでリリカルなプロダクションが印象的だ。

「トラックについては、何かを〈やらない〉ことで自分たちらしさを出していたところがあったけど、今回はもっと〈やっちゃった感〉みたいなのを出したほうがおもしろいかなって。これぞPepe California決定盤!みたいな(笑)」(MITCHO)。

 風通しの良いアコースティック・ギターをフィーチャーした楽曲のほかにも、Chari Chariとタメを張るスケールの大きな“IN THE SUN”や、80'sニューウェイヴ的な声ネタとファンキーなグルーヴが炸裂するダンス・チューン“Get Up(Clap Your Hands)”など、過剰なくらい指向が拡がり、アルバムにトータルとして楽しむのに十分な振幅を与えている。

「ベタベタなハウスとかもいいですけど、ジャンルに添ったものじゃなく、自分たちのカラーが音としてちゃんと出せるようになったのかもしれないですね」(KB)。

 気ままなムードを醸し出しながら、ダンス・ミュージックの緊張感と弛緩のバランスを絶妙にとれる、そんなユニットはほかにない。バハマのコンパスポイント・スタジオやイビザのカフェ・デル・マーと東京・町田(彼らの出身地)の距離を縮める作品――『The Nice Nice』をプレイするとき、その空間にぽっかりと裂け目を作って青空が浮かんでくる。

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掲載: 2002年09月05日 11:00

更新: 2003年02月13日 12:11

ソース: 『bounce』 235号(2002/8/25)

文/駒井 憲嗣