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インタビュー

PE'Z


 ジャズが生まれて約100年、モダン・ジャズが生まれて約50年。その間、ジャズがさまざまな進化を続けてきたのは周知の通り。だから一言でジャズと言っても、そのスタイルはさまざまで常に新しい音、そしてミュージシャンが生まれてきている。ただいつの時代も新しければいいってものではなく、結局はそこに本質的なものがあるかどうか、聴く人の気持ちに染み込むものがあるかどうかが大切。そんななか、〈侍パンク・ジャズ・バンド〉と銘打ったPE'Z(ぺズ)が登場。トランペット、サックス、キーボード、ウッドベース、ドラムスから成る彼らは、2000年から渋谷のストリートを中心にした路上ライヴで注目を集めていたジャズ・インスト・バンドだ。リーダーであり、トランペットを担当するOhyama “B.M.W” Wataruが昔からの知り合いを誘ってPE'Zを結成したのは99年の10月のこと。当初は渋い感じのジャズをやるつもりだったが、活動を続けていくうちにそのサウンドはジャズをベースにしながら、ファンクやパンクなどさまざまなジャンルの音楽を取り込み、音の攻撃感をスケールアップさせていく。

「俺らとしては、ジャズをどう今っぽくやるかってことよりも、ジャズのいい部分をどう採り入れるかってことが大事で。今やってるのは感覚的にポップスなんですよ。使うコードとか楽器の編成がジャズっぽいんで、ジャズがメインにあるんじゃないかって思われるんですけど。作業的にはメロディーを重視していて、リズムはカッコイイものを選ぶ。そこに1900年から始まったいろんな時代のジャズのテイストを盛り込んでいくっていう作業をしてるんです」(Ohyama:以下同)。

 高い演奏技術と斬新なアイデア、そしてポップで広がりのあるメロディーがPE'Zの主軸にはある。そしてメンバーの個性がぶつかりあって生まれるスリリングなサウンドの疾走感が彼らの魅力だ。

「最初から静かに座って聴いてもらう音楽をやるつもりは全くなくて。あんまりゆったりした空気感って苦手なので。全体的に攻撃的でパワーあるなっていう印象をみんなに持ってもらいたいです。やっぱり、生っぽさ重視っていうか。人間が演奏してるってことが一発で聴いてわかるような作りって大事だと思うんですよね」。

 そんな彼らのファースト・フル・アルバムとなる『九月の空-KUGATSU NO SOLA-』がリリースされる。彼らにとって初のフルレングス・サイズのアルバムとなる今作には、彼らならではのポップさと疾走感が詰め込まれていて、意図せずとも自然に体が揺れてくる12曲で構成されている。

「初めてのフル・アルバムってことで、俺らのすべてを包み隠さず出し切ったアルバムができました。モダン・ジャズとかジャズ・ロックとかラテンとかいろいろな音楽にインスパイアされて作った12曲なんですよ。まあ、俺らの根本にあるのは、いかに聴く人を踊らせるかってことなんで。一気に踊らせる曲もあれば、ジワリ、ジワリと踊りたくなるような曲も揃って、バラエティーに富んだアルバムになりましたね」。

 美しいメロディーを描きだすトランペット&サックス、アグレッシヴなビートを刻み続けるウッドベース、まるでパーカッションのように自由自在に暴れまくるドラムス、フリーキーなフレーズを叩きつけるキーボード。それらが一体となって生まれるキャッチーなメロディーライン。それは一部のジャズ・ファンだけを虜にする類いのものではなく、普段ジャズを耳にすることのない幅広い層の人たちへも届くはずだ。

「このアルバムを持って、ポップ・シーンのド真ん中を突っ走っていきたいんですよね。100人の人間がいたら99人が知ってるようなバンドになりたいし。ジャズで、インストでそこまで有名になったバンドっていないじゃないですか? まだまだこれからですけど。やりたいことの100万分の1もやれてないので(笑)」。

PROFILE

Ohyama“B.M.W”Wataru(トランペット)を中心に、Kadota “JAW” Kousuke(サックス)、Nirehara Masahiro(ウッドベース)、ヒイズミマサユ機(キーボード)、航 (ドラムス)から成る、〈新世紀型ジャズ・インスト・バンド〉。99年、東京の路上からスタートし、ジャズをベースにロック、ラテン、パンクなど、幅広い音楽性を融合させた独自のライヴで、世代を越えた注目を集める。2001年にインディーからリリースされたミニ・アルバム『pe'z』『速人─HAYATO─』『OKOKOROIRE』に続き、2002年ミニ・アルバム『Akatsuki』でメジャー・デビュー。待望のファースト・フル・アルバム『九月の空─KUGATSU NO SOLA─』(Virgin/東芝EMI)が9月11日にリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2002年09月19日 15:00

更新: 2003年02月10日 13:27

ソース: 『bounce』 235号(2002/8/25)

文/富永良寛